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敵に知れた(敵側の1……数回予定)

 我々レージ軍は、今はルクレシオン帝国とやらの王都を制圧し、ベルグレム王の居城だったクレアール城を本拠としている。


 王都クレアールへの空からの奇襲が功を奏し、敵の本拠を風のように制圧したわけだ。お陰で、この城にいた王族共は軒並み捕らえたし、滑り出しは上々だった。


 しかし……後がよろしくない。


 ルクレシオンの元司令官のレイバーグという奴は魔界へと寝返り、そしてその魔界は我々への徹底抗戦を選んだ。

 こちらもすぐに、ルクレシオンと同じく空からの奇襲を試みたが、向こうの帝都はルクレシオンの王都ほど甘くはなかった。


 どうやら、敵のナダル大公とやらが魔王城にがんばっている限り、あそこを制圧するのは容易ではないように思える。最悪、ユメ様の出馬を待つ必要があるかもしれない。





 この私――ダークピラーの一人たるレイモンが制圧に向かえばいいかもしれぬが、あいにく元ルクレシオン内で抵抗運動が度々重なり、今はその対応に大わらわである。

 とてもまだ、魔界まで手が回らない。


 ……そして今、さらに頭の痛い出来事が起きている。

 もちろん、我らとは本来関係ないはずの人間……あのレージのことだ。


 一応司令官扱いをされているわけで、そのこともあって一時は国境の砦にユメ様と詰めていたのだが、ユメ様がちょっと砦を留守にしている間に、あっさりと敵に捕まりおった! とんでもない役立たずである。ここまで役に立たない指揮官も、ちょっと珍しい。敵の数はさほどでもなかったらしいのに、あの砦を奪い返されるなど。


 ユメ様がいかに持ち上げようと、あの男に大きな秘密があるなど、到底信じられん。

 かつて、その証拠の片鱗らしきものを見た私も、実はあれは他の要因が原因だったのではないかと疑っている。


 はっきりいってレージ軍のお荷物以外のなにものでもないが、ダークピラーである私は、創造主たるユメ様の意向には逆らえない。

 今、渋々対応策を練っているところである。ただあいにく、時間は都合よく待ってはくれない。


 ここへ来て、さらに問題が起きてしまったのだ。





 

 ヴァレンティーヌ様改めユメ様の下へ報告に行った時、当然ながら、あのお方は不機嫌極まりなかった。


 元ルクレシオン王のベルグレムが座していた玉座に座り、ドレス姿のまま、むっつりと考え込んでおられる。

 しきりに人差し指を噛んでいるのは、転生したこの方が思案中の証拠だ。

 お邪魔はしたくないが、この報告はしないわけにはいかない。




「おほん……ユメ様」


 私が話しかけると、ようやくユメ様がこちらを見下ろした。

 跪く私を見て、ぶすっと声に出した。


「なに、レイモン?」

「お邪魔して申し訳ありません。実は、部下より報告がありました」


「なによ? あっ、まさかパパ(レージをこう呼ばれるのだ)のこと!? パパのことだから、自力で脱出してくれたとか!?」


 途中で気になったのか、ぐっと身を乗り出す。

「いいえ、実は敵の内情のことです」

 私は恭しく頭を下げた。

「奴隷として潜り込ませた間諜の報告によれば、どうやら敵は、サクラの居場所を探っているとか」


「サクラの居場所ぉ?」

 

 お気持ちはよくわかるが、ユメ様は実に胡散臭そうに私を見た。

「なんで魔界の連中が、太古の昔に活躍したブレイブハートに興味持つの? 前線にいるから?」

「その辺の細かい事情はわかりませんが」

 私は目線を下げたまま、お答えする。


「捕らえた敵の間諜も、同じことを証言しました。敵の戦士将という将軍クラスの若者から、『レージ軍のサクラの所在地を、できるだけ正確かつ早急に調べるように!』との指令が届いているそうです。しかも、密かにコンタクトが取れる方法があるようなら、それも合わせて探り出せとの命令だとか!」


 後半が特に重要なので、私は声を大にしてご報告した。


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