レージ登場……か?
「私のデータベースを検索しても、該当する項目が――」
もう一度腰を振りながら、そんなことを言いかける。わざわざ二回もやらんでも……君がやると、かなり目に毒だから、やめてくれ。
「いやほら、あれはつまりね」
唖然とする俺に代わり、ネージュがミュウの耳元に囁く。
辛抱強く聞いてるうちに、ミュウの顔がどんどん真っ赤になるのが、また何とも。
ていうか、今のミュウの再現ポーズ、エロかったな……そんなこと考えてる場合じゃないけど。暗闇の中、俺は引っ立てられたローズが、一番外れの宿舎の中に連行されていくのを確認する。
ちょうど、遅れて走って行く傭兵が二人ほどいて、「ったく、五人も殺しくさって、無事で済むと思うなってんだよ」とか「この仕返しはたっぷりとせにゃ――」などと会話をしながら通り過ぎていく。
そうか……ローズの奴、見つかった際に五人も斬ったか……。
「くそっ。とにかく、まさか放置するわけにもいかないしなっ」
「まあ、本人の自己責任だけど、ギリアムさんが吐きそうな顔してるし、ミュウちゃんは真っ赤だし、何とかしないとねぇ」
ネージュが愉快そうに言う。
いや、ミュウが真っ赤なのはあんたのせいで、全然関係ないし。
「とにかく、こうなったら仕方ない」
しばらく考えた後、俺は結論を出した。
というか、考えなくたって、どうせ結論は同じだったんだけどな。
また遅れて傭兵がダッシュでローズが連れ込まれた宿舎に向かうのを見て、慌ててネージュを見た。こりゃ、下手すると時間ないっ。
「悪いがネージュ、急いで俺に透明化の魔法頼む」
「はいはい、まあそうなるわよね」
ネージュが苦笑して言う。
「でも悪いけど、今回はあたしもついていきますからね」
「いや――」
「お待ちください!」
絶望の淵に沈んでいたギリアムが、いきなり声を荒げた。
「まさか、あのような不始末をしでかした妹のために、ナオヤ様にご迷惑はかけられません。ここは、私が救出に向かいますっ」
「おいおい、そっちの方が迷惑だって」
俺はきっぱりはっきり言い切った。
「あんだけ人数いるのに、ギリアムだけでどうにかなるわけないだろっ。そしたら結局、ギリアムもローズも失うことになる。俺にとっては、そっちの方が困るよ!」
「し、しかし」
「待って!」
揉め始めた俺達に、ネージュが目配せする。
その意味はすぐにわかった……なぜかローズを連れ込んだおっさん連中が、大挙してまた戻ってきたのだ。相変わらず、ローズを引っ立てながら。
しかもだ……なぜかみんな、聞こえよがしにぶつくさボヤいているような。
「あのぉ……」
俺は、ミュウ達に目立たないように合図してから、また代表で訊いた。
もちろん、相手は例の気のいい、髭のおっちゃんである。
「皆さんで楽しむという話じゃなかったんで?」
「そのつもりだったのによぅ、どうやらレージ軍の総司令官が目を付けたらしくてなぁ。俺に先にやらせろときたっ」
『えぇぇーーーーーっ』
俺達は思わず声を合わせちまったね。
もしかして、最後に走ってきた男は、伝令だったのか。
レージ軍の総司令官といえば――おっそろしい邪神の女神を手足のように使う、雲をつくような大男だろっ……いや、後半は俺の想像だけど! そんなエグい男が、ローズの一番乗りに名乗り上げたのかっ。
正直、俺は最初より遥かにびびって、生唾を飲み下してしまった。
「つ、つまり……皆さん、その女をレージ様のところへ献上しに?」
「おお……しゃーねーだろ」
おっさんはいかにも嫌そうに言う。
「いくら怖い者知らずの俺達でも、邪神を支配下に置くような人は、敵に回したくねーよ。おまけに、雇い主だしなあ」
「いい加減にこの縄を解きなさいっ」
そこで、思い出したようにローズが喚いた。
赤い顔で俺達からあえて目を逸らしているところを見ると、本人もこのザマを恥じているようだ。
「さっさと殺せばいいでしょう!」
「うるせえよ、献上品があっ」
「きゃっ」
……うわ、手加減なしで、傭兵の一人に思いっきり殴られたぞ。
ローズの口から血飛沫上がるのが見えちまった。
「くっ」
小さく声を上げたギリアムが前へ出ようとしたのを、ネージュとレイバーグが必死で止めていた。それで正解だ。気持ちはわかるけど、頼むから今は暴発してくれるなよっ。
俺が必死で祈ったお陰か、渋い顔で文句を垂れ流しつつ、傭兵連中はダルそうに主塔の方へ歩いていく。
それを見送った後、俺は改めてネージュ達を見渡した。
「しょうがない……勝手に難易度が上がっちまったが、砦の主塔に突入する。もちろん、ネージュに透明化の魔法かけてもらってから」




