表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
230/317

困難な条件


「ちょい待った!」


 俺はいきなりサクラの機先を制した。


「なによっ」

「いや、条件提示の前に、俺が事前に言っておかないと」


 むっとしたサクラに言い訳し、俺はマヤ様をこっそり手招きして、皆から少し離れた。いや、少しじゃまずいな。サクラは地獄耳だ。余分に距離を取っておこう。





「どうかしたのか?」

 木立の陰で、マヤ様も声を潜めて訊く。

 そこで俺は低頭して頼んだ。

「提案ですが……条件提示されたら、俺に任せてくれませんか」


「マヤはいつも、ナオヤに任せているではないか」


 マヤ様が早速、不機嫌そうに言い返す。

「言っておくが、マヤが誰かを信頼して任せるなどということは、今までにまずなかったのだぞ。そこを考えよ!」

 おまえ、ちゃんとわかってるか! と言わんばかりに睨む。

 絵に描いたような膨れっ面である。


 この人は時として、子供みたいなところを見せるので、困るのだな。いや、俺はそこも可愛いと思ってるんだけど。

「いやいや、わかってますよ。でも、今回はあのサクラが相手なので、ちょっとでも不服そうなところを見せたら、たちまちへそを曲げそうな気がするんですよ。自分でわがままだって自称してますし」


「マヤだってわがままだ!」


 す、すぐさま鼻息も荒く言われた。

 だから、全然自慢にならんっつーのに。


「ナオヤはどっちの味方なのかっ」

「マヤ様の味方ですがなっ」


 俺はいつの間にかマヤ様の手を握っていた。

「だからここは一つ、横槍を入れずに、ずばっと俺に任せてください。最後はマヤ様のためになるようにいつも考えてますから」

「むう」

 必死こいて訴えたせいか、ようやくマヤ様が軟化してくれた。というより、少々呆れ顔で俺を見た。


「……案ずるな、ナオヤ」

「わっ」

 素早く頬にキスされて、飛び上がりそうになった。

 なんだよ、いきなりっ。


「マヤとて、ナオヤの顔を潰すようなことをするものか」

 頬に手を当ててきて、柔らかく言われる……珍しくも。

「妙なことを気にせず、存分に交渉せよ」

「あ、ありがとうございます……」

 いや、キスのせいでちょっと魂抜けたな。





 もう何度か経験してるのに、唇がすっげー柔らかくて、思わず意識してしまう。おまけに、俺が慌てるのを見て、ものすごく楽しそうに微笑するのだな、この方は。

 こっちが焦るのを見ると、嬉しいらしい。


「お、おほん……では、戻りましょう」


 いささかギクシャクした歩き方で、俺はサクラの前に戻った。

 全員のじっとりした視線を浴びて。


 腰に片手を当てて俺達をしんねりと見ていたサクラが、いの一番に言った。





「……もしかしなくても、お尻に敷かれてるの?」


 くっ。なんか、胸にずしっと来そうな軽蔑の目だな、畜生っ。

「し、尻も胸も関係ないって! 俺は元々、マヤ様の臣下だろっ。第一、何言われても従うわけじゃないわいっ」


 あ、いかん……思わず熱くなったな。

 どうも俺は美人の挑発に弱いので、気をつけんと。

「んなことより、条件はなんだ」

 身構えて問うと、今度こそサクラはあっさり言ってくれた。






「仲間になってあげるから、この場でレージを解放しなさい」

 途端に、仲間から黄色い叫び声が上がった。


「馬鹿を言うでない!」


「おい、サクラあっ」

「ええっ」

「そんなの無理ですっ」


 おぉ……レージ本人とレイバーグとローズの声が重なったのはともかく、一番先に一番でっかい声で、マヤ様が叫んだという。


 ――さっきの約束が五秒で反故かよっ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ