早くもチラつく、プランB
「ナオヤがわたしにコンタクトを取ったことで、おそらくユメがその意図を見破ったのでしょうね」
マヤ様と同じく、最初から立ったまま聞いていたサクラがしれっと言ってくれた。
なにこの、他人事全開の物言いっ。
「考えてみれば、あの子はかつて封印された本人なんだから、そこまで推測しても不思議じゃないわ。むしろ、当然の疑いかも」
「待て待て待てっ」
連呼した俺は、かなり固唾を呑んでサクラを見つめた。
「まさか……ユメもその神器の、正確なありかを知っているとか?」
「それはないわね。今や、隠し場所を実際に知るのはわたししかいないから、他から洩れるはずもないし」
サクラが即答してくれて、俺を含めた全員がふうっと息を吐く。一応、使者を通じて事情は知っているためか、同じくエルザもため息をついていた。
「多分ユメは、自分を封印した後、神器はそのまま地下迷宮のどこかに隠してあると予想したんでしょう。地上のどこかに隠すくらいなら、まだ地下の方が見つかりにくいもの」
「あるいは、こちらの意図を見破ったユメが、単に我々の邪魔をしようとして、やってきたのでは?」
ローズが鋭い指摘をして、これにはサクラも頷いた。
「有り得るわねぇ。いずれにせよ……問題は今のところ、ユメの推測は全部ばっちり当たっているということよ」
サクラは真っ直ぐに俺を見た。
「言うまでもないけど、先に見つけられると、もうおしまいだからね」
「――! お、おしまいっすか!?」
おぉ、思わず敬語になっちまったやん。
小心な俺を、びびらせるなよ。
おまけに、サクラもクソ真面目に答えてくれるしな。
「そう、終わりも終わり、何もかも終わりの終点行き止まりよ。ユメ達に邪魔されるのはもちろんまずいけど、仮に向こうが先に神器を見つけて破壊したら、そこでジ・エンド。世界はユメのものね」
「そ、そんなきっぱり言わなくてもっ」
義憤に駆られたのか、レイバーグが口走る。
そうだそうだ、もっと言ってやってくれ!
「ここであれこれ話していても、始まるまい」
マヤ様が張りのある声で俺達の言い争いを一蹴した。
「まず、今なにができるかを論じるべきだ。少しでも急いで現場へ向かうべきだろう」
「げ、現場へ向かうのはいいけど――」
向かって、そこに未だにユメとダークピラー? とやらのレイモンがばっちり揃ってたら、どうすんだ。俺達で勝てるのか? それが無理そうだから、今こうしてせこい手を使おうとしているわけで。
しかし、こうなるとマヤ様を止めるのはどうせ無理である。
第一、他になにか良い方法があるわけでもない。
「わ、わかりました! 休息は中止して、即座に現場へ向かいましょう!」
俺はきっぱりと言ってのけ、皆を促した。
一応、着いたら苦し紛れのプランBもある……まあ、俺がヤバいことに変わりはないけどな。
「よし、すぐに出発だ」
「えぇええええええっ」
来たばかりのエルザが、いきなり黄色い声を張り上げた……随分と内股気味に。
「て、敵って、かなりの数いたわよっ!? この数であそこへ突っ込むわけ?」
切なく、懸命な目つきで俺を見やる。
俺はほろ苦い笑みを広げて、エルザの肩を叩いてやった。
「これでエルザも学んだじゃないか……な?」
「なにをー?」
「だからさ……間諜から一気に昇進しても、やっぱり世の中は甘くないんだよ」
「なによ、それっ」
ぷりぷりしてエルザが叫び――
「わ、私は戦士将の旗下に参じてから、甘い経験など皆無ですがっ」
「あたしもあたしもっ」
……さらにローズとネージュまで同時に言ってくれたが、俺はわざと聞こえない振りをした。何をどう言おうと、今は駆けつけるしかないんだよ!
本音を言えば、俺だって行きたくないわいっ。




