ナオヤ達も追跡
逃げるにしても、なにも表のまっとうなダンジョン通路を行くことはないはず――という俺の意見で、俺達は元々俺がこっそり使っていたダンジョン裏通路を戻り、例の狭い休憩部屋に戻った。
脳内マッピングが完璧なミュウがいたんで、帰り道は楽だったな。
それはいいんだが……俺達を待ってくれているはずのエルザとローズは、二人してベッドに転がって爆睡してやがった。
しかも、これまた二人揃って平和そうな顔で、唇を半開きにして気持よさそうに寝込んでるしなあ。さすがにむっとして、下着ごとズボンとスカート脱がしたろかと思うよな。
まあ、なんだかんだいって二人とも美人だし、俺としては双方の寝顔を見ているうちに、怒りはふにゃふにゃと萎んでしまうのだが。
あいにく、そういう「女の子フェロモン」が全く通じない人もいる。
言うまでもなく、マヤ様である。
一瞬の怒りの後、腰砕けとなった俺と違い、両眼を見開き、それこそこめかみに青筋が出るんじゃないかと思うほど、激怒された。
「ま、魔界の支配者たるたるマヤが囚われの身となっていたのに、呑気に昼寝とはいい度胸だ」
拳を固めて震え声(余計に怖い)で言ったかと思うと、いきなりドンッと弾みをつけて、右足で石床を踏んだ。
「とっとと、起きぬかあっ!!」
「うおっ」
「きゃあっ」
「う、嘘でしょ!」
奇しくも、俺とネージュとレイバーグの声が重なる。
そりゃ驚くさ! だって、今の勢いある足踏み一つで、石床が派手に陥没した上、四方にひび割れたんで。
仮に横綱が派手にしこ踏んだって、絶対にこうはならんぞ。
おまけに、衝撃波のごとき振動のお陰で、二段ベッドは二つまとめて、同時に床の上で弾んだほどだ……それぞれ、人が寝てるってのに。
もちろん、ローズもエルザも二人して飛び起き、次にマヤ様を見て、これまた二人揃って蒼白になった。
俺がまだなんの忠告もしないうちに、焦りまくってベッドを飛び出し、床に正座したという……いや、日本人でもないのに不思議だが、心身ともに縮こまった結果だろう。
声も出ないというやつだ。
ついで、無言でマヤ様が右手に大剣を出現させたので、俺は慌てて止めに入った。
「ま、待って待って、待ってください! そもそも、先に戻ったらここで待機と命じたのが俺ですしっ」
――それに、彼女達はマヤ様が戻ることなんて、知らなかったですよ!
思い出してそれも付け加えたが、手を押さえるのがギリギリだったぞ。
あ、危ないな、ホント。俺がまだいない頃って、こんな調子でガンガン刑死が出てたんだろうなっ。
怖いから、あまり考えないようにしとこう。
「放せ、ナオヤっ」
「駄目です! それより、せっかく全員が集まったんですから、早く行動に移しましょうよ。絶対、そうすべきですっ」
「具体的にどうするのだ!?」
やはりユメへの復讐心の方が強いのか、俺の思惑通り、マヤ様は乗ってきた。
「ええと、サクラが先行して神器を探してくれているので、俺達も早速、彼女を追いましょう! 今頃は、もう全部見つけてるかもですよっ」
――事実は、サクラが鈍くさい俺達を見捨てて先にいっちまっただけなんだが、まあモノは言い様である。しかし、さっきのユメの様子じゃ、まだ連中が神器を見つけてないのは、事実のはず。
となると、まだ俺達にもチャンスがある!
……もちろん俺はこの時、敵もサクラの追跡を最優先していることを、全く知らずにいたんである。




