無双のはずが
というのも、この広間には二人の傭兵の他に、まだ戦力が残っていたのだ。
つまり、ユメが椅子代わりに使っていた、でっかい魔獣が。
「グォオオオオオオオオオンッ」
「わ、わっ」
チビりそうな吠え声がして、俺はようやく、異変に気付いた。
さすがにこれは無視できず、立ち止まって振り向く。
黄金色の体毛を持つ、でっかい魔獣……ヤツが、俺を睨んでいた。
しかも、今の今まで大人しく床に腹をつけて寝そべっていたくせに、俺と目が合った途端に、思わぬ俊敏さで跳ね起きやがった!
「待て、落ち着けっ」
俺は動揺して、なぜか片手を上げて抑えようとした。
「話せばわかる!!」
当然、そんなんで止まるわけがなく、躊躇せずに襲い掛かってきやがった。
「グォオオオオオオオンッ!」
「ち、ちくしょうっ。肝心な時にぃいいっ」
一瞬、先にマヤ様達の方へ走って魔法陣解除を優先するかと思ったが、あいにく向こうが追いつく方が早そうだ。
「俺が簡単に殺られるかっ」
涎垂らした牙が迫ってきた刹那、俺は思いっきり横っ飛びして避け、しかも避け際を狙って瞬時に斬りかかった。
「――っ! 浅いかっ」
首を狙ったんだが、ライオンモドキは意外と反射神経よく巨体を捻って避け、しかも着地した途端に、また鳴き声を上げて襲い掛かってくる。
めんどくさいことに、残っていた二人の傭兵までダッシュでこっちに駆けつけてきた。当然ながら、二人揃って抜剣している。
「ツイてるよなあっ」
「手柄首が向こうからっ」
「悪いが、敵じゃないっ」
正直、魔獣の動きに比べりゃ、こいつらの動きは静止してるのと変わらん。
俺は芸もなく振り下ろされた剣をあっさり避け、代わりにそいつの手首をさっと掴み、向かってくる魔獣へ、思いっきり放り投げてやった。
「おわあっ」
「さあ、これならどうするよ!?」
同時に俺も疾走を開始したが、ライオンモドキは所詮、畜生だった。
味方だから避けるかと思ったのに、そのまま進路も変えず、ごつい前足で傭兵をぶっ飛ばしやがった。
前足といっても、尖った剣呑な爪が伸びまくった、それ自体が凶器になる代物だ。傭兵その一は胸の辺りを豪快に抉られ、血みどろで倒れてしまう。
気の毒なことに、悲鳴すら上げなかったな。
だが、不幸な傭兵には悪いが、そいつを攻撃する瞬間、どうしたって動きは止まる。当然、放り投げた傭兵のすぐ後ろから走ってきた俺は、そいつが攻撃した直後に突っ込むことになる。
「悪いな!」
仲間を片付けて向き直ろうとした魔獣の首に、俺は必殺の一撃をお見舞いし、今度こそ首を刎ね飛ばした。
そしてすぐに身を低くし、返す刀で、訳のわからん罵詈雑言と一緒に斬りかかってきた傭兵その二の胴を薙ぐ。許せ、これもマヤ様のためだ。
とにかくようやくこれで――と思った瞬間、背後に冷たい殺気を感じ、俺は思わず息を呑んだ。
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