謎の空間
その発見は、実は全くの偶然だった。
敵は基本的に回避とはいえ、避けられない場合も出てくる。
何時間かして、俺達が何度目かの傭兵チームに出くわし、それぞれ倒すか眠らせるかした時、問題は起きた。
体力に乏しいエルザが例によってヘバってしまい、「もう疲れたわぁ~、足が震えてるぅ~、MPもない~。どこかで休みたいわあっ」と完璧な膨れっ面で主張したのだ。
俺としては、マヤ様以下の仲間を早く探し出すか、サクラを見つけるまでは苦しくても進みたいんだが、目に見えてエルザが遅れるようになってしまい、そうも言ってられなくなってしまった。
エルザの不満はいつものことだが、疲れているのも事実のようだ。
というか、個人差はあれど、それはみんな同じだった。俺だって、できればどっかで大の字になって休みたいくらいだ。
そこで、やむなくミュウに頼んだ。
「ごめん。また休憩が必要らしい。サクラが見つけた休憩ポイントみたいなの、今回も見つけてくれないか? ほら、色違いの石材ブロックみたいな印のあるところ」
「はぁい!」
一人だけ元気度マックスのミュウは、すかさずきょろきょろと通路を見渡し、幾らも進まないうちにすぐに問題の場所を見つけてくれた。
「あ、ここかもしれません!」
さすがっと皆でヨイショしたのだが……ただ、この時のミュウはなぜか可愛らしく小首を傾げていた。
「どうしたの、ミュウ?」
「ええと……この向こうにさっきみたいな部屋があるのは確実なんですが……その隣にも、奇妙な空間があるんです……今、ざっと壁の密度を測定していて、偶然見つけました」
「むう?」
俺達は顔を見合わせたが、別の場所を探すような気力もないし、とにかく入ってみることにした。
「まあいいさ。とにかく中へ入ろう」
決断し、また色違いの石材に触れ、問題の隠し部屋を開けた。
開けた途端、夜を迎えた吸血鬼みたいな勢いでエルザがダッシュを決め、例によって隅に置かれたベッドへ直行する。
男の俺の目もあるというのに、即座に、思いっきり奔放な姿勢で横になっていた。
「あぁ、やっと横になれた……外の通路だと、ろくに休めないもの。これじゃ、体力ももたないわよう」
「言えてますね……」
いつもは厳格なローズも、諸手を下げて賛成し、水飲み場で一息ついていた。
俺は彼女達の苦情は聞こえない振りをして、ミュウに水を向けた。
さすがにまだ、そこまで疲れ切っていないしな。
「それで、隠し部屋って?」
「ええと……ちょっと待ってください……多分、どこか開く仕掛けが……う~ん」
ミュウは文字通り、奥の壁を見通すような目つきでじんわりと見つめ、しばらくして呟いた。
「あ、ここかもしれません……」
声にすると同時に、胸の辺りの高さにある石材ブロックに触れた。
すると――そのブロックが奥に引っ込み、ギギギィッと壁の一部が開いたではないか。
「おおっ」
ミュウの背中に隠れつつ、俺は思わず声を洩らす。
警戒はしたものの、特に何かが飛び出してくる様子はなく、代わりにそこの壁にあった魔法の明かりが自動で点灯する。
すぐに、ぼんやりと殺風景な空間を照らし出した。
「あれ……何もない……いや、待て」
その謎の部屋から、三方向へ向けて細い道が分岐していることに気付き、俺は密かに息を呑む。
「もしかしてこれ、隠し部屋ならぬ、隠し通路か!?」




