困難な決断
「どういうことでしょう?」
水飲み場から急いで駆けつけたローズが、俺に訊く。
いや、俺だって知るわけないんだが、しかし他に考えられないだろう。
「このダンジョンの設計者の身になって考えてみればわかるよ。つまり、ダンジョンの内側に、監視用の別のダンジョンを隠したってことかなと。そういうのがあれば、侵入者に見つからないようにこそっと巡回できるし、いち早く警報を出せるじゃないか」
「――! それは確かにっ」
コトの重大さに気付いたローズは、にわかに碧眼を輝かせた。
「つまり、上手くすれば、敵に気付かれずにダークロードの元へ接近できるかもしれない――そういうことですね!」
「そうそう。もちろん、この三方向に分かれた通路が、どこまで続いているかによるけどね」
言いつつ、その三つの通路を見比べたが、魔法の明かりが照らす通路はやたらと狭く、そしてかなり先の方まで続いているらしい。
奥がどうなっているか、全く見えないのだ。
「こりゃ、いちいち道を探るのも大変だから、三手に分かれて探った方が効率がいいだろうな」
俺は腕組みして通路を睨んだ。
どう考えても、三方向に分かれた道を一つずつ全員で確かめるのは、効率が悪い。こういう時こそ、人数を分けるべきだろう。
「ミュウはマスターと一緒です!」
「では私は戦士将とっ」
俺がまだ何も言わないうちから、二人が連呼した。
「ああ、先に言われてしまってっ」
おまけに、ローズが悔しそうに唇を噛む。
ホント、一見、すげーモテてるように見えるのになあ……空しいぜ。
「とはいえ、今回のミュウは引きそうにないし、俺もミュウから目を離すのは心配だな」
「……ああ」
なぜかミュウが綺麗な瞳を潤ませ、俺に抱きついてきた。
イ、イキナリ、ナニスルンデスカ!
ミュウの香りとしなやかな身体の弾力を感じ、俺の思考は吹っ飛んだ。
「マスターの……ナオヤさんの愛情を感じます……嬉しい」
「い、いやぁ」
――まあ、よい方にとってもらえるなら、それもアリかなと思ったのだが、俺はたちまち悲鳴を上げる羽目になった。
「て、いでででででっ。みゅ、ミュウ! 力を加減してっ」
「――っ! ごめんなさいっ」
焦ったミュウが慌てて身を離す。
「い、いいよ、いいよ」
愛想笑いを振りまきつつ、俺は冷や汗をかいた。
容姿は可憐な女の子だけど、ターミネーターが裸足で逃げ出すようなパワーの持ち主だからな……ホント、敵に回したくない子だよ。
「それよりナオヤ、今回はさすがにナオヤとミュウちゃんの組は駄目よ!」
いつの間に寄ってきたのか、エルザがいつになくきっぱりと言ってくれた。
「なんで?」
「なんでって……それぞれ別行動取った仲間を追跡できるのって、ミュウちゃんの謎の能力しかないじゃない。だったら、この子にはこの部屋に残ってもらって、いざという時に助けてもらわないと。この狭い通路で迷うかもだし!」
「むう」
珍しく説得力があるじゃないか。
確かにいざという時には、ミュウくらいしか分かれた俺達を追跡できない。




