表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
124/317

追跡者

「や、ヤバいっ。急ごう!」


 俺はネージュ達にハッパをかけ、自分は受け取ったマントを真っ先にレイバーグにかけてやる。その間、マヤ様はなんと素手でこいつを拘束してした鎖を引き千切り、自由にしてやっていた。 落ちそうな彼(彼女?)を慌てて抱き留め、俺は小声で合図を出す。


「終わったぞ! ズラかろうっ」


 俺達が可能な限り急いで牢を出るのと、鍵が開く音がして、建て付け悪そうなドアがギギギィと開いていくのは、ほぼ同時くらいだったはずだ。

 ただ、問題の階上へ至るドアは、地下へ下りる階段を少し上がった先にある。

 だから、あとほんの少しは時間がある――はずだ。

 それがわかっているだけに、みんな必死で走っていた。




「急げ、急げっ」

 小声でみんなを急き立て、俺は仲間を元の地下通路へ押し込める。

 だから人数少なめに来た方がよかったのにっ――と後悔したが、追いつかない。最後の一人、マヤ様が中へ飛び込んだところで、脱出した牢屋の方角から「おおっ」という野太い声がした。

「に、逃げやがったのか!」

 慌てて走る音と叫び声も。

 うわ……しかもこっちへくるぞ、足音っ。

 おまえ普通、牢屋が空だったら、まずは上司とか上官に報告しに戻らないかぁ?

 なんでまっしぐらに走り出すよ!?


 不満たらたらで、俺はマヤ様の後に続いて地下通路へ半ば下りる。肩に担ぎ直したレイバーグはそう重くもないが、これだと動くに不自由だな。

 それでも何とか壁の窪みに足をかけ、仕上げに石のタイルを元に戻そうとしたところで――


 真っ赤な顔をした兵士がT字路をひょいと曲がり、こっちを見た。

 ……うわっ。まともに目が合っちゃいました!


「――! 貴様っ」


 当然ながら、俺の顔を見るなり、牢番は喚いたね。

 こうなったら仕方ない。俺は床は放置でそのまま通路に飛び降り、みんなにまた叫んだ。


「駄目だ、間に合わなかった。ズラかるぞぉーーっ」


 通路へ飛び降り、率先して駆け出す。

「はやっ。来たトコなのに、せわしいなぁ」

 ヨルンが不満を洩らしたが、用事が済んだのに残っててどうするよ!!

 もちろん、逃げるにしてもレイバーグを背負ったままだが、レベルアップとHPの増加は伊達じゃなかったね。こいつくらいのひょろっとした男なら、担いでたって余裕で走れる。


「待て待て、ナオヤ」

 軽々と追いついてきたマヤ様が呆れたように言った。

「衛兵が何の用事で下りて来たのか知らぬが、どうせなら、その場で倒せばよかったのではないか? それなら、まだしばらくは誤魔化せたかもしれない」


 う……そ、それは正論かもしれないな!

 しかし、やっぱりそうそう簡単に、「よし、ここはぶっ殺しておこう」とか、なかなか考えられんし。別に俺、人殺しが好きってわけじゃないわけで。

「ま、待って待って!」

 後ろの方でエルザが情けない声を上げ、俺は我に返った。

 振り返ると、マヤ様とミュウ以外は、いつの間にか遥か後方に置き去りにしていた。


「速すぎるよ、ナオヤ君。ちょっと待ってよ」

 ネージュもへたばってるな。

 俺はようやく走るのをやめ、普通に歩いた。まあ……今のところは追ってくる気配ないし。上手くすると、あの衛兵が遅まきながら上に報告に戻ったのかも。

 ようやく皆が追いついて、一息つくことができた。

 地下に上がった場所は、もうだいぶ後方である。

 ゼーハーゼーハーと、両膝に手をついて息を出し入れする軟弱者達に、俺は肩をすくめて言った。


「さすがに休憩するわけにもいかないし、ゆっくりでも歩いて進もう。このまま行けば、追っ手が掛かる頃には、出口に着いてる――」


 かもしれない……と言いたかったんだけど。

 俺は途中で言葉を切り、肩を震わせた。こ、これは……ひょっとして。

「ナオヤ、感じるか?」

 さすがにマヤ様も、同じく感じたらしい。

 きょとんとしたような一同の中で、この方だけが俺と同じく後方を睨んでいる。

「感じます……殺気を……物凄い殺気を感じる……それも今までにほとんど遭遇したことのない、鳥肌が立つようなレベルです」


「熱源探知に反応がありましたっ」


 いきなりびくっとミュウが動いた。

「さっきの穴から、誰かが地下通路に飛び降りたようです」

「ネージュっ」

 俺は皆まで聞かずに叫んだ。

「すぐに攻撃魔法の用意! エルザは防御魔法だっ。俺達全員にシールド頼むっ」


「え、ええっ!!」

「なんでいきなり――」


 意表をつかれた二人が同時に言ったが、俺は叩き付けるようにおっ被せた。

「いいから急げっ。多分、俺の勘が正しければ、こいつは」

 言いかけてるその瞬間、いきなり元来た方で眩い光が弾けた。


「伏せろぉおおっ」

「きゃっ。し、シールド!」


 今度は俺の怒声と、エルザの防御魔法を行使する声が重なる。

 混乱していた仲間は、大半が言われた通りに身を低くしようとした。

 たちまち半透明のシールドが一同を覆ったが、直進してきた光がそのシールドにぶち当たった途端――わずか半秒ほどで突破され、防壁が四散した。



 俺はその時、夢中でマヤ様を押し倒して通路に倒れ込んでいた。





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ