第二十六話 新たな七罪人とお漏らしお姉さん
数ある作品の中から興味を持っていただき、本当にありがとうございます!
ナキシーさんたちの総攻撃を食らって、意識を失ってしまった堕天使のお姉さん。
彼女を宿まで連れ帰ったタヴァータたちは、今回の事件の原因解明と彼女の処遇を決めることになったのだが.........?
ナキシーさんたちの決死の総攻撃のあと...........
攻撃をもろにくらってお姉さんが目を回したすきに、彼女を縛りあげてみんなで宿へと戻ってきた。
宿の部屋の一角で、お姉さんの泣き声がこだましている。
「...........ひくっ............ぐすっ................えぐっ...............!!!
....ごっ.........ごべんなさいぃ...............っ.............」
「........ごめんで済んだら我々騎士団は要らんっ!!!!
一週間もの間、あれだけの闇の魔力を撒き散らした挙げ句、タヴァータくんの純潔を無理やり奪おうとするなどっ.................!!!! ぜ......ぜったいにっ............許せんっ...........!!!!!!」
「.............ま、まあまあ.........。
僕は全然気にしてないですし、お姉さんも騙されていただけなので.................。」
僕が必死に、心底怒っているナキシーさんをなだめる。
お姉さんの方も酔いがさめたようで、自分がしでかしてしまったことを涙ながらに反省している。
先程まで僕たちを苦しめていた闇の魔力障害もすっかり解消していたし、これにて一件落着.........と言いたいところなのだが..............。
どうやら、そうもいかないらしい。
「...........クロエ様によると、この酒には...........魔力を意図せず漏れさせるような魔法を常時発動させる紋様が刻み込まれていたようだ。
この酒は誰から渡されたものなのか、素直に吐け!!!!!!」
ナキシーさんが押収した空の酒瓶を調査してくれていたクロエさんいわく、この紋様は極めて独特かつ複雑な魔法構造をしているようで............誰かの固有能力と考えるのがいちばん可能性が高いらしい。
といっても、僕らの中でも誰一人そんな固有能力の存在は知らなかったのだけど.........。
「............ふぁい..........。
このお酒は、見知らぬおねーさんにもらったやつです...............。
名前は聞いてないけど............赤髪でキレイなロングヘアの..........ツリ目の人でした。
あ、あと........赤い羽根があって........なんか燃えてました...........。」
お姉さんがびくびくしながら答えると、ナキシーさんたちが顔をしかめて考え込んだ。
「.............なるほど。
あまり考えたくないが、この酒をわたした人物はおそらく七罪人だろうな。」
「........七罪人???」
ナキシーさんの口から出てきた聞き馴染みのある言葉に、僕は少しくびをかしげた。
ヴィーラムさんもそう呼ばれていたし、なにか関係があるのかもしれない。
「..............そういえば、タヴァータくんにはまだ詳しく話していなかったな。
七罪人とは、この全世界において特に残忍..........かつ桁違いな実力を持つ罪人たちの総称だ。
この世界には罪人が多くいるが........その七人だけは、他の有象無象たちと遥かに一線を画している。」
ナキシーさんが、こわばった表情で真剣に語っている。
全世界の中でも屈指の実力を誇っているとなると、敵に回すと相当厄介そうだ。
「..........例えば、タヴァータくんと一番なじみのあるヴィーラムだが.............
やつは数百年前まで、世界最凶の連続強盗殺人犯として世間を騒がせていたんだ。」
「............ええっ!?!?!?」
「.........ヤツは非常に残忍かつ強欲でな。
一度欲したものは、何が何でも..........たとえ、持ち主を殺してでも手中に収めないと気が済まないらしい。
最近はヤツ絡みの事件も聞かなくなっていたのだが、まさか我が王国随一の規模の商会を立ち上げていたとはな....」
「...........すごい人なんですね........色々と.......。」
僕たちの会話に唐突に出てきた、馴染みのある人物の衝撃の事実。
ヴィーラムさんほどのやばい人物があと六人もいると考えると..............確かに、これは由々しき事態だ。
内心すごく驚いている僕をよそに、ナキシーさんがさらに思い悩んだ顔で話を続ける。
「.......しかも、さっきコイツが言った『酒を渡してきた女』の特徴が、とある七罪人の特徴と酷似している。」
「.............ええっ!?!? それ、やばくないですか!?!?!?」
ようやくことの深刻さを理解した僕が、驚いて思わず大声を上げてしまう。
仮に今回の事件の黒幕がその『七罪人』の中のひとりであるなら、かなり厄介そうだ。
「...........ああ。 なんの意図があってこのような大規模の災害を引き起こしたのかはわからないが..........
最大限、警戒しておくに越したことはないだろう。」
「........ですね。」
僕たちは、そこはかとない脅威の予感に軽く身震いしつつ、精一杯の対策を心がけようと強く誓ったのだった。
◆◆
あれから数時間後。
国王陛下に今回の騒動を報告し終えた僕たちは、とりあえず一件落着ということで一息ついていたのだが....
まだ、解決するべき問題は残っている。
「............それで、この女の処遇なのだが............
いったい、どうしたものか................。」
ナキシーさんが、手を額に当てて心底困ったような表情をしながらそうつぶやいた。
この女とは、無論.........今縛られて地面に座っている、『自称・元天使のお姉さん』のことだ。
「.........今更なんですけど、お姉さんのお名前をお聞きしてもよろしいですか......?」
「......あ、はい。
あたしの名前は................『ディプラヴィデ・レベッカ』っていいます。
ついこないだまで天界に住んでた.......元・天使です。」
自称・元天使のお姉さんが、縛られたまましおらしくそう名乗った。
ナキシーさんたちの鋭い視線を一身に受けて、かなり萎縮してしまっているようだ。
「......なるほど。 天使の存在など眉唾物にもほどがあるのだが、あれほどの魔力量の持ち主とあらば......... あながち、完全に嘘とも言いきれんな...........。」
そうやって、ナキシーさんが腕を組みながら目を閉じてうんうんとうなずいた。
ナキシーさんによると、このファンタジーな異世界でも、天使の存在はおとぎ話にしか登場しない.........
存在すらはっきりと確認されたことがないほど珍しい種族なのだそうだ。
「...........それと貴様、先程から落ち着きがないぞ。 反省中の身なのだから、大人しく座っていたらどうなんだ。」
ナキシーさんが、レベッカさんへ向けてぴしゃりと言い放つ。
さすがに長時間縛られたままでは体勢がキツイのか、先程から太ももをもじもじとさせて落ち着かない様子のまま、息を荒らげて僕たちのことを涙目で見つめていた。
「.........うぅ..........。 あたし、ここに来たときからずっとトイレに行きたいのをガマンしてるんですよぅっ.........!!!
みなさん、七罪人?とやらの人のことに夢中で、ぜんぜんあたしのこと休ませてくれないじゃないですかぁーっ............!!!!」
レベッカさんが、今にも泣きそうな顔で泣き言を叫んだ。
確かに、あれだけがぶがぶお酒を飲んでいたらトイレにも行きたくなるだろう......。
さすがに可愛そうなので、僕はレベッカさんへ助け舟を出そうとしたのだが...............
「.........ふん。 魔力だけでは飽き足らず、小水までも満足に身体の中に留めておくことができないのか。
まったく..........困ったやつだ。」
そういって、ナキシーさんが少しいじわるな表情をしながら言い放った。
「........タヴァータくんに説明すると、魔力が多い種族は、普段から身体の中に魔力を留めておかなければならないのだ。
なにもせずに身体から魔力がダダ漏れになっていては........いざというときに魔力切れで魔法が使えないし、今回の騒動みたいに周りが迷惑するかもしれないだろう?」
そういって、ナキシーさんが僕に説明してくれた。
ナキシーさんによると、この世界で言うところのステータスの『魔力指数』とは、体にとどめておける魔力の限界値であり、身体から湧き出る『魔法のもとになるエネルギーの量』という意味の『魔力』とは別物らしい。
幼い頃から魔力を身体にとどめておく練習をすることで、だんだんと身体に貯めておける魔力の量.....『魔力指数』も増えていくらしいのだが...............
特殊な紋様が刻まれたお酒のせいで、レベッカさんの内に宿る膨大な魔力が漏れ出して........
この大規模な魔力障害が起こったというわけなのか。
「....................わたし.......................うまれて1ヶ月くらいだけど.....................
...........まりょく......................もらさない.............!!!」
それを聞いたレムが、無表情ながらもえっへんと胸を張って自慢するように答えた。
.........まあ、レベッカさんの場合は魔法がかけられていたってのもあるけど................
確かに、魔力が漏れ出てしまったら、いろいろと問題があるように感じる。
「...........ふふっ。 レム、偉いぞー!!
それに比べて、貴様は魔力も小水も我慢できない.......とんだ “ お漏らし女 ” だな。 はーっはっは!!」
レムの頭を撫でながら、ナキシーさんがいじわるっぽく笑った。
「.........ぐすっ.........いじわるしないでくださいよーっ...............!!!
魔力のことは何も言い返せないけど、おしっこの方はまだ漏らしてませんからぁーっ!!!!」
そういって、レベッカさんが涙目になって震えながら言い返す。
どうやら、ナキシーさんはひどくレベッカさんに怒っているようだ。
(.............七罪人の魔法のせいでこうなっちゃったんだから、仕方がないと思うんだけどなぁ...........。)
できれば、みんな仲良くしてほしいと思っているのだが...........
僕は深くため息をつき、がっくりと頭を抱えて悩みこんだ。
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