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ナオヤはえっちだから


 おまけに、ちっとも申し訳なさそうじゃないし。同じくそう思ったのか、既に合流していたヨルンが、大声で野次を飛ばしやがった。


「いつのまにか制服着替えて、何事もなかったような済まし顔してんじゃねーぞおっ。さっきのズタボロなエロエロ制服のままで、もう少しすまなそうな顔しろってんだよお!」


 途端に、キッとまなじりを吊り上げ、ローズが窓際に立つヨルンを振り向く。


「これでも、あやまっているではありませんか!」

「だから、全然申し訳なさそうに見えないっつってんだっ」

「貴方にそんなことを言われる筋合いは――」


「ストーーーーップ!」


 俺はうんざりして、途中で二人を止めた。

 やかましいというのもあるが……皆の表情を見た感じじゃ、おおむねヨルンに賛成したそうなのだな。


 まあ実は、俺もどっちかというとヨルン寄りだけど。

 つまり、このまま言い争いを続けたら、ローズはみんなからボロボロに言われて、再起不可能になりそうだ。

 ただでさえ、プライド高そうだし。


 一応、不満そうにしつつも、ローズとヨルンが黙ってくれたので、俺はすかさずローズに訊いた……できるだけ穏やかに。




「で、遅まきながら尋ねるけど、どうしてまた命令無視したわけ? 下手すると殺される――前に貞操の危機だったんだぞ? 笑えない状況に陥っちまってたんだ」

「……そ、それはそうですが、左右の山肌を見れば、なんとかよじ登れると思ったのです。実際、戦士将も前に山をよじ登ってこの砦に侵入したと聞きますし」

「俺が前に成功したのは、一人じゃなかったからだよ」

 誤解のないよう、俺はきっぱりと言った。

「みんなの協力があったからだろ。あの時に一人で突っ込んだら、俺だって失敗して殺されてたさ」


「ですがっ」

「あのなあ!」


 ローズの言い訳を途中で遮り、俺はわざと大声を出す。

 あまりそういう言い方したくないが、このまま放置すると、おそらく遠からず本人が死ぬからな。

「確かに俺は人に説教できる経歴じゃないけど、この際だからはっきり言っておくぞ。ローズは今回、失敗したんだ。それも、誰が見ても大失敗だ。そういう時は、ひとまず自分のわがままは置いて、素直に反省した方がいい。さもないと、次は命まで落とすぞ……しかも、仲間も道連れでさ」

 珍しく俺がきっつい口調で言ったせいか、みんな静まりかえってしまった。


 ただ、ギリアムだけは大きく何度も頷き、ローズにとんがった声を叩き付けた。

「ナオヤ様の仰る通りだ。失敗した上に、言い訳を並べるのは、戦士として恥ずべきことだぞっ」

 これで、さすがのローズもしゅんとなってしまい、今度は割と真面目に深々と頭を下げた。


「……確かに聞き苦しい言い訳でした。この度はご迷惑をおかけしました」


「わかればいいけど……ていうか、下手するとマヤ様に目を付けられて、あっさり首が飛んだりするから、気をつけてくれ。マジで頼むよ、俺が止めるにしたって、限界があるんだから」


 一転して、俺は懇願口調で眉根を寄せる。

 実はこっちが本音なのだな。


「正直な話、せっかく縁があって知り合ったわけだから、ローズの首が胴体と泣き別れするトコとか、身体が縦割りになって内蔵ぶちまけたトコとか、見たくないんだよ、わかる?」

「……すみません」

 もう一度低頭してくれたので、俺はもうこの件でこれ以上追求するのはやめた。ローズがどこまで納得してるのかわからないけど……これで身に染みてくれたらいいんだが。





「さて、話は変わって、現在の状況だ」


 気分を変えて、俺はレージの話と、それに伴うマヤ様の方針……まあ、あのシンプルな「向かってくる奴は全員敵っみたいなお考えが方針と言うならだが――。

 とにかくマヤ様のそのお考えを含め、一切合切、打ち明けた。

 ……ところがこいつら、おおむね全員、マヤ様寄りでやんの。


「おぉ、さすがは魔王陛下だな。そりゃ、向かってくる奴らは全員敵じゃん」


 偉そうに窓際の壁にもたれたヨルンがまず唾を飛ばすと、エルザが「そうよねぇ。後腐れなく、サクッと全員倒しちゃうのがいいんじゃない?」と後を引き取り、歴戦のネージュも「ま、それが戦の基本よねぇ」とうんうん頷く。

 ……こいつら、殺伐としすぎ! さすがは魔王率いる魔界の住人だ。

 いつもは慎重派のギリアムまで、「魔界としては、こうなれば徹底抗戦しかないでしょうね」などと言うじゃないか。


「いや、あのね。講和の道を探れとまでは言わんけど、少しは敵に離間の策かけて、有力な戦士を抜いちゃおうとか思わない? 向こうに寝返ったばかりのアランはともかく、サクラなんか、状況次第でこっちにつくと思うんだけど」


「それって……本当に戦況を有利にするため?」 

 これまで内輪もめに加わらなかったレイバーグが、じっとりとした目つきで言ってくれた。


「ナオヤがサクラって子を気に入ったからじゃないの」


「そうなんですか!?」

 ぎょっとしたように、隣に座ったミュウが俺を見つめたりしてな。

「ナオヤはえっちだものねぇ」

 ……で、エルザがトドメを刺してくれたよ。


「それは関係ないだろうがあっ」


 思わず熱く言い返してしまった。 


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