実力を見せるべし
そりゃまあ、誰でも彼でも簡単に封印できるくらいなら、今こんなに苦労してないだろうけどさ。
だから言わんとすることはわかるんだが……本当になんて口の悪い女だ、ちくしょう。
黙ってりゃ、誰もが振り返る切れ者風の美人だってのに。
「とりあえず、現在の勇者がそこにいるから、サクラと合わせて最低二人確保だろ?」
俺はあえて気安く言って、黙って聞いていたレイバーグを指差す。
「ええっ、ボクかいっ」
……なに驚いたような顔で自分を指差してんだよ、レイバーグ。
俺はむっとして強く頷いた。
「ここでおまえが活躍せずして、いつするんだよっ」
「では、ナオヤとマヤを含めて四人だな……うむっ」
当然のような顔でマヤ様が腕組みをする。視線は既に、まだ見ぬ地下迷宮にある感じだ。妙に嬉しそうなのがたまらん。
今から頭が痛いぞっ。
「あの……私も剣技だけなら、少しは腕に覚えが」
とかなんとか、小さな声でローズが呟いたが、俺は肩をすくめるにとどめた。
うん、兄貴のギリアムも言ってたし、このねーちゃんは確かにそこそこ強いかもしれん。しかし、レイバーグとサクラと比べるのはな。
だいたい、砦では奮闘むなしく捕まってたし。
「……まあ、ローズのことは置いて」
「お、置くのですかっ」
「(無視)俺もマヤ様ほど自信ないんですが」
「待ちなさい!」
俺達の勝手な言い分を、サクラがばっさり遮った。
「ナオヤはまあわかるわ……貴方は確かに、神器を扱えるかもしれない。確実に死ぬ寸前までは行くにしても、神器が反応しないということはないでしょう」
「待てコラ。今さらりと聞き捨てならん情報を言って――」
「でも、その二人はどうかしらね」
俺の抗議を聞き流して、サクラが胡散臭げにレイバーグとマヤ様を見やる。
つまりこいつもローズはスルーしたわけで、ローズ本人がむちゃくちゃ膨れっ面をしていた。
「特にレイバーグ? 貴方も、かつてのブレイブハートほどの威圧感なさそうだし」
俺はその言い方に義憤を覚え、思わずレイバーグをけしかけちまった。
「おい、あんなこと言われてるぞっ。現役勇者から、ひとつガツンと言ってやってくれ!」
「ボクは別に自分の力をひけらかす気はないから、いいんだけど」
勢いのないことを言いはしたものの、やはりレイバーグも面白くなかったのか、サクラをじっと見つめた。
「そういう君は、果たして本当に強いのかい? ボクはまだ手合わせしたことないしね」
「なんなら、手合わせしてみてもいいわよ」
サクラがまた、別に気負うでもなく、さらりと言ってくれる。
いわば「表へ出てもいいのよっ」と申し出ているに等しく、小心な俺のドキドキ感を煽ってくれた。
「待て待てっ。おまえら二人がやり合うと、手合わせと言いつつ、途中からめちゃくちゃ本気出しそうだ。食事の後で、胃の中身をぶちまけるような光景はいらん。そんなのより、リングマジックであっさりわかるだろ!」
サクラはもちろん、今やレイバーグも前してたリングを装着していないが、それは別に問題にならない。
あれは元々、普通のリングにレベル探知の魔法を付与して、リングマジックとか名付けてるだけなのだ。
「――だからさ、魔法使いならリング無しでもレベル探知できるわけで、ネージュを呼べば」
「その必要はないわね」
「その必要はないよ」
なぜかサクラとレイバーグの声が重なった。
二人で顔を見合わせた後、サクラが肩をすくめて言う。
「探知魔法なら、わたしも使えるもの」
「えっ」
俺は一人でびびってサクラを見返す。
「でもおまえ、スリープの魔法を部下に使わせてたくらいで、自分は使えなかったんじゃ?」
「いいえ、魔法も使えるわよ。ただ、得意じゃないから、あまり自分で使いたくないだけ。それに無理して魔法なんか使うより、刀で戦う方が好きだもの」
ほんのりとヤバそうな発言は置いて、俺はレイバーグの方をのろのろと見る。
こいつも、なぜか申し訳なさそうに教えてくれた。
「ボクも、簡単な魔法くらいなら使えるよ。彼女と同じく、無理に使おうとしないだけかな」
「うう……俺だけ魔法使えないのか」
がっくりと落ち込んだ俺に、マヤ様がしんねりと横目を使った。
「ナオヤは膨大なMPを持つくせに、全然無駄ではないか。もっと精進するがよい」
「こ、ここぞばかりにお叱りの言葉、まことにありがとうございます」
思わず拗ねたような声が出てしまった。
「ああ、もういいです。それじゃ、俺は自分のリングの付与魔法でステータス出すから、二人ともそれぞれ教えてくれ」
落ち込んだのも束の間で、俺は少し緊張した。
これでようやく、あのサクラの実力が、ある程度は判明するだろう。




