単独行動
いざ、謎の通路に入る寸前まで、揉めに揉めたが、俺は自分の決定を撤回しなかった。
やっぱり臣下の身としては、少しでも早めにマヤ様を見つける努力をしないとな。
だけど、外の通路を動き回ると、敵にガンガン遭遇するわけで、探すどころの騒ぎじゃない。
というわけで、俺にしてみればこの秘密の通路発見は、絶好の機会なんである。
……もちろん、本当に役立つかどうかは、これから調べるんだけど。
「一時間ですようっ。一時間を一ピコ秒でも過ぎたら、すぐに捜しに行きますからあっ」
ミュウが、俺の服の袖を握って、しきりに訴える。
ていうか、一ピコ秒ってなんだ!? 全然、イメージわかんぞ。
あと、探索に出るのは別に俺だけじゃないので、当然ながら、後の二人は不満たらたらだった。
「ミュウちゃん、性格変わってから、本音がダダ洩れじゃない!」
ほら、早速エルザが文句つけた。
「ああ、あたしは誰にも心配されないまま、狭い通路の奥で傭兵に乱暴された挙げ句、刻まれちゃうんだわあっ」
「……ひ、一人はやっぱり怖いものですね」
エルザがぴーぴー言うのはいつものことだが、ローズまで不安そうなのが意外だった。この人、元々はかなりイケイケの人だったはずなのにな。
砦で捕まって、危うく男共にナニされそうになってから、だいぶ戦闘的な部分が引っ込んだらしい。いいことだとは思うが。
「さっき言った通り、何か危険を感じたら即、戻っていいよ。で、誰が先に戻っても、ミュウと一緒に後の者が戻るまで待っててくれ」
「でも一時間経ったらっ――」
「わかってる、わかってるよ」
まだ袖を握ったままのミュウを、俺はそっと押しやる。
いつまでも出発できんし。
「大丈夫! 案外、すぐに行き止まりかもしれないしさ。留守番は長くならないから」
「本当に……気をつけて」
「う、うん」
衝動的に、涙目のミュウを引き寄せ、一瞬だけだけど抱き締めてしまった。
いや、真剣に心配してくれるミュウに、思わず感激しちまったんで……なにしろ、かつての俺ときたら、産業廃棄物扱いだったからなあ。
「あ……マスター……ナオヤさん」
とはいえ、色っぽい吐息をついて俺を見上げるミュウを見て、ちょっと後悔したのも事実だ。だいたいこの子のスーツは、抱き締めると胸の感触がモロに伝わってヤバい。いろんな意味で。
「あたしはっ!?」
おまけに、エルザが両手を腰に当てて睨む。
「ミュウちゃんだけなの、心配は」
「し、心配してるさ、みんなっ。だけど、俺の性格で気軽に抱きつけるわけないだろっ。気持ちだけにしてくれ。とにかくっ、出発!」
まだローズが何か言いかけていたが、俺はさっさと奥へ歩き出した。
頭を切り換えないと……ミュウの胸の感触を思い出してる場合じゃないって。




