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世界征服しますが、なにか!

「もちろん、そういうことになるな」

 俺はどう説得するか考えながら答える。


「だいたい、マヤ様は直臣なんかほとんど取らないから、直接仕えてるヤツ自体が滅多にいないしさ」


 滅多にどころか、実は本当の意味での直臣は、未だに俺一人かもしれん。

 それ以前に、マヤ様の御代になってから貴族どもの粛清を思いっきり強行したお陰で、もう指揮官クラスの身分もガクッと減ってるな。


 まともな能力があって、きちんと戦場で兵士を統率して戦っている人となると、カシムとあと二~三人くらいじゃないかね。

 その彼らだって、実はマヤ様の直臣じゃなくて、後ろでエラそうにふんぞり返ってるだけの、魔神将とかの臣下のはずだからな。

(カシムの場合、上官はこのレイバーグが帝都潜入時点で肉片にしちまったから、身分が宙に浮いてるけどな!)


「辛うじて残った雲の上の人だって、そろそろマヤ様が大ナタ振るって、整理しちゃう感じだし……まあ、これも粛清と同じようなもんだけど」


 などと俺が説明したのは、一つには「文句もあるだろうけど、形としてしばらく俺の下で我慢してくれ」とこう、やわらかーく説得したつもりだった。あと、「おまえの実力なら、どうせそのうち俺を抜くんじゃね?」という、慰め半分と。



 しかし、レイバーグは説明の途中で呆れたようにため息つきやがった。

「いや……どのみち、マヤ殿の臣下になる気は全くない。そうじゃなくてさ」

 と途中で横向いて俺の顔を呆れたように眺め、

「君は女心のわからない人だな」

 的確な寸評だけに、むかつくなっ。

「い、今更そんなこと言うなよ」

 少なからずむっとして言い返してしまう。


「だいたいおまえ、ずっと男で通して来ただろうに」

「別に好きでそうしてたわけじゃないもの。そうしないと、やたらと嫌な人が寄ってくるから、やむなくそうしただけ」

「まあ、おまえがちゃんと女の子の格好して、ドレスとか着るとヤバそうだものなあ。あっという間に誘拐されそうな気がする」

 レイバーグを横目で見つつ、俺はしみじみという。

 こいつはホント、エルザとは違ったタイプの美人だからな。多分、ミュウと同じで絵になる美少女ってヤツだ。


「そう? じゃあ、女の子に戻ってドレス姿になろうかな」

 レイバーグはなぜか小さい声で言った。

「えっ」

 思わず声を上げた俺から目を逸らし、レイバーグは早口で続ける。

「まあそれは置いて。それなら、こうしないか? 囚われの身となった、ルクレシオンの王子と王女の二人が開放された時点まで、ボクの返事を保留するということにさ。一応、それまではまた共闘でどうだい?」

「ああ、文句ないな、それで上等だ」

 俺はほっとして何度も頷いた。

 ようやく話が戻って嬉しい。


「それじゃ、まずあいつらについてわかってることを教えてくれ。誰が総指揮官で、どこから来たのかと」

「そんな長く話せなかったけど……でも、どうやらボクに降伏を迫った、あのユメとかいう女性が王に当たるらしい」


「へぇええええ、女帝か! なら、マヤ様と同じだな」

「……ただ、あの女性はちょっと違うな……見かけは人間だけど、とても普通の人間だとは思えない」


「と言うと?」

「奇妙な術を使うんだよ」

 レイバーグは顔をしかめて言った。

「だいたい、率いてる軍勢……まあ、人造人間みたいなの? アレのうち何割かは、彼女が自分で創造したようだし」

「えぇえええっ」

 さすがに俺は呆れてレイバーグを見た。

「さすがにそれは、なんかの間違いだろ? あの真っ黒い兵士、数からして半端なかったぞ」


「いや、もちろん創造したものじゃない兵士もいるよ。ルクレシオンから寝返った兵士の部隊もあるし。ただ、画一的な外見なのは、みんな人造だね。アレの材料はそこらにあるものであって、特殊な何かじゃないんだ。ただ、創造時に人の血を少し使うだけで。実際にボクは見て――」


 言いかけたレイバーグがはっとした顔で話やめ、そして俺もすぐに緊張した。

 もちろん、どこかでドアが開く音がして、靴音が近付いてきたからだ。

 二人同時に振り向くと、遠くから見覚えのあるセーラー服の少女がやってきて、俺達の牢の前に立つ。

 立つというか、腰に両手を当てた仁王立ちだな……なんて偉そうな奴なんだ。


 黒いロングヘアでヘアバンドした少女で、例のサクラとかいうとんでもない戦士である。格好はセーラー服なのに、腰に赤い鞘の刀を差してたりして、違和感がすげー。




「……そっちは、随分と美形なのね」


 サクラは、まずレイバーグを見て、どうでもよさそうに首を傾げる。

「まあ、それはどうでもいいわ。あの子が捕まえた方はあの子が説得するでしょうから、わたしはあんたね」

 今度は俺の顔をじっと見る。


「あんた、なんで人間のくせにこの世界の魔界にいるわけ?」

「その前に、おまえは一体、どういう事情なんだよ?」


 俺はレイバーグを見習い、ふて腐れたように座ったまま、セーラー服少女を見つめる。


「あと、なんで誰彼構わず攻める? ルクレシオンと魔界の両方を攻めるって、そりゃこの世界全部を敵に回しているのと同じだぜ」


「それがなんか問題あるわけぇ?」

 いきなり反抗的な態度で即答しやがる。


「わたし達はこの世界全てを征服して新しい時代を作るんだから、そりゃ二正面作戦だってやるわよ」


 俺とレイバーグは思わず顔を見合わせたね。

 こんな堂々と世界征服とか公言するヤツ、マヤ様以外で初めて見たな。 



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