ステータス
ひょっとして、誰か難色を示すかと思ったが、サクラもレイバーグも特に苦情は述べなかった。
ただ、魔法を使う前に、サクラがマヤ様を見て小首を傾げはしたが。
「その人はどうなのよ?」
「マヤ様は心配ない」
俺は素早く断言しておく。
魔王たる者のステータスを、簡単に部外者に見せるわけにはいかない――というのもあるけど、この方は本当に心配ないだろうと思っている。
前に見せてもらった、寒気がするようなヒットポイントというか体力値は、今でも目に焼き付いているからな。
おまけに、筋力値なんか俺の八倍以上あったし。安定のクソ力と言えよう。
他が多少アレな数値でも、有り余るパワーと体力でたいがいカバーしちまうという、とんでもないステータスだからな。
「俺自身、マヤ様と戦って勝てる気がしない。俺が大丈夫なら、マヤ様は余裕」
本人がすぐ横にいるので、この際はヨイショも含めて盛大に褒めちぎっておく。いや、俺としては全く嘘ついてるつもりないんだけど。
「……ナオヤは、なんだかその人に甘そうだけどね」
嫌みは言ったものの、サクラもそれ以上は文句を言わず、レイバーグと共になにやらぶつぶつ詠唱に入る。
おそらく、ステータス値の探知魔法みたいなのがあるんだろう。
俺も早速、リングに付与されたリングマジックで見ようとしたが――
サクラ達の視線が逸れた隙に、マヤ様が素早く頬を寄せてキスしてくれて、驚いた。
思わず息を呑むと、耳元で囁かれた。
「……あとで二人きりになった時に、よい物を見せよう」
俺がかばってくれたと思われたらしく、随分と優しい声だった。
横を向くと、やたらときらきら光る瞳と目が合ったりして、焦ること焦ること。俺は了承の印に微かに頷いた後、立ち上がってさっさと声に出した。
「す、ステータス前面表示!」
懐かしいキーワードを声に出した途端、例によって透過スクリーンみたいなのが目の前に出た。久しぶりだな、これ見るの!
例によって細かいパラメーターはほぼ斜め読みで飛ばして、レベルとHPとMPだけ目を走らせる。
「レベル41で、HPが6995にMP4420……この数字、アテになるんですかね」
俺は眉をひそめて言ってしまった。
いやだって、このHPだと、もはやあのボンゴより上になってる気がするぞ……まあ、あいつも今数値を出したら、どうなってるかわからんけど。
「リングマジックに間違いなどあるものか」
マヤ様がうきうきとした口調で言う。
「やはり、リベレーターとの戦いでエスメラルダと決着を着けたのが大きかったようだな」
我がことのように喜び、俺の肩に手を置かれる。
「さすがはナオヤだ! よくやった、マヤは感動したっ」
「い、いや……まあ俺のことは置いて」
マヤ様もそうだが――素早く俺のステータスを覗き見したローズが、あんぐりと口を開けて俺を見てくれるので、居たたまれなくなってしまった。
この子の目つきたるや、「このショボそうな人がこんな数値なのぉおおおお。嘘よぉおおお」と言わんばかりの表情なんだな。考えすぎかもしれんが、人の顔色を読むことにかけては、俺はちょっとしたもんなんで。
そんわけで悪照れしてしまい、同じくこちらに寄ってきたサクラ達の方を見た。
「それで、そっちは――」
言いかけた途端、サクラも消える前の俺のステータスを見たのか、小さく頷く。
「まあ、だいたい予想通りだったわね、ナオヤ」
「……というからには、おまえはさらに上なのか?」
「リングマジックみたいに投影できないから、自己申告になるけどね」
サクラは肩をすくめた。
なぜかひどく悔しそうである。
「腕が鈍ったようね。レベル47……当時よりかなり落ちてたわ。
あとはHP6850で、MP8551だった。細かい部分で、ナオヤの方が上の数値もあったわね」
「なんと!」
いやぁ、俺達は顔を見合わせちまったね!
なんだその、破格のステータスっ。
当たり前だけど、このねーちゃんも態度がデカいだけのアレなセーラー女じゃなかったな。さすがはブレイブハートってトコなのか。




