表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
192/317

自己主張の強いあの人

 


 俺の横へ馬を進めようと隙を窺っていたミュウが、そこで冷静な突っ込みを入れた。


「そもそも、かつて予定通りに進んだことがないですね」




 うわ……ミュウまでがそんなことをー。


「これは駄目だぜ、ナオヤ。ミュウまでギリアムさんの真似を始めたら、もうおしまいじゃね?」


 嬉しそうにヨルンが言いやがるしなっ。

「い、いえ、違いますっ」

 ミュウが慌ててフォローを入れた。

「私が言いたいのは、ナオヤ様を支える自分達がいつも不甲斐ないとっ」

 おそらく本気の言葉なんだろうけど、今更おせー。


 みんなもう、「うわ、もう絶望的なプランBだー。出たトコ勝負だあああ」と頭を抱えてるし。

「とにかくさ、次善の策があるわけだね?」

 真面目なレイバーグが急いで話を戻した。


 ……どうでもいいけど、おまえこのところ、胸にサラシみたいなの巻いてないだろ? 以前と違って、膨らみがかなりわかっちゃってるぞ。

 もはや、男装のコスプレした凜々しい女の子になってるしな。

 俺は鉄の意志で奴の胸から目を逸らし、きっぱりと言い放った。


「おう、任せてくれ。以前、あそこを占領した時に使った、素晴らしい手がある。その気になりゃ、今回だって有効さ……多分」


 言った途端、今度はヨルンとエルザが同時に言いやがった。


「ええ、またあの無茶作戦かよっ」

「またあんな思いするの、あたしは嫌ですからねっ」


「なら、この作戦が成功するように祈っててくれ」


 俺はぶすっと言い返した。









 まあみんなが何をどう言おうと、別に違う作戦を考えてくれるわけじゃないしな。結局は、俺の考えた方法で行くしかないんである。


 ただ、一つ大きな計算違いは、砦にいよいよ接近して予定していた地点に到達する直前、爆睡していたマヤ様が、珍しく起き出したことだ。


 都合の悪い時に限って寝覚めがいいんだよな、この方はっ。せっかく、寝てる間にこっそり行こうとしたのに。

 そして予想通り、着替えたマヤ様は、俺に向かって元気一杯に言ってくれたんである。


「当然ながら、マヤも同行するぞっ」


「えぇええええっ」

「なんだ、不満なのか!」


 俺が不用意に悲鳴を洩らすと、マヤ様はたちまち膨れっ面になり、また俺に飛びついてきてヘッドロックかけようとした……密かに身内だけで軍議中だったっていうのにさ。


「不満はないですないですっ、どうせ止められませんし! しかし、さすがにその格好はちょっと」

 俺は、夜目にも鮮やかなコルセット付きドレスとミニスカート、それに例によって黒いストッキング姿のマヤ様を見て目眩がした。

 衣装もアレだが、色がエナメルみたいにテカテカ光る真紅という……なんというロックな格好だ! どこをどう見ても、仕事募集中の食い詰め傭兵に見えんっ。


 俺は馬を降りてプチ軍議中だったみんなから離れ、マヤ様にコソコソ注意した。




「みんなで白旗掲げて、仕事欲しい傭兵を演じて行くわけですよ。その格好だと、どう間違っても傭兵に見えませんて」

「問題ないから、案ずるな。前に奴隷に化けたように、小汚いローブでも被ればよい」


 心配すんなっとばかりに、マヤ様は気安く俺の肩を叩く。


「……はあ」

 いや、悪いがすげー心配だし、不安だ。

 まあしかし、今のところはあの砦にブレイブハートとやらのサクラもいないし、例のアランもいないはずだ。最新の情報じゃ、奴らはまだあの北の城に籠もってるって話らしいしな。


 じゃあ、俺が気をつけていればいいか……て、なんか前もそういう妥協をした結果、見事に帝都の門で見つかった気がするが。

 俺は首を振って悪夢を振り払い、マヤ様と連れ立って皆の元へ戻った。





「マヤ様も同行する」


 静かな呻き声が、ネージュやギリアムを始めとする皆から洩れた。またマヤ様がむっとしないうちに、俺は慌てて声をかける。もう砦の近くまで来てんだし、ここで揉めてる暇はない。急がないと、夜が明けてしまう。

 どうせなら、暗い内に潜入したいからな。


「作戦決行するぞ。人員配置は俺が道中で決めてるから、それで行く。まず、エルザとヨルンは部隊と共に待機してくれ。予定時間が来て命令撤回の合図がなきゃ、無事に門を開く算段がついたってことだから、そのまま砦へ来てくれ」


 命じた途端、失礼なことにエルザが大げさな仕草で胸を撫で下ろした。……前回の砦攻略の悪夢が残ってるせいか、先行部隊を外れたのが嬉しいらしい。


 ヨルンは逆に、心配そうに「俺がいなくて大丈夫か?」などと吐かす。

 それはそれでむかつくセリフだな、おい。


「まあ、今回はおまえナシでなんとかする。あと、ボンゴっ」

 俺はヨルンをあしらい、弟分の獣人族を呼んだ。


「ここだよ、あにぎっ」

 遠慮して離れていたボンゴが、嬉しそうに手を振る……こいつも二等戦士になったんだから、みんなと一緒にいりゃいいのに。

「おまえも、ここで待機組だ。奴隷兵士が間違っても騒がないように、睨みを利かせてくれな?」

「う、うんうんっ。あにぎこそ、気をつけてっ」


 ボンゴがちっこい目を細めて嬉しそうに笑う。エルザとヨルンだけを残すのは危ないが、他に二等戦士が皆無ってわけでもないし、あとはボンゴがいれば、奴隷兵士の押さえは万全だろう。


「よし、後はミュウとギリアム、それにネージュとレイバーグが、俺達に同行する先行組な。傭兵志願を偽装するため、他に奴隷兵士を十名ほど同行させる。俺達は彼らの中に紛れる形だ」


 命令を出し終えてほっとした途端、忘れていたローズがいきなり手を挙げた。


「お待ちをっ。戦士将、私の配置は!」


 ……もう声がいきなり尖っている。


 また勝ち気な女の相手かっ。

 俺の周囲、こんなんばっかりだな、しかし。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ