第二十一話 自然の摂理
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ひょんなことから女湯に入ることになり、いろいろあってのぼせてしまったタヴァータ。
気を取り直して出発しようとするも..............森の様子が、なんだかおかしい。
翌朝。
「..........ふわぁぁ..................
き、昨日はひどい目にあったぁ.............。」
窓から差す光と小鳥の鳴き声を目覚ましにむくりとベッドから起き上がった僕がそうつぶやき、昨日の記憶をゆっくりと思い浮かべる。
あのあと、お風呂場の中で大勢のお姉さんたちから質問攻めにあい............
それに答えていくうちに、極度の照れと興奮から完全にのぼせてしまった僕は.............お風呂場で倒れて今の今までずっとベッドの上で休む羽目になってしまったのだ。
「.............タヴァータくん、もう体調は大丈夫か...........?」
「.................パパ...................だいじょうぶ.....................?」
2人が、心配そうに僕を見つめている。
「............はい! もうすっかりよくなりました!!!!」
僕が心配させまいと、今できる精一杯の笑顔でにかっと笑って答える。
.............もう、女湯に入るのはこりごりだ............。
そうやって苦い思い出をこころの中にしまいながら、僕はゆっくりと旅の準備をはじめるのだった。
「........ブモオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!!!!!!」
静かな森の中に、猛々しい獣の雄叫びがこだまする。
宿を出発した僕たちに待ち受けていたのは、昨日よりもさらに凶暴化した魔物たちだった。
僕たちを見るなりみさかいなく襲ってくるほどに理性を失っており、そんな魔物の出現率も昨日の比ではないほど高くなっていた。
「......ま、また出たぁっ!!!! レム、おねがいっ!!!!!!」
「........................ごあーーーーーーーーーーーーーーー・・・・・・・」
レムの大きくあいた口から極太のレーザーが放たれ、それに直撃した魔物が消し炭になる。
昨日は数回しか見ることのなかったそんな光景も、今日は宿を出てから今までの数時間で何十回と行われていた。
レムの極太レーザーがなければ、いまごろとっくに王都へととんぼ返りしていただろう。
「............今日はやけに、魔物が多いなぁ..............」
僕が、そのあまりの遭遇率に疲弊してぼそりと呟く。
「........いくら魔力障害が発生しているとはいえ、この遭遇率は異常だ。
魔物たちが強大な魔力にあてられて理性を失い、だれかれ構わずに襲いかかっているようだ。」
僕の呟きを受けて、ナキシーさんもひどく困惑したように僕たちにそう呟いた。
聞くところによると、魔力障害とは.........何らかの原因で、ある地点に強大な魔力が発生することらしい。
通常なら魔物の動きが活発になる程度らしいが、昨日や今日のように魔石が使用できなくなったり魔物が凶暴化するレベルのものは滅多に起こらない..........と、ナキシーさんが難しい表情で言っていた。
「.......もしかして、僕とレムの魔力が原因なんじゃ...........?」
その話を聞いた僕がおそるおそる尋ねると、ナキシーさんは困ったようにふるふると首を横に振って答える。
「.........それは違うぞ。
タヴァータくんとレムの魔力はもともとはヴィーラムのものなのだが.........ヤツは土属性だ。
今ここで発生している魔力は闇属性だから、何か別の原因だろう。」
ナキシーさんによると、魔力にはそれぞれ “ 属性 ” というものがあり、それによって様々な効果を発揮するらしい。
基本的には種族によって扱える属性は異なるようで、ナキシーさんの見立てによると.........
今回の魔力障害では闇属性の種族が原因である可能性が高いらしい。
「.......闇の魔力は、生命に直結するエネルギーを司るものだからな。
魔物たちが想定より凶暴化しているのも、闇の魔力にあてられて苦しんでいるからだと考えている。」
......なるほど。
魔物たちが凶暴化しているのも、苦しいのにどうすることもできないやるせなさから来ている...........ということか。
だったら、魔物たちが暴れたくなるのも納得できる。
「..........そうだとすると..............
僕たちが命を奪ってしまったことが、少し申し訳ないです。」
その話を聞いて、僕がしゅんとしながら呟いた。
すると、ナキシーさんが笑顔で僕の頭をなでてくれた。
「..........ふふっ.......。 タヴァータくんは優しいな。
だが、私達が殺めなければ........逆に私達が殺されていただろう。
強いものが生き残る。 それが、自然の摂理だ。」
「.........はい........。」
「............レムも、私たちを守ってくれて、どうもありがとうな。」
「..............................♪」
ナキシーさんが、レムの頭をやさしくなでている。
その横で、僕の中にあるあたたかさと命を殺めてしまった罪悪感がごちゃまぜになっていた。
............なにか、魔物たちのために僕にできることはないだろうか。
「.........僕、この魔力障害をなんとかしてあげたいです。」
思わずその考えが口からこぼれ出ると、ナキシーさんが優しく微笑んだ。
「.........タヴァータくんの気持ちはわかるが、今回ばかりは難しいな。
闇属性の魔力を浴び続けていては、私たちも生命が脅かされる。
今は私の魔法の効力でなんとか生きていられているが、これ以上闇の魔力が強くなってしまったら、タヴァータくんの命があぶない。」
「.............そうなんですね...............。」
助けてあげたいけれど.................やはり僕はちっぽけな人間だ。
そんな歯がゆい気持ちでいると、それを気遣ってくれたナキシーさんが明るく僕たちに話しかけた。
「......魔力障害が強まってきたな。 今日のところは宿に戻ろう。
おそらく、そろそろ国王陛下が動いてくださるはずだ。
どうにもできないことを悔やんでも、仕方がないさ!」
「............はい...............。」
僕はなんともいえない無力感に苛まれながら、その場を振り返って来た道を引き返そうとしたそのとき。
「............................?」
振り返った僕の背後から、なにやら視線を感じる。
急いで前を向き直しても、そこにはさっきまでと全く変わらない光景が広がっているだけだ。
(.......................? 気のせいかな..................?)
僕はほんの少しの違和感を抱えながら、先へ進んでいるレムとナキシーさんへ追いつこうと早足で駆け出した。
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