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俺達ゃ魔族!

「まあ、離間の策は置いても――」

 助け船を出すつもりなのか、ギリアムが口を挟む。


「敵の事情は事情として、太古の昔に大陸全土で暴れた邪神とやらが、今になって舞い戻って復権を狙っても困ります。理不尽な理由で攻められているのは、我々の方ですからな。ここは全面的に叩くべきでしょう」


 おぉ、そうだそうだ! みたいな声が、たちまち部屋中に満ちる。

 俺は反射的に顔をしかめ、ぐるっと仲間を見回した。

「いや、その意見は意見として聞くけど、なんかみんな、大事なことを忘れてないか?」

 俺の問いに、全員が首を傾げてくれた。

 

「……もしかして、今回はたまたま攻められる側になってて、みんな重要なことをころりと無かったことにしてるな? 言っとくけどなあ、マヤ様は魔王だぞ?」


 ここではっきり言っておく必要を感じて、皆を見渡した。


「そして魔王であるマヤ様は、この大陸はおろか、存在する限りの全世界を手中に収める気なんだ。言っちゃなんだが、それって攻められる方からすりゃ、むちゃくちゃ理不尽な話だろ? 現在の敵をどう倒すか話し合うのはいいとして、敵がいくさを始めたことを非難する資格なんか、俺達にないんだって。なにせ、俺達は別に攻められなくても、遅かれ早かれ、今後は邪魔者をかたっぱしから片付けるつもりでいたんだから」



 顔を見合わせて押し黙る全員に、俺はきっぱりはっきり言っておく。


「だから、いい子ちゃんぶるのはよそうってことさ。この戦に限って言うなら確かに被害者だけど、その意味じゃ、俺達にだって正義があるとは言えない。今回のことで正義がどうのを持ち出す資格があるとしたら、理不尽な仕打ちに腹を立てて裏切った、アランくらいだろ? 俺が戦ってるのは、マヤ様の世界制覇の野望に従う覚悟をしてるからであって、別に正義感のためじゃないからな。そこは、はっきり言っておく」


「……つまり、ナオヤもまた、正義のために戦っているわけじゃない?」

 ちゃっかり対面のソファーに座っているレイバーグが、おそるおそるといった様子で訊く。まあ、勇者としては、その辺は重要なんだろうな。

 しかし……勇者娘をがっかりさせて悪いけど、俺はちゃんと公言しておくことにした。


「違うね、俺は全然正義のために戦ってない。それを問題にするなら、俺なんて肉の盾にされてたわけだから、むしろマヤ様に反旗をひるがえせって話になるだろ? だけど俺、そんな気が全然ないどころか、今はマヤ様の世界制覇の手助けしようとしてるからな。正義なんかあってたまるか」


 そこで俺は声を大にして主張する。

「忘れるなよ、みんな。俺達は魔王の下にいる魔族なんだよ! 魔王の手足となって働くのが、俺達の役目だ。何度でもきっぱり言い切るが、決して良いことをしようとしてるんじゃないんだ。正義の側じゃない、ないんだ! だから、こんな時だけ被害者ぶるのはやめろって」

 

 勢いよく述べたのはいいけど、レイバーグが腕組して考え込み始めたので、俺はちょっと焦った。

 いや、ここで「正義の側じゃない? むむむ……それは駄目じゃないか」とかこいつに心変わりされるとたまらん。


 だいたい、俺だって口ばっかりで、本心は甘っちょろいことしか考えてないからな。

 というわけで、すぐになだめるように続けた。


「まあしかし……そうは言いつつも、なるべくなら穏便に、しかも死者の少ないようにやっていく手は――」





 ……と、人がせっかく、際どい話をよいお話に昇華しようとした瞬間、ドバンッと身も蓋もない勢いでドアが蹴り開けられ、蝶番ちょうつがいごと鍵が吹き飛んだ。


「おわっ」

「きゃっ」

「わ、びっくりした!」


 俺とエルザとネージュが、度肝を抜かれて声を上げる。

 いや、おおむねミュウ以外の全員がそうだったけど。さっと注目を集めた戸口には、薄絹のガウンのみを着込んだマヤ様が立っていて、ちょうど足を下ろしたところだった。


 お、惜しい、そっち向くのがもう少し早ければっ。


 ――じゃなくてっ。いつもながら、貴女はいちいちドアを蹴飛ばさないと開けられないのかとー。あと、いつ起きたんだよっ。


「ナオヤの、その言やよし!!」


 俺の考えなど無視して、マヤ様が叫ぶ。

 すげーでっかい声で、これでまたみんな飛び上がりそうになっていた。ただでさえ、地声がでかいのにー。


編集様を交えて上条衿様と打ち合わせした時、上条様がマヤ様のイラスト色紙を描いてきてくださいました。リンクはしませんが、興味ある方は、Twitterで上条様がアップされているので、探してみてくださいね。マヤ様、美しいです。上条様に大感謝です!

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