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少年探偵とサイボーグ少女の血みどろ探偵日記  作者: 小夏雅彦
燃え上がる怒りと憎悪の炎
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13-白屋敷の前哨戦

 ガトリングの弾幕が途切れたタイミングを見計らい、前転を打つ。装甲をすり抜け頭部を狙った狙撃弾を回避し、仰向け姿勢のままコイルガンを連射した。連射した弾丸は右肩を抉っただけで終わったが、少なくとも狙撃者を排除することは出来た。


「イヤーッ!」「グワーッ!」「グワーッ!」


 転倒した僕を左右から刺し殺そうと迫る二刀ロスペイルのブレードを、腰を浮かせてのウィンドミル回転で迎撃。更に上体を持ち上げ、ブレイクダンスめいて二体を蹴り飛ばしながら立ち上がる。右に弾かれたロスペイルは道路側に投げ出され、市長軍の銃撃を受け爆発四散した。僕はガトリングガンを装備したロスペイルを睨む。


(二刀持ちのソルジャーに銃持ちのガンナー、狙撃手(スナイパー)ってところか。

 朝凪さん、こいつらももっと後になって登場する相手ですか?)

(然り。ここまで高度なロスペイル改造技術をまだ得ていないはずだ。

 やはり、私が介入したことによって世界に歪みが生じているようだ。

 口惜しやッ……!)


 ガトリングガン持ちのロスペイルへと攻撃を行おうとした瞬間、『白屋敷』の扉が勢いよく蹴破られた。警戒を解かず目を上げた僕は、そこに行動隊長の姿を見た。


「貴様、アウトラストから生還したというのは本当だったようだな……!

 だが、幸運は二度も続かんぞ! エイジア!

 なぜなら私が貴様を殺すからだ!」


 行動隊長の体が光に包み込まれ、そしてロスペイルへと変わった。行動隊長は二本の特殊警棒をクルクルと手元で回転させた。警棒がバチバチと威圧的な電光を上げる。


「心折れ、肉体までオーバーシアに差し出したか。

 ならばもはや迷う必要などないな」

「ほざけ、エイジア!

 貴様を殺し、俺は末席ではない真の『十三階段』になる!」


 行動隊長は地を蹴り跳躍、右の警棒を思い切り振り下ろして来た。どれほどの威力があるのかは未知数だが、あの警棒に触れるのは危険だ。僕は左足を引き半身になり一撃をかわし、カウンターのジャブを繰り出した。行動隊長はこれを首を逸らしかわす。


「イヤーッ!」「イヤーッ!」「イヤーッ!」「グワーッ!?」


 行動隊長――スタンロスペイルとでも言うべきだろうか――の首を狙った攻撃を、腰を落としかわす。そしてその胸板に全力のストレートを叩き込んだ。行動隊長は吹き飛び、『白屋敷』前の階段に叩きつけられた。まだロスペイルの体に慣れていないようだ。


「クソッ、やるなエイジア!

 だが、貴様を倒すために俺は戦力を貰ったのだ!」


 二刀のソルジャーが横合いから切りかかって来る。それをいなし、反撃を繰り出そうとしたが、更に逞しい石像を飛び越え空中から切りかかって来る影があった。振り下ろされる二刀をバックステップでかわし、顎先を蹴り上げようとしたがそれもガトリングに阻まれる。舌打ちし連続バック転を打ち、銃弾を避けつつ距離を取る。


「マイッタカ!

 これまでのデータから見るに、貴様は多人数戦闘に弱い!」


 電流纏うスタンロッドを紙一重で避け、反撃の機会を伺う。だがスタンの隙を二体のソルジャーが塞ぎ、その二体の隙を遠方からガンナーが塞ぐ。見事な連携だ、苛立たしいほどに。そろそろ二体の動きも見えて来たところだ、反撃に移りたい。


「ハッハッハ! 無駄だ無駄、エイジア!

 貴様のその首を差し出し私の出世を――」

「イヤーッ!」「グワーッ!?」


 半歩引きながら右手をなぎ払う。その手には生成した長刀がある。突如として生えた刃に、スタンは対応出来なかった。切断こそ免れるが、左手を深々と切り裂かれ悶える。腱まで行っただろう、あの手でこれ以上攻撃を行うことは不可能だ。


 長刀をグルグルと回転させ二体を牽制しつつ後退、放たれたガトリング弾を側転で避け、反撃に転じる。左側のソルジャーに長刀を打ち下ろす!


「イヤーッ!」「イヤーッ!」「イヤーッ!」「グワーッ!」


 刃の一撃こそ避けたものの、即座にはね上げられた柄を防ぐことは出来なかった。鼻先を打たれ悶えたところに、僕は遠心力を乗せて刃を振り払った。


「イヤーッ!」「イヤーッ!」「グワーッ!」


 回転の勢いを一度では殺さない。重心を前に傾け、敢えて倒れ込むことで側面に回ったもう一体のソルジャーの斬撃を回避。そのままベリーロールめいて回転し、ソルジャーの側頭部に踵を打ち込んだ。無論、このような動作をエイジアの助けなしに行うことは出来ない。スラスターを展開、更に蹴り足をブースターで加速させる。加速キックを受けたソルジャーの頭部は吹き飛んで行き、二体同時に爆発四散した。


「グムーッ! だが、この程度でいい気に」

「イヤーッ!」「グワーッ!」


 いつの間にか僕の背後に回っていたスナイパーの頭部が宙を舞った。狙撃手すらも欺き、背後に回った剣士の薙いだ刀によって。スナイパーロスペイルは爆発四散した。


「クッ!? 報告にあった仲間か」

「イヤーッ!」「グワーッ!?」


 モーターの回転音とともにいくつもの弾丸がばら撒かれ、地上に降り注いだ。特に弾雨が集中したガンナーロスペイルは、直撃を受けいとも容易く爆発四散した。


「そんなバカな!? 最新鋭の戦力がこんな」「イヤーッ!」「グワーッ!?」


 迂闊。周囲に気を取られたスタンの鼻に僕は飛び膝蹴りを叩き込んだ。一瞬早くこちらに反応したスタンは右のロッドを僕の脇腹に突き込み、電気を流した。全身が痺れるが、しかしそれしきの力では加速と質量を乗せた攻撃を止めることなど出来はしない。


「助け」「イヤーッ!」「グワーッ!」「イヤーッ!」「グワーッ!」

「イヤーッ!」「グワーッ!」「イヤーッ!」「グワーッ!」

「イヤーッ!」「アバーッ!」「イヤーッ!」「アバーッ!」


 マウントポジションを取り、何度も拳を打ち下ろした。最後に一撃、渾身の力と恨みを込めた全力のチョップを打ち下ろした。スタンロスペイルは爆発四散!


「やれやれ、こんな奴を『十三階段』に任命しないといけないなんてな。

 オーバーシアの人材不足も深刻、ってことか。

 助かりましたよ、エリヤさん、クー」


 僕は一旦変身を解除し、立ち上がった。打たれた脇腹が痛むが、泣き言を言ってはいられない。辺りを見回すと本隊が到着し、『白屋敷』を着々と包囲し始めていた。


「まったく、ホットスタートだな。色々話はあるが、それはまた後でだな」

「ええ、『白屋敷』に入りましょう。

 あのスタン如きが最後の相手とは思えませんから」


 僕は泰然と佇む『白屋敷』を睨み、入口へと向かって行った。

 ユキは避難することが出来たのだろうか、それとも。


 個人的な感傷を振り払い、僕は進んで行った。


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