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マスター変更不可

「――っ! ナオヤがミュウを脱がそうとしてるっ」


「せ、戦士将……」

「女の子達の目が集中してるのに、部屋の隅で淫蕩なことするとはいい度胸ね」




 エルザを筆頭に、女性三人がごちゃごちゃ言いやがったので、俺はそっちへ顔をしかめて見せた。

 何を寝言を言ってんのか……と思ってミュウに向き直ったら、ミュウが俯いてスーツの背中に手を伸ばそうとしていた。


「ミュウ、少し恥ずかしいです……」


「いや、脱がなくていいから!」

 俺は慌てて止めた。

「え? でもデータベース見たら、愛情表現の時は男女が肉体を使って――」

「いや、今はそういう用事じゃない、違う違う」


「やっぱり脱がすんじゃない?」


 サクラがからかうように言うので、無視すりゃいいのに、また言い返してしまう。

「んな冗談言ってる場合じゃないだろっ。ミュウの調子――というか体調がおかしいの、みんなだって感じてるはずだぞ」




「マスターぁ、ミュウは絶好調ですよ~」


 ちょこんと座ったままのミュウがきょとんと首を傾げる。

「うんうん、でもほら、やっぱりちょっと様子は知りたいんだよ」

 俺はそんなミュウの耳元にそっと囁きかけた。 

 前に教えてもらった短い管理コードであり、俺の声まで登録されているらしいので、これを囁きかけることによって、管理モードに入れるはずだ。


 なにしろ、ミュウは人工培養された生体ベースとはいえ、頭脳の大半は人工頭脳……つまりAIなのだから。

 事実、囁いた途端、ぴくんと小さく肩が動き、ミュウの表情から感情が抜けた。




「管理コード確認……チェック中……チェック終了。生体識別、及び声紋チェック完了しました……マスター本人のアクセスと認定。管理コードに入ります」


 うおっ……いきなり声の調子がガラッと変わったぞ。


「――なお、対話式ですので、ご質問があればどうぞ」

「は、はあ」

 同じ声質でも、感情が全部抜けただけで、こんなになるのか……もう本当に機械で合成された声にしか聞こえん。


 俺が一人で衝撃受けている間に、ミュウ――というか、声が続ける。




「では規定に従い、ご命令をどうぞ……ただし、マスター変更命令はできません。この個体においては不可能です」


「え、なんで?」

 いや、そんな変更する気は全然ないというか、そもそも自分が本当にマスター登録されていただけでも驚いたくらいなんで、つい訊いてしまった。


「本機に搭載されたプロトタイプAIが、独自判断でマスター登録を――マツウラ・ナオヤ――に変更した後、変更回路そのものを命令系統から遮断し、使用不可能にしています。従って、今後マスター登録変更をするなら、本機に搭載されたAI自体を、別のシリーズと交換する必要が生じます」


「……う」

 そういや、以前ミュウに聞いたところでは、ミュウは元々、最初のマスターの元へ納入されて数日で逃げたとかナントカ聞いたな。

 そいつから俺に変えちゃったのか、ミュウが自分で。

「えー、それじゃ……今のマスターって俺で固定のまま?」


「強制変更をする場合、本機の正副二カ所の独立AIは継続使用不可能となるので、破棄する必要があります。その場合は内蔵流体動力を切断し、規定の手順に従って頭部AIと補助AIの二カ所を新たな独立AIと交換してください。――交換手順に従い、動力を切断しますか?」


「そうだな――じゃないっ」

 うおっ。流暢な声のアナウンスに、危うく頷きそうになった。

 危ないな、くそっ。

「いやいや、しませんしませんっ。今の登録でいいですっ。切っちゃ駄目です、絶対! 切断はノーですからっ」

 俺は焦りまくり、思わず敬語で答えてしまった。


 このあたりで、「このトンチキは一体、ミュウになにをしているわけ?」という顔つきで、みんなこっちへ寄ってこようとした。


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