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意気消沈

 俺がそう言うと、マヤ様はしばらく眉をひそめて俺を見返した。


 まさか今のヒントでもわからなかったのかな、と思ったが――そうではなかった。


 この人は今の俺の言葉に潜んでいた、ヤバすぎる意図を見抜いていたのだ。

 その証拠に、しばらくしてそっと指摘したからな。





「あのサクラとやらを、誘拐でもする気か!?」


「まあ、せずにすめばいいんですけどね」

 俺は暗に認めた。

 眉をひそめたままのマヤ様が反対しそうなので、急いで言った。


「俺自身も気が進まないですが、方法を知る確実な者としては、まずサクラが第一候補でしょう。かつてのブレイブハートなのだから。であれば、否応なく彼女に尋ねるしかない。最善の方法は、彼女をスカウトすることですが――」


 言いかけた途端、マヤ様が腕組して俺を睨む。

「これまでの経緯を聞く限りでは、とても誘いに応じるとは思えぬが」

「……そうなんですよねぇ。だとすれば、方法は一つじゃないですか」

 あえて言いたくないことを、俺はずばり口にした。


「つまり、サクラを誘拐して訊くしかないってことでしょう!」


 途端に渋い顔で何か言いかけたので、俺は重ねて説明した。


「とはいえ、誘拐も難しいのはちゃんとわかってます。しかし、俺達には現在、レージという敵側の大物人質がいるわけです。だから、もしも誘いに応じないなら――後はわかるな? 的な脅しを使えば、なんとかなるかもしれません」


「な、なかなか悪辣だな」

 マヤ様は妙な感心の仕方をした。

「ナオヤは……マヤが思っていたより遥かに、魔王の参謀に相応しいかもしれぬ」


 いや……その感心の仕方、なんか引っかかるんだけどな。

 俺、そんなにヤバい奴になってるか……こういうの、自分では気付かないらしいからなあ。


 自分で勧めておいてなんだが、最後は俺自身が顔をしかめることになっちまった。


 





 無論、俺はマヤ様の私室を辞した後、他の仲間にもこの件を説明している。


 砦内にある、軍議を開く部屋に皆を集め、ざっと話したのだ。まあ、ミュウはお休み中だし、ボンゴは見回り当番なので、二人はこの場にいないけど。


「当面、サクラの居場所を知るのが最優先だな。そっちの方は、もう間諜に指示して探りを入れてくれるように命じてある」


 説明の後、俺はずばっと結論を言った。

「だから、その報告待ちかな、後は」

 ただ、はいこれで話は終わり、とはならなかった。

 当然ながら、俺が沈黙した途端、みんなあっという間にざわめき始めた。


 コの字型に配置している長机について、全員が上座の俺をポカンとみていたのだが、いの一番に発言したのは、エルザである。






「その子ってむちゃくちゃ強いんでしょ? そもそも、かつての勇者ってことになってるわけで……ナオヤ、勝てるのぉ?」


 猜疑心満載の顔で訊いてくれた。このアダルトねーちゃんも、実はいちいちきっついな、言い方がようぅうう。


「勝てる勝てないの問題じゃない! いざとなったら、レージを盾に脅してでも、話を聞くのっ。それか、拉致るんだよっ」


 むっつりと言い切ると、次にレイバーグが発言した……ヤケに哀しそうな声で。


「ナオヤは……どんどん悪くなるなあ……はぁあ」


「お、おまえなあ、俺だって気にしてるんだから、ずばり言うなよっ」

 憤慨した俺は、思わず遠くのレイバーグを指差す。

「あと、胸に手を当ててため息つくな、ため息をようっ」


「あの――戦士将」


 下座の方にいた金髪のローズが手を挙げて発言を求めた。な、なんか今日は声が小さいな……しかも声が遠慮がちだし。


「なに?」

「もし、その女性の所在がわかり、遠征する必要が生じた場合は――」


 そこで、なぜか口ごもる。

 これも、このねーちゃんには似合わない。


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