57話:伯母さんのカフェ
「私はカウンターの方でさっきの続きをしてきますので京華さんとるいくんはテーブルを拭いたり床の掃除をお願いします」
「わかりました!」
「りょうかいで〜す!…じゃあ先輩、私が床の掃除をするんで先輩がテーブルを拭いてください!えーっと…あっちのカウンターのところにテーブル掃除用のスプレーとシートがあるのでそれを使ってください!お願いしますね!」
「うん!」
僕は早速カウンターまで行き、スプレーとシートを取りテーブルの掃除を開始した。
このカフェは二人用のテーブルが多いからテーブル自体があまり大きくないため一つのテーブルを拭くのは楽だけど、全部となると流石に疲れるなぁ…
まぁでも頑張って隅々まで綺麗にするかぁ…
―――――――――――――
「うぁぁぁぁ……終わったぁぁぁ……」
テーブルをすべて拭ききった…もう手がぱんぱんだよ…もう動きたくない。というかバイトの人達は毎回これをしてるの…??腕疲れて次の仕事できなくない…??…まぁ津田さんは大丈夫だろうけどさ。
いや、僕の体力がないだけか…
「あっ、先輩もう終わりましたか!…て、先輩ぐったりしすぎですよ。そんなにテーブル拭くのって体力使う仕事ですかね…まぁでも安心してください!先輩が体力使う仕事はもう今日はしないので!」
そう言いながら床の掃除が終わった岸田さんは席でぐったりしてた僕に伝えてきた。
……うん、というか普通はテーブル拭いたくらいじゃ疲れないよね。…僕の体力の無さを再認識できたよ…
でももう今日は体力使う仕事無いみたいだしなら大丈夫かな。
「ん〜…今はもうやる仕事無くなったのであっちで話でも…」
「るいくん……!!!!」
「え……!?…うぎゅぅっ……………」
今はやる仕事がないんだ。…と思っていると突如後ろから聞き覚えのある声で名前を呼ばれたので振り返ってみると急に抱きつかれた…
……う、急に抱きつく人はあの人しかいない…
「毎回会ったときに抱きつくのをやめてください伯母さん!!」
「ん〜??あ、ごめんね〜…るいくんが可愛くてついつい…まぁでも伯母さんに抱きつかれてよかったでしょ!伯母さんってなかなか美人だと思うのよね」
伯母さんはきりっとした細く長い瞳で、小さく整った鼻、ぷるんとした少し赤くキスをしたくなるような唇の可愛い顔。シミ一つないみずみずしい肌で華奢で見た目はお母さんがクールになった感じかな。…でも性格は全然クールじゃない。…というかやかましいし、自分で美人とか言ってるし…まぁ美人ではあるんだけどさ…
「店長…自分で美人とか言うって相当キモいですよ…見ててちょっと引いちゃいましたね。いつもキモいですが今日はキモさに磨きがかかってますよ」
ここで見ていた岸田さんは引きながら話しかけていた。
「ちょっと京華ちゃん辛辣すぎない…!?え、私そんなにキモかった…??」
「はい、キモいです」
……まぁキモくはなかったけど抱きつくのはやめてほしいかなぁ…自分の事を美人というのは別にいいんだけどさ。
「……店長、私は見てて気持ち悪くはなかったと思いますよ。るいくんと会ったときに抱きつくのは久しぶりに会えた甥っ子が可愛いから…良い愛だと思います。自分を美人と言うのは自分に自信を持っているから。…ですから全くもってキモくなんかはありません!!」
と、話していると津田さんも準備が終わったみたいでこちらに来ていた。というかめちゃめちゃ褒めるじゃん。
「そ、そうだよね津田くん!私ってキモくないよね…うん。それ聞いて安心したよ!!」
津田の話を聞いた伯母さんは喜んで頬を緩めて飛び跳ねている…伯母さんはこういう表情をすると本当に可愛いとは思う。いつもは可愛いというより“美人”だから。
その様子を見ている津田さんも伯母さんを見ながらうんうん頷いてる。
「……津田先輩がそうやって褒めるからいつまで経ってもこのままなんじゃん…まぁ面白いからいいけど」
「うん。まぁそこが伯母さんの良さでもあるよね。賑やかになるっていうか……でも結局僕が抱きつかれるのは変わらないのね…」




