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正確なところは忘れた

「しかし自己申告って、それは今一つ信憑性が」


「まあまあ」

 疑わしそうに眉をひそめたローズを、俺は慌てて宥めた。

 少なくとも、サクラはその手の見栄は張らない気がする。魔法で自己探知してその数値だったっていうなら、本当だろうさ。


 そもそも、最初に手合わせした時も相当なもんだったし。




「俺はむしろ、慢心の種が一つ減って、嬉しいね。やっぱり世の中、相当に強いヤツっているんだよ。サクラがいい例だ」

 逆に晴れ晴れした気分で言うと、なぜかサクラが褒めてくれた。


「……そうは言うけど、ナオヤの数値はかなり自慢できるわよ。邪神との戦いが始まった当初で言うなら、わたしのレベルはナオヤより下だったしね」


 一応、褒めてくれているらしい。

 俺は素直に喜んでおくことにして、同じくニコニコ顔のレイバーグを見た。

「で、おまえは?」


「うん、ボクは君より下だった!」


 ……その割に、声が弾んでるやん。

「ボクは レベル39にHP5200、MPが4650だったよ。まあ、サクラさんより下だったのは少し悔しいけどね」

「それにしては、すごくいい笑顔だけど?」

「え、そうかな?」

 俺が首を傾げると、レイバーグが照れたように俯く。


「でも、ナオヤの方が強くて、なんだか安心したよ。ボクはそっちの方が嬉しいんだ」


「え、なんで?」

「それはまた何故だ?」

「なんでよ?」


 俺とマヤ様とサクラの声が綺麗に重なってしまう。

 レイバーグは笑って答えなかったが、ただ、ローズだけが納得したように頷いていた。

「ローズには理由がわかるのか」

 こっそり訊くと、わざわざ耳元で囁いてくれた。


「女の身としては、やはり気のある男性には守ってもらいたいものではないでしょうか」


「ええっ!?」

 なんだそれっ。

 いや、そんな兆候は特にない……ような。

 一人で焦ってしまったが、幸い、サクラ達はもう全然別の話をしてした。


「……レイバーグのレベルだと相当に厳しい気がするけど、本当に神器を使うの?」


「当然であろう」

 レイバーグではなく、マヤ様が即答する。

「他の選択肢などない。我が軍の兵士を援軍として呼び寄せてもよいが、あくまでも中心は我々ぞ!」

「そう……まあいいんだけどね」

 醒めた声で言ったサクラは、しかしぶっすりと釘を刺してくれた。

「でも、わたしとナオヤ以外の二人は、かなり危ないわよ。実際に神器を使って封印を行う時に、ひどく消耗するから……運が悪いと死ぬかもしれない。もちろんその前の戦いでも」


「えぇえええっ」

「マヤが死ぬものか!」


 俺の危惧する声とは裏腹に、マヤ様は相変わらず自信たっぷりだった。

「俺が大丈夫なら、マヤ様だって大丈夫じゃ?」

 びびりつつ尋ねると、サクラはしれっと言ってくれた。


「大丈夫とまでは保証してないわよ。わたしやナオヤだって、危ないのは同じなの。ただ、危ないレベルで言えば、そっちの二人の方がより危ないってだけ」


「私もいますし、ともに戦います!」

 ローズが凜とした声で主張したが、俺は返事する余裕がなかった。

「だから、マヤが死ぬはずないというのに」

 お通夜みたいな雰囲気の俺達の中、マヤ様だけが覇気を失わない。


「当然、マヤが大丈夫なら、ナオヤも大丈夫だ」


 ……しかも、この自信である。本人である俺が自信ないってのに。

「それで――」

 電車の吊革広告を見るような無表情な目つきで俺達を見渡した後、サクラは念押しした。


「まだ神器を入手して、ユメを何とかするつもり? 決心が鈍らないなら、約束だし案内はするけど……わかるところまでね」


「に、鈍らないさっ」

 他に方法がないので、俺はむっつりと言い切る。


「それより、わかるところまでってなんだよ」


「別に、大した意味では」

 サクラはもうそれが癖になったかのように、また肩をすくめた。


「地下迷宮は馬鹿みたいに広いから、わたしも正確な道順なんか覚えてないって話よ。大昔どころか、二千年前の前世の記憶だし、そんなの覚えてる方がおかしいわよね。だいたい、日本でスマホの地図アプリ使うようにはいかないんだから、最初から困難は覚悟してもらわないと」


「いちいち皮肉が多いよ! そんなんだから、世界には戦争が絶えないんだっ」


 俺は思わずむくれてしまう。

 つか、マジか!? 今から行くところって、そんな広いのかよ。地下は苦手だし、勘弁してくれと言いたい。


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