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エグい警報装置


「うわっ」


 と俺は思わず声を上げ、急いで駆け寄った。

 気味の悪い形の魔法陣の真ん中に、陛下が仰向けに倒れている。最後に見た時のマント姿、そのままで。

 ただし……心臓の少し下辺りに、ぶっすりと大剣――おそらく陛下自身の黒い大剣が刺さり、身体を地面に縫い止めていた。



「くそっ」

 俺は半泣きになり、ランタンを足下に置くと、慌てて剣を抜こうとした。

 しかし、そこでいきなり足下の身体が動き、ぎょっとした。

「う、嘘っ」

 100パーセント死んでると思ってたのに、まさか生きてる!?

 そ、そりゃ確かに、肉体も腐敗してないが……こんな状態で?


「あの……へ、陛下?」


 俺がそっと呼びかけると、また首が少し動いた。

「俺ですっ、ナオヤですよ!」

 這いつくばるようにして耳元で声を張り上げると、ようやく瞼が震え、僅かに開く。俺を見た途端、薄赤い瞳がぱっと開いた。


「ナオヤ……おまえか」


「はい、はいっ。俺です! 待っててください、こんな剣、すぐに――」

「ならぬっ」

 いきなり言われ、立ち上がろうとした俺は、「へ?」とまた屈み込んだ。

「ならぬとは、剣を抜くなと?」

「そう……これは罠なのだ、ナオヤ。剣を引き抜いた途端、あの女に知れることになるし、それに抜いた者はその場で即死する」

「……う」


 するとなにか、この魔法陣みたいなのは、一種の警報装置兼、処刑装置かい!? 

 なんて外道な仕掛けだ、しかし。

「ヤツの誤算は……」

 と陛下が微かな声でまた言った。

「予が未だに生きていることに尽きる。裏切り者の臣下に、リベレーターの気配を見つけたと言われてこの洞窟におびき寄せられ、背後から攻撃を受けたのは予の不覚だった。だが……そうそう簡単に死にはせぬ。ヤツはどうせ長くは保たないと思っていたようだがな! 予の生あるうちに、なんとしても……リベレーターの復活を阻止せねば」

 口ぶりからして、どうも陛下はクソッタレ臣下の大嘘でここへ誘い出され、おそらくあの女によって不意打ちを食らったらしい。となると、おそらく背中にも傷があるんだろうな……くそっ。

 俺が一人で歯軋りしていると、陛下は囁き声で尋ねた。


「予がここに封じられてから、どうなっているか?」


 今度は俺の顔が引きつる番である。

 穴があったら入りたいとは、まさにこのような時に使うのかもしれん。

 かといって、報告しないわけにはいかない。

 そこでなるべく順を追い、しかも簡単に説明していった。





「実は……そのリベレーターの女と仲間によって、魔界はかなり引っかき回されました」


 終始、静かな顔で聞いていた陛下だが、さすがに娘の誘拐――つまりマヤ様の誘拐の部分まで来ると、反射的に身を起こそうとした。

 剣に貫かれたままで。

「なんということだ! くっ」

「む、無茶しないでくださいっ」

 俺は慌てて陛下を押しとどめる。

 もちろん、文字通り平身低頭で謝罪した。


「あのお方を守りきることができず、このナオヤ……一生の不覚です。ですが、断罪はマヤ様を奪い返した時までお待ちくださいますよう……ひらにお願いしたく」


 冷や汗で頭を下げたが――陛下は俺を責めなかった。

 どっちかというと、怒鳴りつけてほしかったのに。

「いや……話を聞く限り、おまえは最善以上のことをしてくれたようだ。罪というなら、不甲斐ない予の方にこそあろう」

 青白い顔のまま、陛下は無念そうにしばし目を閉じる。

 しかし、すぐにまた目を開いた。

「してナオヤ、期日まで僅かだが、あの女を倒す勝算はあるか?」

「いえ……確たる勝算などはありませんが、この命を投げ出す覚悟で戦えば、あるいは――」

「それはならぬ!」

 エラくきっぱりと言われ、俺は目を瞬く。

「娘にとって、おまえは必要な男だろう……失えば、予は娘に合わせる顔がない」

 どういう顔をしていいのかわからないようなことを言われてしまい、俺は気まずい思いで陛下を刺し貫く大剣を見やる。


「……この剣、残された家族に褒美を取らせることを約束して、極悪な死刑囚とかに抜いてもらうのはどうです? でもって、察知してあの女が来たら、陛下と俺でタコ殴りにするとか?」


 これは名案! と息せき切って提案したが、首を振られた。

「今の予は、仮に剣を抜かれても、立つだけでもやっとの有様だ。むしろ、おまえの負担になろう。ただ――」

 マヤ様そっくりの切れ長の瞳が、ふいに真紅に染まった。


「用意を調えた上でなら、なんとかなるかもしれぬ。おまえも言うように、剣を抜くだけなら、手段はある。ナオヤ、ご苦労だが――今一度城に戻り、おまえの仲間を連れてきてはくれぬか?」


「ど、どういう策でしょうか?」

「説明する前に、まずはおまえの今の力量を見せてくれ。それによって、この策の正否が決まるだろうからな」

「わかりました……じゃあ、ステータス前面表示」

 もどかしい思いで、俺は自分のステータスを表示した。


「――! これは驚いたぞ」


 出た数値を見て、陛下はめったに見せないような驚き顔を見せてくれた。

「レベル37で、HP6230、MP3980……か。これなら、予ともよい勝負をしそうだ」

「んな馬鹿な」

 俺は苦笑したが、陛下は至って真剣な顔だった。


「よし、ならば話そう……あの女をあざむき、予とおまえでヤツを倒す方法を」


「それはぜひっ」



 期待感のあまり、俺はぐっと身を乗り出しちまった。


書籍化のことを、活動報告? に書いておきます。興味がある方は、そっちも見てくだると嬉しいです。

(今から書くです)

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