邪神の実力
「いやぁああああああっ」
「くっ、このおっ!」
対の魔剣をクロス――つまり、十字形に構えて空へ向け、ユメはなんと真っ向からマヤ様のジャンピング斬りを受け止めた。
ガィイインッと聞いたこともないようなでっかい音がしたが、驚くべきことに、ユメはマヤ様の攻撃を受けきった。
膝が少しガクッとなったし、立ってた部分の地面がぼこっと派手に陥没していたけど、本当に受けたのだ、このちっこい女の子が!
「嘘だろ、どんな怪力だよっ」
「はははっ、おもしろい! ナオヤ、マヤも加勢するぞっ」
――いや加勢もなにも、既にバリバリ戦ってますがなっ。
俺はポカンとしつつも、内心で突っ込みを入れた。
実際、ギラギラした真紅の瞳でマヤ様が哄笑し、その場で大剣を思いっきり横薙ぎにする。しかし、これはユメが素早く身を沈めて躱し、逆にマヤ様の懐に飛び込んでいく。
「ぬっ。やるではないかっ」
「ふん!」
い、一応避けたけど……危ないな、おいっ。見てられんっ。
それでも、まだマヤ様の覇気と闘志は健在だ。一旦間合いを空けたが、すぐにむちゃくちゃ嬉しそうに哄笑し、馬鹿でかい大剣を縦横無尽に振り回してユメに迫る。
短いスカートの裾が翻し、ユメと同じく真っ黒な大剣が、風を巻いて小柄な身体に迫る。十トンダンプの正面衝突より破壊力がありそうな横殴りの斬撃だったのに、ユメは避けきれぬと見るや、真っ向から受けてたじろがない。
……俺だって、あんな本気の斬撃、受ける自信ないのに。
だって、力負けするからなっ。
「なまいきな女ぁーーっ」
「どっちがだ!」
双方、一歩も退かずに渡り合っているわけで、嘘みたいな光景だ。
そこでようやく俺は、慌てて加勢しようと駆け付けた――が。ユメはマヤ様と戦いつつ、面倒くさそうにこっちに左手を伸ばした……ほんの一瞬。
途端に、俺の眼前が太陽が爆発したみたいな有様になり、ぞっとした俺はその場から跳んだ。
ほぼ同時に、俺が駆けてた辺りに、またでっかいクレーターができていた。
着地した後、まだ大地が揺れていて、お陰で俺は尻餅ついちまった。
当然、こっちに駆け付けようとしていた魔族軍の将兵も、全員がその場で急停止し、驚いたように叫んでいる。
おいおいおい、なんだそのイカサマっ。今の、全然呪文も発動の言葉も口にしてなかったぞ。いやでも、神の身なら当然なのかっ。
「ナオヤ、まだ生きてるよねっ」
「ナオヤ、しっかり!」
「ま、まだこれからさっ」
駆け付けてきたレイバーグとエルザに、俺は強がり百二十パーセントで言い切り、何事もなかったようにさっと立った。
「戦士将っ」
「ナオヤ様!」
遅れて金髪のローズとギリアムの兄妹も来たが、ミュウと――それから肝心のネージュがまだだ。まあ、人質連れてくるんだから、ダッシュってわけにもいかないか。
多分、ミュウはネージュを手伝ってくれてるんだろう。
「なら、まだしばらく時間を稼がないといけないっ」
ギンギンギンッとうるさいほどの剣撃の音がする中、俺はまた魔剣を構え直す。
うっ……この短い間に、心なしかマヤ様の旗色が悪くなってる感じがするぞ。
未だに剛力もスピードも健在だが、徐々に死角を突かれることが多くなっているような。今のところは、まだ辛うじて避けているけど。
「レイバーグ、合図したら、俺と同時に頼むっ。ここは一斉にかかろう」
「任せて!」
頼もしいレイバーグの返事を聞き、俺はようやく少し落ち着いた。
「それから他のみんなっ」
ギリアム達にも素早く命じた。
「俺達二人で、あのユメって子の隙をつくる。俺が合図したら、トドメを頼むぞ。エルザは魔法発動の待機、ギリアム達はエルザの攻撃が当たった直後に、かかれ」
そこで俺は、特に不安げなエルザを見る。
「当たり前だけど、間違っても狙いを外して、攻撃魔法をマヤ様に当てるなよっ。後で死ぬからな! 絶対殺されるからなっ」
「え、えぇええええっ」
「わかりました!」
エルザの怯えたような声と、やけに張り切ったローズの声が同時である。不安はあるが、もう時間がない。




