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痛恨の――

「逆に考えるんだよっ。どうせ封印するのに接触する必要があるところに、上手く向こうから出向いて来てくれた――そう考えるんだっ」


 どこぞのキャラの真似をして、力強く言ってのける。

 いや、いかんいかん……まともに言い合いなどすると、俺のメンタルポイントがごっそり削られる。


「それ以前に、今はとにかく侵入するのが先決なんだって。嫌みはあとだ、あとっ」

 そこでネージュが、警戒度満点の声音で訊いた。


「それで……作戦は? まさかナオヤ君、このまま突っ込むとか言わないわよね?」


「そうではないのか?」

 マヤ様がきょとんと言ったが、俺は慌てて首を振った。

 んな馬鹿なっ。

「い、いやいやいやっ。ホムンクルスの人工兵士入れたら、あそこにわらわらと数百くらいいますがな。それはあまりに無謀でしょう。そこで、困った時のプランBですよ」


「で、でたわぁああああっ」


 エルザが即座に頭を抱えた。

「プランBって、いい思い出が全然ないのにぃいい」

「やかましい!」

 いちいちうるさいエルザを放置し、俺は期待に満ちた目でネージュを見る。

 彼女もきっちり察して、呆れた顔で俺を見返した。


「……透明化の魔法でこっそりってこと?」

「そうだよ、どうせ俺はワンパターンだよっ。でも、このまま無策で突っ込むよりはいいじゃないか!?」


 開き直ってガミガミ言い返すと、今度はレイバーグが疑わしげな顔を見せた。


「でも……砦で同じ手を使おうとした時、ホムンクルス達にはボクらが見えてたよね?」


「――うっ」

 鋭すぎる指摘に、俺はてきめんに顔をしかめた。

 やっぱり、おまえもそこに気付くか。

「え、そうなんですか?」

 その時にいなかったローズが口を挟み、俺は渋々頷く。


「ま、まぁね。確かに奴らには、透明化魔法は通用しなかった。でも、あの時はあの塔に余計な奴を入れるなって命令があったと思うんだよ。ところがだ、今観察する限りでは、あのホムンクルス兵士はどしどし中へ入るように命令されてるだけだろ? ということは、俺達への対応なんか命令外ってことで、大丈夫じゃないか? 人間兵士じゃないんだし、その辺は融通が利かないはずだろ?」


「そ、そういうのって、希望的観測って言わない?」

 エルザの震え声に、俺はきっぱりと言い切った。

「いいんだよ、希望的観測でも溺れる者のワラでもっ。とにかく、今は淡い希望にすがって、こっそり中へ入ることを目指す! 余計な殺陣たては、あくまで非常時のみっ」

 それでも俺は、一応はサクラを見た。


「ブレイブハートの意見は?」

「わたしは別にいいわよ、その手で」


 意外にも、サクラはあっさり肩をすくめた。


「バレたらバレたで、その場で暴れるだけよ。ちょうど、いけ好かないレイモンもいることだし」


「い、いや、そうじゃなくて! だから余計な斬り合いはなるべく回避だと」

「そうと決まれば、早速始めようぞ!」

 まだ俺が話してるのに、もう見るからにわくわく顔のマヤ様が言ってくれた。

 むしろ見つかって暴れたいと考えているのが、丸わかりである。


「……くっ、ホントに暴れるのは最後の手段ですよっ」


 それでも俺は念押しは忘れず、諦めてネージュを見た。

「じゃあ、頼む!」

「はいはい――エルザも、万一の時に備えて、攻撃魔法の発動待機しててね?」


「う、うん」


 最後にネージュは同じ魔法使いのエルザに声をかけ、彼女も緊張して頷いた。





 

 さて、いよいよだ。


 いつものようにネージュが俺達に透明化の魔法をかけ、そして、全員で一列になってこっそりと大岩めがけて接近する。


 順番は、俺・マヤ様・ネージュ・レイバーグ・ローズ・サクラ・エルザの順だ。

 総勢七名で、木々の間を回り込み、抜き足差し足で大岩に近付いていく。

 当初は不安だったが……連中に接近していくに従い、これは案外上手く行くんじゃないかと思い始めた。


 なぜなら、ホムンクルス達だけじゃなくて、連中には傭兵も混じっていて、こいつらがまた、わいわいうるさいんだわな。


『おい、手提げランプ持ったか?』とか『つか、いつまで女っ気のない地下でうろうろするんだよ!?』とか『あぁあ、帰りてー(俺もだよっ)』とか、小声ではあるが、口々にしゃべっているのだ。


 おまけに最大の危険人物であるレイモンは、だいぶ後ろの傭兵が集まる列を監督していて、今すぐどうってことはない。

 お陰で、すいすいと岩の後ろまで接近できてしまった。いわゆる、楽勝である。


 でもって……ほほう? みんな吸い込まれるようにあの岩に入っていくけど――。


 岩のこっち側は、ジャガイモを半分に割ったような綺麗な面に見えるものの、それは魔法でそう見せかけているだけのようだ。

 見た目はまやかしで、あそこが入り口になっているというのは、事実だな。


 事前にサクラから聞いた通り、岩なんか気にせずに進めば、綺麗にその向こうへ抜けられるのだろう。

 よしっ。このまま連中に混じってこっそり侵入だ! 俺は一度だけ振り返り、『今から、行くぞっ』という合図に大きく頷く。すぐ後ろのマヤ様を含め、みんな緊張して一斉に頷き返した。


 そして俺は、気味悪いほど統制された動きで入っていく(ホムンクルスの)人造兵士に混じり、さりげなく横に並んで岩の中へ突入しようと――



「いったぁい!」



 ――げっ。


 聞き覚えのある声に慌てて寸前で振り向くと、列の最後でエルザが、難易度ゼロの平坦地で蹴躓けつまづいて転んでいた。

 すぐにモソモソ起き上がったが、涙目で鼻の辺りを押さえている。


「おいおいっ。今、色っぽい女の声がしたぞっ」


 いきなり後ろの方で傭兵の一人が喚き、俺は一瞬で血の気が引いた。



 え、エルザぁあああっ。




……並行して新しいの初めてますので、興味ある人はよろしくです。

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