お馴染みの展開
こ、これはどうあっても、言うしかないようだな。
俺は、ホムンクルス兵士の、黒い顔と妙に光る目を見て、腹を括った。とにかく、前に地下道で同じく訊かれたことがあるから――試してみるか。
「合い言葉を――」
「わかってる!」
また催促しやがったホムンクルスを制し、俺は思いきって口にした。
「合い言葉は、リベレーターを追い出せ! だ」
途端に、あの時にいなかったレイバーグが、救いがたい能ナシを見るような目で、俺を見てくれた。
「なんだい、それ。もうっ、しっかりしてよ、ナオヤ!」
「いや、俺も違うと思うけど、前はこれで通れたんだよっ」
我ながら馬鹿みたいに思えたので、小声で反論した。
だいたいおまえ、素に戻ってんじゃないっ。これだから、美人はようっ。
「それに見ろ、実際にこいつら、反論しないやん」
固まったまま動かない兵士を指差そう――としたところで、いきなりそいつが無造作に剣を抜いた。
「敵を――倒す!」
「あ、甘かったあっ」
近かったので、避ける時に冷や汗かいた。あやうく、指差した手ごと持っていかれるところだ。しかしさすがに俺も、ボサッと立ったまま殺られるほど弱くない。だいたい、失敗するだろうと最初から思ってたしな。
「くそ、結局いつもの強行突破かよ!」
即座に俺も抜刀し、そいつの第二撃を刀で逸らして避ける。攻撃が逸れた隙に、返す刀で思い切って首を刎ねた。
気色悪いことに、そいつはそのまま黒い霧のようになってその場で散ってしまった。
その瞬間、後ろでギリアムが絶叫した。
「ナオヤ様っ。背後を!」
「わ、わかってるっ――て、うわっ」
振り向いた俺は、無言で立って抜剣したホムンクルス兵士共の群れを見て、ぞっとした。こういうのは、予想しててもびびるもんだなっ。
焦って両開きの扉を動かそうとしたが、ピクリともしない。当然のように鍵がかかっていた。俺は早々に諦め、すぐにミュウを呼ぶ。
「ミュウ、頼むっ」
「お任せを!」
嬉しそうに前へ出て来たミュウを庇い、俺は続々とこちらに押し寄せて来たホムンクルス達に対峙する。
「み、みんな、油断するなよっ」
震え声で言うと、すかさずレイバーグが突っ込んでくれたね!
「そんなの、見ればわかるよ!」
なんだとー、生意気なボクっ娘がー……と思ったけど、さすがは勇者と讃えられる戦士である。ただ文句言うだけじゃなく、団子状態で接近してきた敵共へ、恐れも見せずに突っ込んで行く。
「ドラゴンバスター!!」
おお、久しぶりに出たっ。
相変わらず、とんでもない技だな! ゴオッという風の音がしたかと思うと、あっという間に数メートルも先にダッシュしている。
そして、残像を引いたレイバーグが刀を振り切った状態で静止すると、先頭から順にバラバラと横に二つ割りになって消えていくという……うわあ、いつもながら、身も蓋もない剣技だ。
ほれぼれする強さだが、いかんせん、敵は沼に沸いたボウフラ並に幾らでもいるのだった。たちまちレイバーグは囲まれ、一人で奮戦するハメになっている。
「こ、これはヤバいっ。ミュウ!」
振り向いたら、ちょうどミュウが扉を開けたところだった。
「すいませんっ、錠の解析に時間かかって――」
「いや……蹴飛ばして開けたら早かったんじゃ?」
「……あっ」
俺が指摘した途端、ミュウが真っ赤になった。そこには考えが及ばなかったらしい。
「い、いいよいいよっ。ここはちゃんとした錠前だし、考えによっては――わわっ」
レイバーグを突破してきた一人を斬り捨て、俺は慰める。
「考えようによっては、破壊しない方が鍵が掛けられてよかったかも。というわけで、みんな、急いで中へっ」
「もう、遅いじゃない!」
即座に文句をつけたネージュを始め、ギリアムやミュウも次々に入る。
「よぉし、あとはレイバーグっ」
「いま行くよっ」
最後にレイバーグがまた例の必殺技を放ち、血路を開いて中へ飛び込んで来た。タイミングを合わせて俺はすかさず扉を閉め、がっちりと鍵をかけてやった。
ふうっとため息をついた途端、もたれた扉がババンッと音を立てて振動した。
「な、なんだよっ」
慌てて振り向くと、今度は絶え間なくドンドンバンバン音がする。どうもホムンクルス連中は、扉が閉じたからといって、諦めたりはしないらしい。
「こ、この扉、どれだけ保ちますかね」
ギリアムが眉根を寄せたが、俺はきっぱりと言った。
「考えてる間に、四階まで突っ走った方が早いって! みんな、行くぞっ」
号令だけかけ、俺は率先して走り出す。
……しかし、ちょうどそこで、俺が目指す石段の上から、ホムンクルス共が束になって下りてくるところだった。
中にもいたのか、ちくしょう!




