第二十八話 テンペストフェンリルちゃんの過去
数ある作品の中から興味を持っていただき、本当にありがとうございます!
自分の部屋へと戻ったタヴァータとレベッカ。
するとそこには、ひとりで待っていたテンペストフェンリルのお姉さんがいて........!?!?
レベッカさんに強引に引っ張られるままに、宿の部屋へと到着した僕。
すると........そこにいたのは、テンペストフェンリルのお姉さんただひとりだった。
「........あー!! ふたりとも、おかえりー!!!」
フェンリルのお姉さんが、僕たちを見るなり......最高にまぶしい無邪気な笑顔で出迎えてくれた。
「…ただいまです!
........あれ、皆さんはどちらに行かれたんですか?」
僕たちがトイレに向かうまでは、この部屋にはナキシーさんとハイコさんとメオナさん、そしてレムもいたはずなのだが............. なぜかみんないなくなっている。
「…みんなは、天使ちゃんのしょぐーを決める? みたいなこといって、見張りをわたしに任せておーさまのところへ行っちゃった。
だから、ずーっと退屈だったんだよねー!!! ねーねー!! あそぼあそぼー!!!」
僕が不思議に思っていると、お姉さんがしっぽをぶんぶんと振りながら楽しそうにそう答えた。
「そういうことだったんですね!!! じゃあ、僕らと一緒に遊びましょう!!!!」
「.........あ、あたしも.........? あたしと遊んで、イヤじゃない.......ですか.......?」
「…え〜…なんで? イヤじゃないよ!!! 天使ちゃんも一緒にあそぼー!!!!」
お姉さんが、僕に底抜けに明るい笑顔を向ける。
森をめちゃくちゃにしてしまった罪悪感から少したどたどしいレベッカさんにも、同様の笑顔を向けて遊びの誘いをしてくる。
「…えへへ...........!!! じゃあ、みんなで一緒に遊ぼっかぁ.......♪」
「「.......いえーーーーい!!!!!」」
僕とお姉さんの楽しそうな声が、三人だけの宿の部屋にこだました。
◆◆
「・・・・いくよーっ!!! ひっさぁつ!!!
ちょースーパーウルトラぎがんとスラーーーーーーーーーーッシュっっ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
「「…ぐわーーーーーーっ!!! やられたーーーーーっ!!!!!」」
お姉さんが勇者になりきって放った全力の必殺技が、敵役の僕とレベッカさんに直撃して、大げさに後ろに吹っ飛んで見せる。
お姉さんの熱い希望により『勇者ごっこ』をすることになったのだが、やっぱり何歳になってもごっこ遊びは楽しい!!!
僕たちも、童心に帰って全力で楽しんでしまった。
「…あははっ.......♪ たのしーねぇーっ!!!!!」
「…はいっ!!!! やっぱり、ごっこ遊びは最高です!!!!」
「……ほんとだねー!!! 身体を全力で動かして遊ぶことって、こんなに楽しいんだねー!!!!」
三人とも笑顔のまま肩で息をしながら、消耗しきった体力を回復させている。
いくら楽しいとはいえ...........ずっと身体を動かしっぱなしでは疲れてしまう。
「.........そういえば、お姉さんのお名前まだ聞いてませんでしたよね。 なんていうんですか?」
出会ってからなんだかんだで名前を聞いていなかったことに今気づき、休憩がてらにお姉さんに質問する。
すると、お姉さんはきょとんとした顔で答えた。
「…わたし? わたしに、名前なんてないよー?
森では、おともだちから『てんぺすと・ふぇんりる』って呼ばれてたけど................」
「……あ、そうなんですか.........?」
僕たちが、少し驚いたようにお姉さんの方を見る。
そういえば、『神獣はごく少数しか存在しないから、種族名がそのまま名前みたいになっちゃってる』って前にクロエさんが言ってたな。
「……そうだよー!!
森のみんなはとってもいい子たちだったんだよー!! みーんなわたしのこと慕ってくれたり、一緒にあそんでくれたんだー!!!
くまちゃんはみんなのお姉さんで、かめじいはとってもかしこくて、いのししくんは怒りんぼだけどとってもやさしくて・・・・・」
お姉さんが目を輝かせながら、最高の笑顔で森の魔物たちのことを話している。
その無邪気な顔から、本当に森のみんなが好きなんだろうということが伝わってくる。
「……ふふっ..........!!! お姉さんは、本当に森の皆が大好きなんですね!!!
僕も、会ってみたいです!!!!!」
「............うん! にんげんくんたちにも、会ってほしかったなぁ。」
僕がそうお姉さんに伝えると、お姉さんはさっきとはうってかわって寂しそうな顔をしてぽつりと呟いた。
さっきまで騒がしかった宿の部屋が急にしんと静まり返り、なんともいえない緊張感に包まれる。
「…………みんな、死んじゃったんだ。」
「.............................そうなんですか。」
「……………………………………っ…………!!!!!!!!」
その言葉を聞き、まるで頭を強く殴られたような衝撃が走る。
視界の端で、レベッカさんが口元をおさえながら目を見開いて、ぷるぷると震えているのが見えた。
「・・・一週間くらいまえから、みんなきゅうに苦しみだしてあばれだしちゃってね。
ある日わたしが朝おきたら、まっ黒いきりが森じゅうをおおってて................
みんな、うごかなくなってた。」
そういって、お姉さんは俯いてしゅんとした態度でそう答えた。
ぷるぷるとふるえて、目にはいっぱい涙をためていた。
「・・・・・・だからね、なんとかしないとって思って、にんげんくんがいる宿にあそびにきたの!!!
たすけてくれて、ほんとうにありがとうね!!!!!!」
そういって、お姉さんは僕に先ほどと同じような屈託のない笑顔を向けてきた。
・・・・が、瞳にはいっぱい、悲しみの涙が溜まっていた。
「................っ...................はい。 こちらこそ、僕を守ってくれてありがとうございます!」
あまりの事実にひどく胸を締め付けられながらも、僕からもせいいっぱいのお礼を告げる。
視界の端に映っていたレベッカさんはというと.............. ぽろぽろと大粒のなみだをこぼしながら、足をがくがくと震わせて中腰のような体勢で、だらんと両腕を脱力させていた。
「・・・あ、ああ、あ.............!!!!!
ご、 ごめ、 な、 さ................ ひぐっ............ えぐっ..............
ご、 め、なさ...................ごめん........な...さい................っ..........・・・・・・・・・」
レベッカさんはその体勢のまま、へにゃっと頭から前に倒れ込んで、土下座のなり損ないのような体制になって、泣きながら...........壊れたおもちゃのようにぶつぶつと謝罪の言葉を繰り返していた。
…自分がやってしまったことの重さに、押しつぶされてしまいそうなのだろう。
僕はそんなレベッカさんの様子を、ただ唇を噛み締めて見守ることしかできなかった。
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