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突破口……か


「いや、俺だって女の子を倒したくありませんよ」


 実際、嫌でたまらないのだ、俺も。

 だけど、今回は事情が違う。


「俺の命だけの問題ならともかく、このまま戦況が進めばマヤ様まで危なくなるかもしれない。俺の役目は、マヤ様の覇道を助け、同時に身の安全を確保することです」





 どうも忘れられているようなので、きっぱりはっきり言っておく。


「そのためなら、幾ら気が進まなくても、なんだってやりますよ。もちろん、レージを盾にとって向こうを脅すことだってね!」


 綺麗事じゃ、マヤ様を守れない。

 さっきの戦いで、俺はそれを実感した。


「そ……そうか……うん、そうか」


 なぜかだいぶ当初の怒りが萎んだようで、マヤ様は目を瞬いて俺を見た。なぜかそっと手を伸ばしてきて、俺の手を握ってくれたり。

「ナオヤは本当にマヤを心配してくれているのだな」

「そりゃ心外な言いようですねっ」

 今度は俺が膨れっ面になる番だった。


「わかったわかった、そう拗ねるな。今のはナシだ、マヤの失言だった」


 マヤ様が慌てて手を振る。

 この人にしては珍しいことなので、俺もうるさく言うのは控えた。

「それで、具体的にはどうする? なにか手はあるのか……あの女は、相当以上に不死身に思えたが」

「マヤ様がそう言うくらいだから、相当なものですね」

 実際に戦い、マヤ様は敵の実力を実感したのだろう。



 そもそも相手の実力を認めるのも、この人にしては珍しい話だ。


「でも……俺達は忘れがちですけど、別にユメは無敵じゃない。少なくとも過去に一度、敗れて封印されているわけです。ええと、邪神ヴァレンティーヌ? とにかくユメがそんな名前だった二千年ほど前に」


「うん。ロクストン帝国が実在した頃に、百人の選ばれた勇者によって――だな。ただし、戦いの途中で次々と勇者達は倒れ、最後は数名ほどしか残らなかったらしい。今は色あせたが、長らく語り継がれた伝説らしいぞ」

「みたいですね……俺も聞いて間がない話ですけど」


 俺は顔をしかめて頷く。

 聞いただけで腰が引ける話だが、どうやら事実らしい。

 そしてあのサクラは、最後まで生き残った数名のうちの一人に入っていたということだろう。まあ、当時の名前は違うんだろうけど。


「この大陸の歴史を調べたことのあるレイバーグによれば、勇者の最後の生き残りとなった数名は、なんらかの非常手段を使って、邪神を封印したそうです。とはいえ、この封印というのは殺したことを指すのか、あるいは文字通りの封印か、そこは不明ですけど」


 俺はゆっくりと語り、不審そうなマヤ様の顔をじっと見つめた。


「つまり、俺が思うに、あの邪神を倒すための手段が、何かしらあると思うんですよ」





 無理してにんまりとほくそ笑んでみたり……実際は、笑うような気分じゃないけどな。これから持ちかけることを考えれば。


「そこで、攻略するための最良な手段は、おそらく当時あったその方法に頼ることかなと」


「……ふむ」

 マヤ様は眉根を寄せて考え込んでいたが、やがてため息をついて頷く。

「まあ、あまり豪快な手段ではないようで、マヤの好みからは遠いかもしれぬが、この際、贅沢も言ってられないか。あの女が消えるのなら、この際はよしとしよう」

 気楽に言って、期待した目つきで俺を見た。

「それで、その手段とは?」


「……残念ながら、レイバーグ曰く『記録が残っていない』そうで」

「なんだ!」


 気が早いことに、すかさず失望の声を上げた。

「手段がわからぬのでは、話になるまい!?」

「そうでもありません」

 俺は自然と声を潜めてしまう。

 いや、別に芝居がかっているわけじゃなくて、どう考えても気が進まないので。しかし、他に手段も思いつかないしな。


 方法がなければあとは力押ししかないけど、それで勝てるとは思えない。


「少なくとも今の世にも、当時の戦いを知る者が幾人か残っています。もちろん、彼らが肝心な方法を知っているかどうか断言はできませんが――」


 俺はそこで思い切って言った。

 ええい、どうせ他に方法はないんだ!


「よく考えてみてください。今だって最低一人は、当時封印した手段を知る者がいるじゃないですか」


アマゾンに、俺魔新刊のイラストが載ってました。気になる方はどうぞ。相変わらず、素晴らしいです。

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