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そもそも目つきがやらしい(因縁)


 というわけで深夜、俺とマヤ様は改めて砦主塔最上階の私室で、額を集めて相談することとなった。


 いい加減疲れているし、少し休みたいんだが、マヤ様の要請は無視できない。

 他に直臣がいれば、複数メンバーと軍議できるんだが……現状、俺一人だからな。


 まあだからと言って、直臣増えたら嬉しいかと言われると、それはそれで複雑な気分なんだが。






「聞いているのか、ナオヤっ」


 あ、唾飛んできた。

「す、すいませんっ。な、なんでした!?」


「やっぱり聞いてないではないか!」


「おっとお!」

 テーブルの下からこっちの足を蹴ろうとしたマヤ様の攻撃を、俺は華麗に避けた。

 ほとんど反射的な行動だが、さすがに慣れてきたのである。こんだけゲシゲシ殴る蹴るがあれば、犬でも避けることを覚えるさ。


「小癪なっ」


 しかし、マヤ様は避けると余計にむかつくらしく、代わりにテーブルの上に置いた掌をぐっとつねられてしまった。


「いってえっ」


 ペンチかよ! かえって避けた方が痛えよっ。

 涙目で手の甲をさする俺を、マヤ様がしんねりと睨む。


「だから、ナオヤは実は、ミュウと日頃から怪しいことをしているのではないかと言ってるのだ!」

「はぁああ?」


 いや、思わず妙な声が出ちまったよ……怪しいことを……している? なにを?

 この人が深刻な顔してたの、そのことか。





「今、そんな話をしてる時ではないのでは? 俺だって、ミュウが心配なのを我慢してるのにー」


「それだ、マヤが言いたいのはっ」 

 半ば腰を浮かせて、マヤ様が俺に指を突きつける。


「確かに、ミュウが斬られた直後は、マヤも多少は心配してやっていた……しかし、あの後で駆け付けてきたナオヤの顔を見ると、真っ青で引きつっていたぞ! あれは、日頃からただならぬ情を交わしていた者の顔だ。そうだ、そうに違いない!!」


 いや……情を交わしていたと言われても。

 当惑しているうちに、「そもそもおまえはミュウの胸や腰をいつもトロンと見ている」だの、「配下に胸の大きな女が多い(前も言われたぞ)」だの、「ネージュがおまえのところに来たのは偶然ではあるまい」だの――しまいには「他の女を見る視線がいやらしい」だの、とんでもない因縁まで付けられた。


 いや、最後だけは否定できない面もあるが。




しかし……なにもこんな時に言わんでもいいような。鼻息も荒く睨むマヤ様を呆れて観察し、俺はようやく気付いた。


 もしかして俺……嫉妬されている?

 そう言えば、立ち上がったマヤ様は、めちゃくちゃ膨れっ面だしな。


「ええと……そりゃミュウの身体は心配ですけど、おそらく待機モードで回復中なんだろうから、今は過剰な心配はしてません。それより今の俺は、マヤ様の方が心配ですよ」


 嫉妬はやめましょう、などと言うと余計に修羅場になる気がするので、俺はわざと真面目な顔を作った。


「今現在、俺が頭を悩ませてるのは、今後の我が軍の対応ですよ。どうすれば、マヤ様に危険が及ばないようにすればいいかという――」

「そんなもの、軍勢を集めて攻め入る他はなかろう!」


 不服そうではあるが、一応マヤ様はそっぽを向いて言ってくれた。

「それより、ナオヤはミュウが」

「今はそんなことより、対応を決めるべきですって!」


 気ままな新魔王陛下に、俺はきっぱりと言う。




「時間が経てば経つほど、ヤバくなっていく気がします。あの邪神女、どうやら自前で人工兵士を量産できるらしいし、それでなくてもルクレシオンでは寝返る連中が多かったようですし」


「……では、どうせよと言うのだ」


 ようやくマヤ様は追求をやめて座り直し、話に乗ってくれた……不機嫌そうではあるが。

「当初、話し合うことを考えていましたが。どうも、この調子では厳しいですね。相手を怒らせてしまったし」

 俺はため息まじりに両手を広げる。


「そこで――やむを得ないことですが、ユメをどう倒すかを考えましょう。他の連中はみんなあの邪神より力が劣るはず。ならば中心にいるユメを倒せば、自然と敵が瓦解するかもしれません」


 しばらく俺を見つめた後、マヤ様は首を傾げた。


「……ナオヤの意見にしては意外だな」


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