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マヤ様のブレない方針

 なんだか、妙なことになってしまった……というのが、正直な俺の気持ちである。


 まず――俺達、魔族軍が事前に得た敵に関する情報は、おおよそ以下のようなものだったはずだ。






 ○敵はホムンクルスを創造して兵士としているらしく、なおかつ、降伏した兵士や金で雇える傭兵なども、どんどん味方に招き入れている。

 

 ○敵の首領は、当初の情報では、二千年前にこのクレアル大陸に栄えていたロクストン帝国の全土を席巻し、滅亡寸前まで追いやった邪神だそうな。ヴァレンティーヌという名の暗黒の女神らしい。今は、ユメと名乗っているそうだが。


○ただ、その邪神は問題の二千年前に、ブレイブハートと呼ばれる、百人の勇者によって倒されてしまった――かに見えた。


○ところが、実は滅びたわけではなく、どうも邪神とその関係者は軒並み、俺が元いた世界の日本に逃れていて、おまけにブレイブハートの一人であるサクラという女までが、日本人として転生していたそうな。


○そしてどうやらその日本で、邪神ユメとダークピラーと名乗るユメの関係者、そして元ブレイブハートのユメが結託し、元の世界へ戻るべく、日本から転移しようとした。

(ここが特にややこしい。なんで邪神の敵だってブレイブハートが、敵の邪神側にいるのかと)


○しかし……元の大陸に戻ることには成功したが、あいにくそこは、ユメが破壊活動を行っていた時代より、二千年も過ぎた世界(俺達の現代)だったと。


○はた迷惑なことに、そこで邪神ユメとその軍団は、今更のようにこの世界を支配下に収めるため、全世界に戦いを挑み始めた。


○なお、邪神ユメが率いる軍団は、レージ軍と名乗っているのだが……そのレージ軍には、邪神ユメをも従わせる、影の支配者的な奴がいて、そいつがユメと共に軍団を動かしているようだ。



 

 ……とまあ、これまでにわかった断片的情報を繋げると、そういうことになる。

 問題は、その影のボス的な、レージである。


 こいつはほぼ人前に出ることが皆無らしく、当初、本人に関する情報がまっったくなくて、俺自身は「きっと雲を突くよう大男で、邪神を従わせるほどの剛の者に違いない」と思っていた。


 しかし……今、突発的な作戦で砦の最上階に突入して出会ったレージ本人は、ただの青年にしか見えず、しかも出自は俺と同じ日本人だという。

 めんどくさいことになった、というのが俺の偽らざる気持ちだった。





          


「正直、対応に困るよなあ」


 俺は椅子に座ったレージを見てため息をついた。

 ちなみに今は、砦の指揮官であるレージを押さえてしまったので、彼に要請して(早い話が、脅して)ホムンクルスの部隊の攻撃は停止してもらい、しかもそんなことをやっているうちに、当初から俺が予定していた「待機させた部隊の襲撃時刻」がきたのだな。


 当然、そのままうちの部隊がこの砦に押し寄せ、もはや無事に占拠してしまっている。

 他へ置いてきた本隊へも、こちらへ合流するように使いを出したし、結果から言えば、万々歳なんだが――。


「何を対応に困ることがあるのか?」


 皆を下げた中で、唯一残っていたマヤ様が、俺をしんねりと見た。

「敵の指揮官クラスが砦に残っていて、マヤとナオヤがそいつを押さえたわけだ。後は、こ奴の首を刎ねて、次に邪神ユメを見つけて首を刎ねる……これで万事、解決だろうっ」

「いや、またそんな簡単に――」


「えええっ」


 俺の声を遮り、椅子に縛られたレージが叫んだ。

 人の良さそうな大学生の風の顔立ちの奴なんだが、この時ばかりは飛び出しそうな目でマヤ様を見ていた。


「そこの……キ、キツそうな美貌の君っ。ユメを殺す気なのかっ」

「誰がキツそうだとっ!?」


 腰に両手を当てたマヤ様は顎を上げてレージを見下ろし、きっぱりはっきり言い切ってくれた。


「ユメどころか、おまえも外のポンコツ(ホムンクルスか?)も、その他のダークピラーとやらの関係者も、全部まとめてそっ首を刎ねるつもりだ!」


 腰に両手を当てたマヤ様は、きっぱりはっきり言い切ってくれた。

 八つ当たり気味なのか、瞳は未だに真っ赤である。


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