表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
137/317

懐かしの鬼の人

「あなた方もしかし、こりない人達ですね」


 俺は、額に手をやって首を振る。

「太平楽にも、これまで地位の上にあぐらをかいてたせいですか? 考え方が甘ちゃんすぎる」

「な、なにをっ」

 おっさんはめちゃくちゃいきり立って甲高い声で叫びやがった。

「貴様っ。奴隷上がりがわしになんという口をきくかあっ。わしを誰だと――」


「やかましい、死ねっ」


 立ち上がった俺が殺気だった目で睨むと、これがまた面白いほど静かになったね!

 お陰でちょっとだけ胸がすっとした。


「おまえの名前なんかどうでもいいんだし、いちいち名乗るな、ど阿呆っ。俺はなぁ、これからどうやってマヤ様を救い出そうか、それしか頭にないんだよっ。こんな時に、嬉しそうにしゃしゃり出てきて、しょうもないことがなり立てるなっ。却下に決まってんだろうが、クソが! そもそも、マヤ様がいないからって、待ってましたとばかりに来る、おまえらの神経がわからんっ。どうせ俺がここで追い返しても、またぞろ出てくるんだろうなあっ、たくっ!」


 叫ぶ内容とは裏腹に、どんどん頭の中が冴え渡り、ここでこいつらを返すと、ロクでもない結果になるのが容易に予想できてしまった。

 俺の邪魔をするのはもちろん、またしても反乱騒ぎとかやらかしそうだよな。

 となると、俺はともかく、戻って来た時のマヤ様の障害になる。


「――というわけで、マヤ様がお戻りになってから今回の件をご報告し、あんたらに改めて沙汰さたを下して頂く。それまでは、地下牢にぶち込んでおくことに決定だ」


「ま、待たぬかっ」

 後ろの方に隠れていたマトリョーショカ……じゃなくて、マトルカスか? とにかくそいつが、人垣の向こうから小さい声で抗議した。

「な、なにが『というわけで』なのだ」

「はあ? 聞こえんなぁ、おっさん!」

 俺はにべもなく言い捨てる。

「遠くからモゴモゴ言ってないで、もっと腹の底から声を出せよ。肉の盾の時、俺はいつもそう怒鳴られてたぞ……相手はあんたじゃないけど。――ボンゴ!」



「ほほーい、ここにいるよぅ、あにぎぃ!」

 やたらと嬉しそうにボンゴが立ち上がる。 

 こんな生き生きしたこいつを見るのは、初めてかもしれん。なんか興奮した巨大なクマみたいだな……いや、悪気はないけど。

 もしかしたら、軍議に参加できてはしゃいでるのかも。だとしたら、俺も嬉しいけど。

「おっさん連中の言い訳や愚痴を聞いてる暇はない。まとめてとっ捕まえるから、そいつらが逃げないように、ドアをふさげっ」

「うんうん、了解!」

「ふ、ふざけるなっ。わしらとて、無防備ではないぞっ。――入れっ」

 誰か見知らぬエラいさんがそう怒鳴った途端、今度は獣人というか、例の鬼みたいなツノのある下級兵士が、衛兵を押しのけてどっと入ってきた。

 全員で十名ほどもいるだろうか。

「でかしたぞっ」

 最初の老害おっさんが振り返ってそいつを褒め、俺を見て唇を歪めた。

「見よ、捕縛されるのは貴様達の方だ」


「お任せくだせえ、魔神将様。そもそもあいつは、俺と相棒が最初に召喚したヤツでして、てへへ」


 と嬉しそうに馬鹿でかい両刃斧……つまりバトルアックスを構えてのしのしと鬼兵士がくる。ドムのスカートみたいな腰巻きはしてるが、あとは全裸である。

 昨晩も一人見たような気がするから、こいつは片割れだろう。

 でも……あいつもそうだったが、こいつも最初見た時と違って、あんまり強そうに見えんな。時間経つうちに、なぜか縮みでもしたか?


 首を傾げて俺は前へ出た。

 つっても、見た感じだと、身長はやっぱり高いんだよなぁ。




「おらっ、何を不思議そうな顔してんだ、この餌があっ」


 気の早いことに、こいつはいきなりバトルアックスを思いっきり振り回しやがった。俺は顔をしかめて抜刀し、刀身を下方から一閃させて柄の部分をぶち斬る。

 お陰で、バトルアックスの刃部分だけクルクルすっぽ抜けて、天井に刺さっちまった。

 相手の技量がアレすぎるんで、避ける必要もなかったな。

 なんだ、実は全然弱かったのか、おまえ。


「まあ……身体の方を斬らなかったのは、一応味方だからだよ。感謝してほしいんだけどな」


 俺がしんねりと言うと、柄だけになったバトルアックスを見て、鬼その1(いや2かもしれんが)は巨眼をぱちくりさせた。

「……えっ?」

「えっ、じゃないだろっ」

 さすがにむかついた俺は怒鳴る。


「いいからどけっ!」


 怒鳴っといてあれだが、自分からヤツの眼前に躍り込み、足の甲をドカッと蹴りつけちまった。関節は普通、逆には曲がらないわけで、鬼タイプだろうと加減次第で、簡単に足が折れる。

 で、折れたこいつは、足を抱えてゴロゴロ転がり出した……サイレンみたいな悲鳴上げて。

 ちょっとだけ悪いと思ったけど、でもこいつの方は俺を斬り殺すつもりだったからな! 文句言われる筋合いないぞ。

 あと、泣き声が思いのほかやかましいので、頭を蹴飛ばして気絶させた。うるさいんだよ、馬鹿。

 なあみんな、俺は悪くないよな? と思って俺が見渡したところ――


 ……敵も味方も呆然と俺を見て、口を開けてました。


 唯一、ボンゴだけが入り口を巨体で塞ぎ、コトの経緯を嬉しそうに見つめている。俺は総立ちのギリアム達を見やり、そっと尋ねた。


「俺一人だと時間かかるから、みんな捕縛に協力してほしいんだけど?」


 ――あっという間に味方の全員がしゃきしゃき動き始めて、俺はまた驚いた。

 ていうか……なんでおまえまで、いそいそと衛兵から縄まで借りておっさんを縛ってんだよ、レイバーグ。


 まあ……その分、早く片付くからいいんだけどさ。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ