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策が外れたら、プランB

 マヤ様は決断すると常にやることが速い。


 翌朝には、俺達は九千の軍勢を率いて、国境線を目指していた。

 ただし、近隣の街や村に近付いて触れを出す時は、「北部の国境付近にある敵の拠点を攻める」なんて大々的に宣伝している。


 敵が間諜なんか使っているかどうかわからんが、もしそういう戦法を採っているなら嫌でも耳に入るくらい、熱心に広めた。




 

 もちろん、軍勢が北の国境を攻めるなんてのは、大嘘である。

 マヤ様に進言した通り、俺達の本命は南の砦であり、そこに籠もるレージと太古の女神だ。


 ただ、情報を集めた限りじゃ、敵の盟主ともいうべきそいつらがいる割には、そこの守備兵力は大したことないのだな。

 俺が放った間諜はことごとく、「兵力の推定は五百程度。しかもその大半は傭兵であり、雇われ兵士です」という報告をしてくれた。


 万一、予想以上の兵力が詰めてたら、計画変更も有り得たのだが……どうやら変更する理由はない。そこで俺は当初の予定通り、この策を強行することに決めた。


 まず策の第一段階として、その夜――。

 俺は主立ったメンバーと、特に選んだ八百の兵士に声をかけ、夜営地をそっと離れた。


 つまり、本隊を置き去りにして、単独行動をとったというわけ。







「……どういう計画かな?」


 人目を忍ぶように進軍する途中、レイバーグが俺に尋ねた。

 今宵のマヤ様は移動式のでっかい籠みたいなのに乗ったまま爆睡中なので、相談するよい機会だと思ったらしい。


 これまではずっとマヤ様が俺のそばにいたんで、話す機会があんまりなかったのだな。

 それは他のみんなも同じで、ギリアムやミュウを筆頭に、みんながさりげなく俺達の周りに集まってきた。


 ……いや、新入りのローズは俺なんか見向きもせずに、元の場所から動かないけどな。

 まあ、美人に蔑まれるのは元の世界で慣れているんで、腹も立たんさ、けっ。


「ナオヤ?」

 俺が答えないもんだから、レイバーグが眉をひそめて訊き返す。


「あ、ごめん。ええと、策だな? 俺が戻ってきた夜、ちょっと話し合っただろ? ネージュの透明化の魔法を工夫して使えないかって話をさ。アレを本当に実行しようかと思ってる。ネージュの実力なら、ギリギリ俺達数名だけなら、透明化を実行できるし」


「でも、魔王城奪還の時にも言ったけど……あたし達全員に魔法かけると、継続時間はせいぜい数分よ」

 当のネージュが、首を傾げて俺を見る。

「うん。だから砦の門まで接近するのに、多少の工夫をする。手順はこうだ」


 俺はみんなに説明してやった。

 今回俺が目をつけたのは、このレージ軍とやらの募兵方法だ。

 どうもあいつら、魔法生物のホムンクルス兵士以外は、全て傭兵や降伏した兵士を使っているんだな。


 ギリアムなどに訊くと、敵の兵士をひっ捕まえて審問すると、奴らは降伏した兵士は基本的に無条件で受け入れているらしい。それプラス、自分を売り込みに来た食い詰め傭兵なども、気前よく雇い入れている。


 だから、ある距離まで砦まで接近したら、まだ面が割れていない兵士をその「レージ軍への志願兵」として砦まで先行させる。

 その中に、俺を始めとして仲間の数名くらいがさりげなく偽の志願兵に紛れ込み、肝心なところで透明化の魔法を使い、砦の中に上手く潜り込む。

(もし、志願兵全員を中へ入れてくれるなら、なおいい。潜入が一層楽になる)


 その後は打ち合わせた時間が来たら、待機させた八百の軍勢を砦へと急行させ、先に潜入した俺達がタイミングを合わせて砦の門を開くと――こういう計画である。





「それなら、たかだか八百じゃなくて、本隊ごと率いてくればよかったじゃない!」


 熱心に聞いていたエルザが、即座に突っ込んでくれた。

「だって、策のかなめは潜入要員が砦の門を開けることでしょ? どのみち制圧する人数はいるんだから」


「いや……そんな大軍が接近したら、さすがに向こうもすぐに気付くし、籠城的なことをやらかすだろっ。のんびりと傭兵や逃亡兵なんか受け入れてくれるもんかって」 


 俺はむっとして唾を飛ばした。

 こうして、わざと夜にこっそり出て来てる意味がわからんのかと言いたい。

「夜にこっそり近くまで接近してバレない程度で、しかもあの砦の兵士を含めて制圧できるギリギリの人数ってことで、この数で妥協してんだよ。本隊がわざとらしく、北部を攻めるぞ~と宣伝しながら動いてたのも、全部敵の目を逸らすためだ」


「なるほど……」


 黙って聞いていたギリアムが、ようやく頷いてくれた。





「ただ、そうすると今こうして夜に行軍している我々が察知されると、この策は破れるわけですね?」

 出たよ、いつもの悲観論がー。

 俺だって自信ないってのにさ。

「そうだけど、仮に向こうがこの部隊に気付いても、八百くらいなら大規模偵察だとか勘違いしてくれないかね? 普通なら、攻め込むような人数じゃないし」

 俺は投げやりに、希望的観測を述べた。

「勘違いしてくれず、見つけて即、籠城に入られたら……その時は、禁断のプランBだな」

「プランBねぇ? それ聞くと、魔王城突入の時の嫌な思い出が蘇るわぁ、あたし」


 すかさず、今度はネージュが突っ込む。


「あの時も、ぜんっぜんっ予定通りに進まなかったわねぇ」


 い、いちいち思い出させるなよっ。



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