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パンチラで死ぬとこでした

 途中でミュウがついて来ようとしたが、無理に目で抑えて。いま迫る敵は敵で、簡単に片付きそうもない。

 ミュウが残っていれば、みんなを守ってくれるはずだ。


「危ないと思ったら、退却しろよおっ」


 最後にそう喚き、俺は一人で本陣を目指した。

 さすがに遠くに篝火が見えるし、そちらへ向かって馬を駆れば迷う心配はない。

 俺が離れた直後、聞いたことのない魔獣のような吠え声と喊声が聞こえ、残した軍勢と敵が激突したのがわかった。

 気にはなるが、今はネージュとギリアムに期待するしかないだろう。


「せ、せめて俺が一刻も早く戻って、本陣に危機を――」

 知らせる他ないっ、と言いかけたその時――。

 なぜかぞっとするような殺気を感じ、思わず背後を振り返ってしまう。すると、黒髪をなびかせた例の少女が数メートルほど後ろについてきていて、ぎょっとした。

「お、追ってきたのか!」


「当然っ。言ったでしょう、貴方はあたしの獲物と決めたわっ」


 言下に、なぜか鞍上ですっくりと立ち上がる少女である……嘘だろうと思ったが、本当に鞍上で危なげなく立っている。

 しかも、軽く腰を屈めた次の瞬間、夜空へ向かって大きくジャンプしやがった!






 あまりの光景に、俺はぽかんと上空を見上げる。


 輝く満月をバックに、セーラー服の女の子がくるくると身軽に回転した後、疾風のような勢いで下降してくる。

 狙いはもちろん俺だっ。遅ればせながら焦って手綱を引き、馬の進路を逸らそうとしたが、一瞬の差で間に合わなかった。

「もらったわっ」

 気付けば空中で抜刀をした少女が、間近で叫んでいた。


 ――殺られるっ!


 瞬時にそう感じた俺は、もはや馬上に固執せず、自分も鞍から跳んだ。

 暗闇で危うく怪我をしかけたが、なんとか足から着地してのける。念のため、着地した地点からさらに大きく後方へ跳び、間合いを開けた。


 いいさ、ならやってやるっ。

 相手が大勢ならともかく、今の俺がそうそう容易く負けるはずがない。いかにネガティブな俺といえども、さすがにその程度の自信はあるのだ。いや、正確には自信はあった、というべきか。


 なにせ、そんな薄っぺらい自信は、たちまちにして過去形になっちまったんで。


 俺が後ろへ跳んだのとほぼ同時に、もう彼女の姿がばっちり目の前にあった。ほとんど間を置かずに間合いに飛び込んできたらしい。

 こいつの長大な刀も俺と同じく魔法付与の武器らしく、これまた赤い輝きでくまなく刀身が覆われている。

 その赤き閃光が、速攻で俺に迫っていた!




「――覚悟おっ」

「おわあ!」


 正確に心臓目掛けて襲ってきたとんでもない突きを、俺は反射的に持ち上げた自分の刀で逸らす。

 きわどいところだったが何とか間に合い、雷撃みたいな突きを逸らすことに成功した。

 しかし、こいつは俺の想像以上らしい。


 会心の一撃を逸らした直後、俺はすかさず反撃に出ようとしたのに、向こうは体勢を崩すどころか、踏み込んだ右足を支点にしてあっさり体勢を入れ替え、次の瞬間には風のようにこっちの死角から斬りかかってきやがった。


 一年前の俺なら、もう絶対にこの時点でゲームオーバーだったね!

 俺はギリギリで横っ飛びに跳んで第二撃を避け、今度は自分が瞬時に体勢を入れ替える。

 お返しとばかり、真横から少女の脇腹に斬撃をぶち込んでやった。


「死んでも恨むなっ」


 それこそ横殴りの突風みたいな攻撃を仕掛け、一切の手加減をしなかった。

 手加減なんかしてた日にゃ、こっちが斬られて死ぬっ。


「甘いっ」

「と、跳んだ!?」


 俺の方こそ完全な死角を突いたはずなのに、この少女、こっちを見もせずにその場で飛び上がってかわしやがった! 


 普通、自分の剣撃を外した後で敵が消えたら、まず目で相手を確かめようとするものなのに、そんな素振りすら見せなかった。

 どれだけ戦い慣れしてんだ、こいつ。経験値高そうに見えないってのにっ。

 それでも、俺は向こうが着地した瞬間に襲いかかろうとしてたんだが……その子が空中で鮮やかに後方回転した時、うっかりスカートの中が見えてしまって気合いが削げ、そのまま踏みとどまってしまった。


 お陰で、華麗に着地した彼女に、すぐさま襲いかかられる始末である。





「くっ――」

 赤い軌道と残像だけしか見えない剣撃を、俺は自分の魔剣で受けて、激しく斬り結ぶ。 


 ちくしょう、女の子のパンツ見てて斬られたとか、情けなさ過ぎるからなっ。


 ここで踏ん張らないと。

「い、いかん、さっきのピンク色が目に焼き付いて――わあっ」

 危うく脳内回想に入りかけたせいで、今度は頭上を襲った剣撃に焦り、素早く横っ飛びにかわした。


 ぶんっという音とともに、赤い光が俺のすぐ脇を掠める。

 しかもこの子、俺の頭を割り損ねたと見るや、前傾姿勢のまま踏ん張り、振り下ろした刀を、今度は予備動作なしで豪快に横薙よこなぎにする。

 本気で、こっちの胴を輪切りにする勢いがあった。


 あんな長い刀、よく自在に操るな、しかしっ。その剣撃もかろうじて俺の刀が受け止め、俺達はそのまま何度も荒野を斬り結ぶ。


 どうでもいいが、さっきから防戦一方じゃないか、ちくしょう!


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