対の魔剣ダークスターVSマヤ様のジャンプ斬り
「対の魔剣、ダークスターのエジキになりなさいっ」
「わたたっ」
思わず妙な声が洩れたが、反射的に手が出て、一応俺は相手の剣を受けた。
し、しかしっ。
受けた途端に、相手のスカートがふわりと翻る。
ユメはそのまま身体をひねって、今度は左手の剣を思いっきりこっちの脇腹に繰り出してきやがった!
に、二刀流の奴なんて初めて戦ったけど、嫌すぎるっ。
なにこの、イカサマ剣技!
泡を食った俺は、それでも飛びすさって避けた。背筋が寒くなり風切り音がして、今まで俺のいた場所を左手の剣が薙ぐ。
や、やべぇ……あと半秒くらい跳ぶのが遅かったら、身体が泣き別れだった。
「……ふーん、いちおー避けたんだ?」
ユメはなんだかやたら嬉しそうに俺を見る。こいつも、戦いで血湧き肉躍るタイプかっ。そんなんばっかりだな、俺がやり合うのっ。
「戦士将っ」
「戦士将様あっ」
やっと騒ぎを聞きつけたのか、兵舎の方からどやどやと味方が走ってきた。「あにぎぃいいっ」というボンゴの喚き声も聞こえたが、俺は慌てて手を挙げた。
「いい、こっちへ来るな! 多分この子、見た目で判断すると、痛い目を見るぞっ」
つか、砦の横のクレーターがいい証拠だっ。
「見た目でわからないのは、おまえも同じじゃない? 階級が戦士しょー? それってえらい奴なの?」
ユメは目を細めて言う。
「ほけっとしてくるくせに、見た目より強いのね」
「いや、見た目は関係ないだろっ」
人の突っ込みを無視して、ユメは可愛い舌でぺろっと上唇をナメた。邪神とはいえ、神様の一種なくせに、なんと人間臭い子だっ。
「ユメの力で一撃で殺しちゃったらおもしろくないから、少しためしてあげるぅう」
「いや、どっちもご免つか、うわあっ」
人の話を聞けよ!
ぶわっと間合いを詰められ、頭上から漆黒の剣が襲いかかる。冷や汗まじりで避けた途端、しかし即座にもう片方の剣があらぬ場所から攻撃してくるのだ。
「嫌な剣技だな、くそっ」
二振りの剣をかいくぐるようにして、俺はユメの懐に飛び込む。
しかし――。
「え、消えたっ」
「はぁい、後ろでしたぁ」
ぞっとした。
背後から声がした途端、即座に思った。「あ、俺死んだっ」てな。どうやらユメは、俺が思う以上にとんでもないスピードを持つ子だったらしい。
しかし……むしろ、この殺気のお陰で、俺の例の力が久しぶりでまた出てくれたっ。もちろん、同時に死にものぐるいでその場から跳んで逃げたさっ。
振り向くと、ユメはなぜか元の場所から動いてなかった。
いや、それはこの必殺モードに入ったら普通なんだけど、この子、ちゃんと視線が俺を追ってるんだっ。
つまり、銅像みたいに固まってない! 超スピード状態なのに。
二振りの魔剣を両手にひっ下げたまま、小さな唇を吊り上げてニイッと微笑んだ。まさに死の女神のように。
ここでまたぞっとして、お陰でせっかく発動した力が引っ込んでしまったぞ! 妙に間延びして響く音が普通に戻るから、それでわかるのだな。
「ふぅーん、それが切り札なの?」
ぎらぎら光る瞳で、冷たく言う。
「うふふっ。でも今の感じだと、いつもいつも都合よく発動するわけじゃない?」
お、お見通しかよっ。嫌過ぎる!
なんでこいつ、こんな鋭いんだ……やっぱり、邪神とはいえ、身分的には神様ってことか。
つか、神様と戦って勝てるわけないだろっ。
俺が冷や汗で「どうやってこの状況で上手く立ち回り、この子を退かせるかっ」ということを考えていたまさにその時――
この瞬間、俺が一番聞きたくない声がしたっ。
つまり、マヤ様の雄叫びである。
それはほんっとうに、雄叫びと言ってもいいような絶叫調で、しかも歓喜に溢れた叫び声であり、音として無理に再現すると「いやぁああああああああっ」みたいな声だったように思う。
焦って上を見上げれば、最上階の窓をぶち割り、マヤ様が豪快に空中へ躍り出ていた。その背後には、レイバーグとミュウとエルザとギリアムが、慌てた顔で虚空に手を伸ばしている。「あ、止めきれなかったのな」というのが、一目瞭然である。
あと、関係ないけど、俺はタイツ越しに下着まで見ちまった。今日は黒らしい、とかすかさず考える自分が嫌だ。
「だ、だれっ」
さすがの邪神ユメも驚いたのか、身体を覆っていた真っ黒なオーラが、今は引っ込んでしまっている。
その頭上へ――満を持してマヤ様が斬りつけてきた。
高さ四階分からの、ジャンピング斬りである。相変わらず、ゲームキャラみたいな人だっ。




