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レイバーグの意見

 砦を出た俺達は、なるべく街道を通らず、道なき荒野を進んでいる。


 理由はもちろん、途中で敵であるレージ軍に見つかりたくないからだ。ここはまだ魔界の領内だが、敵もいっちょまえに間諜を使うらしいという報告が来ている。


 だから、用心しないといけない。

 

 ……ただ、俺は自分が使う間諜達には、こっちの現在地がわかるようにしておいた。

 そのお陰で、道中でも割と頻繁に間諜達の報告を受け取っていたのだが、その中に気になる情報が混じっていた。





 なんと、これからコンタクトを取るつもりのサクラの方でも、どうやら俺達を探しているらしく、やたらと探索の間諜を放っているとか。


 理由が不明なだけに、不気味だ。

 向こうからこっちに投降する意図がある――という話なら楽でいいが、もちろん、そんな甘い理由じゃないだろう。


 これはおそらく、俺達がサクラの身辺を探っていることに気付いた本人が、「なら、こっちから出向いて叩きのめしてやるわよ!」とか考えているに違いない。


 実際、あいつはそんな短気そうな女だったからな!


 だがしかし、その嫌な報告以外では、今回、道中はおおむね順調だった。

 もちろん、途中で散々マヤ様の気まぐれやらわがままに振り回されはしたが、それはいわゆる、想定の範囲内である。


 気付けばまた国境の森へと入り込み、例の支城まであと僅かと迫っていた。

 




 ……翌朝早くにはまたあそこへ着くという日の夜、俺とレイバーグは当番の見張りに立った。

 本当はネージュの魔法結界があるから、見張りはいらないはずなのだが……本人が俺に話があるらしいので、無理に時間を作ったのである。


 寝静まった皆から離れると、レイバーグは早速、訊いてきた。


「サクラとコンタクトを取るって言ってたけど、計画はあるの?」

「一応、な」


 俺は肩をすくめて見せる。

 正直、自信満々とはいかないが、他に代案もない。

「間諜の報告だと、どうやらサクラの方でも俺達を探しているらしい。その証拠に、どうも俺達の接近も薄々察知してるような気配があるんだな。夜ごとに、支城の周辺を自ら巡回しているらしいんだ。だから、逆にそこにチャンスが」

 全部言う前に、レイバーグが口を出した。


「サクラにバレているなら、敵のほとんどはもうこっちの接近に気付いてるということじゃないかな? それに君は、アランという敵戦士にも恨みを買っていたじゃないか。迂闊に近付かない方がいいんじゃないかい」


 自分達の安全というより、俺の身を案じているような口ぶりだった。

 しかし、俺の内心をずばり抉ってくれたなあ。口には出してなかったが、俺自身もアランのことは忘れてない。

 もう配置が変わって、あの支城を去っていたらいいのにと願っているほどだ。


「アランの動向については、全く情報が入ってこない」 

 俺はブラックウッドの太い幹にもたれかかり、さりげなく言った。

「だから、この段階で考えてもしょうがないさ。今はサクラを確保することだけを考えよう」


「君の気持ちはわかるんだけど」

「なんだよ、今日のおまえ、やたらと回りくどいぞ。何か危惧でもあるのか?」


「……危惧というか、本題はこれからさ」

 誰もいないというのに、レイバーグは森の中を見渡し、わざとらしく声を潜めた。





「君には話しておこうと思うけど、これからボクはもう一度、二千年前に栄えたロクストン帝国時代の古い記録を調べてみようと思うんだ」

「どうやって!?」

 驚いた俺が声を上げると、レイバーグは誇るでもなく答えた。


「こう見えても、ルクレシオン帝国内には、まだ何人かの仲間が残っているからね。彼らの多くは傭兵時代に世話になった人達で、連絡さえ取れれば、協力してくれる。彼らを通じて、当時の古い書物か、あるいは遺跡の在処を調べてもらえないかなと」


「なるほど……」

 俺は小さく頷く。

 わざわざ俺に断ってくれたのには驚いたが、それで正解だったかもしれない。


 というのも、俺はレイバーグが裏切るかもなどとは微塵も考えてないが、他の仲間はどう思ってるかわからんしな。

 下手に話すと、勘繰る奴もいそうだ。

 

 レイバーグはまだ身分も定まってないし、その辺は微妙な立場だよな。




「そりゃ、俺としても有り難いことだが、どうしてまた、急に調べる気になったんだ? こう言っちゃなんだが、サクラとコンタクトが取れたら、あの女に聞くのが一番早くないか?」


「それだと、真偽の判断がつきにくいだろう? ボクらの未来のためにも、自分達でも情報収集した方がいいと思う」

「……まあ、それはわかる」


 さすがに、そこら中を漁る勇者は言うことが違う。

 いや、それは俺の世界のゲームの話だけど――とにかくレイバーグは、思ったより慎重な性格らしい。


 感心してたら、レイバーグが少し離れた場所に座らされているレージの方を見やり、小声で言った。


「それにボクは、彼のことが妙に気になるんだ……あの男は本当に、普通の人間なのだろうか」



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