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57話:伯母さんのカフェ

「いらっしゃいませ。何名様でいらっしゃいますか?」


「お〜…るいに接客されてるのはなんか変な気分だな。もちろん一人だぞ!」

 

「かしこまりました、席にご案内致します。こちらへどうぞ…」



僕は海を窓がある壁側の席に案内した。

流石に中央の席で僕達がこんな感じに喋ってたら注目を浴びて迷惑になっちゃうからね。



「こちらがメニューでございましゅ………ございます」


「ん〜…じゃあホットコーヒーを1杯お願いします!…あとございましゅ、可愛かったぞ!もう一回ございましゅを頼みます!」



「……じゃあ持ってくるねっ!」



僕はそう言って走り気味にカウンターに向かっていった。くそ…お客さんが海のせいで噛んでしまった…それを触れられたし…海め許さん…!!



「…先輩最後、じゃあ持ってくるね。じゃだめですよ。あと可愛かったです」


「…岸田さんも噛んだことに触れないでよ!!それにもう海だからいいよ。次のお客さんにはちゃんと接客するからさ」


「了解で〜す!……それで、さっきの人って学校で有名な先輩ですよね。…友達なんですか…??」



「ん?海…?海は幼馴染だよ。小さい頃からずっと一緒に居るんだよね。だからこんなバイトのとこまで来てさぁ…」


本当に配信で言ったのは失敗したね。…でもまさかここまで見に来るなんて海はどんだけ暇なんだか…



「………ふ〜ん…幼馴染かぁ…そっかぁ…」


そう言って岸田さんは顎に手を当てて少し考えているようだった。…何か気になることがあったのかな…??



「岸田さん、幼馴染がどうかしたの…?」


「ん…?あぁ…いや、少し気になったことがありましたが大丈夫ですよ」


「そう…?なら、早く海にホットコーヒーを淹れて持っていて帰らせよう!」







――――――――――――――――








「お待たせいたしました。ホットコーヒーでございます」


「おぉ〜!!良い香りだなぁ。流石るいの伯母さんが淹れたコーヒー!!…昔るいの家で飲んだときめちゃくちゃ美味かったからな」



伯母さんが淹れたホットコーヒーすぐに海のテーブルに持っていった。…今は人が少ないから海と話しても大丈夫だよと伯母さんが言ったが話さずに海にはさっさと帰ってもらおう…



「それ飲んだら早く帰ってよ…!」


「……るい先輩、せっかく見に来たんですから少しくらい話してもいいんじゃないですか?…ねぇ、海先輩…?」


岸田さんは僕の肩に手を置きながら言ってきた。



「あぁ…そうだな……って岸田…!?」


「はい、岸田京華です。海先輩とは話すのが初めてですよね?よく私のことを知っていましたね」


「そりゃあ知ってるに決まってるだろ。学校1のイケメン(女子)って言われてるのに」


「そうなんですか。…知りませんでした。私は海先輩は体育祭で知りましたよ。騎馬戦凄かったです。よくあの津田先輩に勝ちましたね」


「あぁ…津田はパワーが凄かったからな。作戦が上手くハマらなきゃ勝てなかっただろうなぁ。…というか津田もここのカフェで働いてるんだな…!!今あっちの厨房見てびっくりしたぞ。というか服がピチピチすぎだし」


確かに津田さんがカフェで働いてるのってなんか不思議な感じがするよね。…うん、服がピチピチなのは凄い気になる…




「…じゃあ岸田、るいのことは任せたぞ。るいってカフェのバイトは初めたばかりだし分からないこともたくさんあると思うしな」




「はい、でもるい先輩は結構しっかりしてますよ。すぐにマニュアルを覚えましたし。可愛いから見てて皆癒されて助かってます…」



「……ふぇっ…!?!…え…えぇ…!?」



「なっ…!?」




海と岸田さんの話を聞いていて、僕はしっかりバイト出来るんだぞっと海に言おうとしたら急に岸田さんに後ろから抱き着かれた…


急な行動に僕は固まり海は飲もうとして口に近付けていたコーヒーを止めてしまっている。




「すんすん………いい匂いしますね…るい先輩…」


「は…はぁ…!?」



岸田さんは僕を後ろから抱き締めたまま海の方を見てゆっくりと言った。

…な、な…何をしてるんだ岸田さんは…!!

ぼ、僕に抱きついて…いい匂いとか言って………えぇ…!?



「お、おい!何してるんだ岸田!」


海も焦ったように席から立ち上がって岸田を睨んでいる。…睨んでいる…??




「…どうしました海先輩…??」


「な、なんでるいに抱き着いて…!!」


「??なんでるい先輩に抱きついてるのかって…??可愛いからですよ…」


「こ、ここはカフェの中だぞ…!?他の人に見られたりしたら…だから早く抱きつくのをやめ…」


「いえ、さっきお客さんが出ていきましたので今このカフェに居るお客さんは海さんだけですよ。だから誰にも見られてませんし。…それに海先輩はなんでそんなに焦ってるんですか…?」



「え…い、いや…それは……………ん…??…………そ、そういえば…なんで俺は…焦ってるんだ…??……?」



「……っ!!………」


岸田さんは海の言葉を聞いて僕に抱き着くのをやめて後ろに立ってまた顎に手を当てて何かを考えている。……ぼ、僕にはよく分からないんだけどどういうことなんだ…??どういう状況なんだこれ…!?






「……ふ〜ん……やっぱりそうだと思ったけど、少し予想と違ったなぁ…ん〜…そういう感じかぁ…そうなんだぁ…そっかそっか…“まだ気付いてない”感じかぁ」




そう言いながら岸田さんは海に近付いて肩に手を置きながら海の耳元に口を近付けた。




「……海先輩…あんまり遅いようじゃあ私が取っちゃいますよ…??私…狙った獲物は逃さないんで……手遅れになる前に気付いたほうがいいですよ…」


「…獲物…??て、手遅れ…?どういうことだ…??」




「ふふっ…いずれ分かると思いますよ。それじゃあ私は仕事に戻りますね!」



岸田さんは海に言い終わった後奥のカウンターに戻って行った。……なんか岸田さんは海の耳元で言ってたからよく聞こえなかったんだけど何て言ったんだろう…??




「うわぁ〜…岸田怖ぇぇ…」


いつの間にか僕の隣に来ていた柳さんは岸田さんの方を見ながら怖がっている。…柳さんは岸田さんが海に言ったことが聞こえたのかな…??



「あの、柳さん…岸田さんって海に何を言ったんですか…?よく聞こえなかったんですけど…」




「いや、俺の口からは言えないなぁ…巻き込まれるのは怖いしな。…まぁるいくんは色々大変になると思うが、俺はどっち選んでも良いと思うぞ。イケメンだしな」


「イケメン…??」


「うん…やっぱりるいくんは今の鈍感なままが一番いいよ…君は僕の癒やしだ…」


「え…えぇ…??」









……結局よく分からなかったんだけど…

さぁ、どうなるのか。

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