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驚愕の報告

 


 ああ、確かに隅っこの方に「才能値」ってのがあるね。いや、SSー6とか書いてある。記号は多分、魔界のぐにょぐにょした独特の記号を、英文字に直したらこうなるってことなんだろう。

 全てはリングに宿る、言語変換の魔法のお陰だ。


「元々、才能値はGー1が最低レベルだが、ナオヤは突出してる。さすがにマヤの見る目は確かだ、うん」


 自画自賛して、席上で思いっきり胸を反らすマヤ様である。

 あ、なんかそうすると胸のポッチが少し窺えたりして、腰にずきんと来るな! この人はまた、ブラもどき(ブラジャーみたいな下着がここにもある)を着けず、素肌の上に直接ドレス着てるな。けしからんぞー!


 などと俺が一人でドキドキしていると、カシムもわざとらしく唸った。いや、本気かもしれんけど。

「わしはDー77ですからなぁ……ぬうう」

 なぜか寂しそうである。

「……好奇心で訊きますけど、Gから始まって、記号はどれだけあるんです?」


「記号というか、それはクラスだ。計測した才能を示すクラスがGからAまであって、それぞれ才能開花の進展を示す数字が100ずつある。数字は開花度数とも言うが、要するに分かり易くした指針のようなものだ。そのまま現在の才能開花度を表すと思えばよい。才能がDクラスで数字が77なら、カシムの才能はそろそろ成長しきったということだろう。長寿の魔界の住人といえど、普通は100まで行かぬうちに寿命が来るはずだからな」


 例によって、マヤ様はずばり宣告した。

「当然、Dがさらに上のクラスであるCに上がることは、まずないと思ってよい。ほぼDのままで一生を終える」

「うう……」

 追い打ち食らったカシムが、哀しそうな顔で半ば壊れたテーブルを見つめる。

「いやぁ……もし才能を示すクラスがAで上限なら、俺のS二つはどういうことです」

 じゃなくて、カシムですらDクラスって、計測が厳しくないかぁ?

「そこがマヤも驚くところだ」

 身を乗り出して、やたら熱心に言う。

 さすがに「あ、胸元が見えそう」とか考えるとまずいな。俺は顔に出る。


「Sはそもそも、父上とこのマヤだけが持っていた才能クラスで、一応は計測のために設けてあるが、該当する者が出た試しがない。ナオヤが初めてだぞ。しかもSSとなると、マヤはおろか、父上ですら及ばぬ。父はSー85で、マヤがSー18だからな」


「へぇ……となると、マヤ様はまだまだ伸びる余地があるんですね。当然ですか」

「まあ……その通りだし、そこはマヤも大いに自慢したいところだが」

 マヤ様は呆れ顔で俺の顔を見た。

「ナオヤはしかし、驚かし甲斐がないな。おまえは父上より才能が上ということなのだぞ。魔王その人より底知れぬ才能があるのに、もっと喜ばぬか」


 そりゃ貴女、俺は最初っからそんな怪しい数値、信じてませんし!


 HPやMPまでならともかく、そんなオカルト、矢追さんでも信じないよっ。

 もちろんそんな本音は置いて、俺は話を戻して差し上げた。




「まあ、才能についちゃこれからの楽しみってことにして、今後のことを話し合いましょう。現状、魔界はどうなってます?」


 何気なく言うと、途端に軍議の間が緊迫した。

 というより……なんかどんよりと空気が重くなった。

 元気に話していたマヤ様も、滅多に見せないうれい顔になったほどだ。

「それだが……よい意味での進展はない」

 渋々といった感じで、マヤ様は言う。


「こそこそ城内に隠れていたリューゲルを見つけ、早速尋問したが、あヤツも大したことは知らなかったな。せいぜい、あのエスメラルダとかいう女の仲間が、最低でもあと一人はいるという事実くらいだ」

 うわ、まだこっちに仲間が来てるんかいっ、とぞっとした俺だが――。

 リューゲルって名前がすぐに思い出せず、顔をしかめる……あ、そうか、例の馬小屋で俺が尋問したおっさんだな。


「隠れ家とか、あるいは呼び出す方法とか追い出す方法とか、そういうのはまるで知らなかったわけですね? いえ、俺が訊いた時も、大したことは何も知らなかったようですが」

「まあ、ヤツは死んだし、もうどうでもよい。それより――」

「待って待って!」

 慌てて俺は突っ込む。

 今、さらりと残酷なこと聞いた気がするぞ。

「リューゲルは、既に死んでいる? 処刑したんですか?」

「うむ、何も知らないようだし、生かす値打ちもないからな。もう殺したぞ。そもそもあいつは、反逆罪ではないか」

 しゃあしゃあと言って全く悪びれないマヤ様である。

「カシムのように改心したわけでもなく、またしても城内に隠れていたくらいだ。生かしておいてなんとする?」


「いや……まあ、そう言われたらそうですけど」

 俺、こう見えても一応は法治国家ってことになってる国から飛ばされて来ているわけで……そういう風に「もう殺したぞ」とかケロリと言われると、そりゃ驚くよ! そういうことすると、普通は人権団体とかア○ネスとかから、鬼のようにドヤされる。

 まあ、ここは民主国家でもなきゃ法治国家でもない、一種の独裁国家だけどな。


「とにかく、処刑したヤツのことなど、もういい。それより、父上がどこを探してもおらぬっ。おまけにリューゲルも、父上が死んだと聞いただけで、実際には何も見てないそうなのだ。一体、どうなっているのか」


 思い出すと苛々したのか、マヤ様は爪を噛む。

 滅多に見せない仕草で、この方の心中が窺えた。そうかぁ、マヤ様はまだ魔王陛下の死を信じてないのだな……まあ、それは俺もそうだけど。

「ナオヤ」

 気付けば、隣のマヤ様が俺を覗き込むようにじいっと見つめていた。


「実は何か知っているのではないか……父上のことも」


「あ、いえ。魔王陛下の所在についちゃ、俺は本当に何も知りません。知ってたら、マヤ様に秘密にしませんよ」

 俺は慌てて手を振った。

 一応、嘘ではないのがミソである。ただ、エスメラルダが「この私が自ら倒したもの」とかかしたことを、黙っていただけだ。


「幸い、こうして城も奪い返したのですし、今後は魔界の総力を挙げて、その所在を突き止めましょう。リベレーターに協力していた連中を一人ずつ尋問すれば、何かわかるかもしれません」

「うむ、そうだな……もちろんそうするとして」

 とマヤ様に加え、今度はカシムも俺を見た……問いかけるような眼差しで。

「なんですかー」

「その、リベレーターですよ」

 カシムがずばり答えた。

「その呼び名、わしもプリンセスも初めて聞きますぞ。あのエスメラルダとやらがそうだとして、一体、どういう連中ですかの」

「あ、そうか……うん、そうですね、そこを言わないとな」

 俺は頭をかき、決断した。


 陛下には「最悪と思われる状況以外は、なるべく秘密にせよ」と言われていたけど、今って結構、最悪だと思うんだよ!


 そこで、遥か昔の侵略者と、陛下とその仲間が彼らを追い出した話をしよう――としたんだが、タイミングを合わせたように、外から衛兵の声がした。





「マヤ様っ! 放っていた斥候が戻り、戦況についての報告をしたいとのことですっ」


「通すがよい!」

 即座にマヤ様が答えた。

 戦況ってなんだよと思ったものの、すぐに思い出した。

 俺が苦し紛れの計略を立て、魔界とルクレシオン帝国をぶつけたんだった。うわ、確か魔界からは五千ほどの軍勢が、ルクレシオンへ向かってたんだよな。迂闊なことに、今の今まで忘れてたぞ!

 いま戻って来た斥候だって、元々は俺が放ってたはずだ。


 ――さては、あのレイバーグにコテンパンにのされたかぁああああ。


 嫌すぎる巨大な可能性に気づき、俺は本当に血の気が引いたね。

 そうだとすれば、この帝都マヤもヤバいっ。押し込まれるじゃないか。

「あれから、呼び戻さなかったんですか?」

 こっそりマヤ様に訊いてみたが、なぜか微妙な表情で首を振られた。


「使者は出したが――いや、後で話す。まずは報告を聞こう」

 両開きの重々しい扉が開き、武装したままの斥候が入ってきた。

 俺達に一礼すると、彼はその場で片膝をつく。


「申し上げますっ。ルクレシオン帝国と魔界の反乱軍の激突は、ルクレシオンの敗走で決着しました」


「……は?」

 俺は思わず立ち上がってしまった。

「ちょっと待って。じゃあ……レイバーグがいたのに、ルクレシオンが敗れた?」

 斥候の若者は、重々しい表情で頷いた。


「実際は、それどころではありませぬ。敵将レイバーグは、リベレーターを名乗る反乱軍の男に斬られ、重傷を負っております」 


 ――な、なんだってぇーーーーっ!


 リベレーターのもう一人が、五千の魔界反乱軍に同行していたのも驚きだが。

 あのレイバーグが、敗れた!? モノホンの勇者でも、あいつらには敵わなかったんかーーっ。




※いつもありがとうございます。今回、後からの修正が若干多めになりました。失礼しました~。

(流れはなにも変わってません)

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