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わたしの知らない朝
わたしは こころを知らない
この鳴りやまない風の音は
わたしの背中から聞こえるという
わたしは 悲しみを知らない
見えもしないのに確かにあるという
豊かに湧き上がる 芸術家たちの源泉を
わたしは 空を知らない
飛ぶことも出来ず ただ眺めている
鮮やかな気球の群れが舞う 夜明けの空を
わたしは 知ることを知らない
流れていく冬の川に浮かぶ 真っ赤な木の葉
くるくる回りながら海を夢見ている
わたしよ 無知なものよ
世界の終焉は仮定するものでなく
誰にも等しく訪れる
すべての思いでは冷たく埋められ
少しずつ薄れて消える煙のように
不意に燃え上がり
火の粉を散らして
誰かを求めて
闇の中で
あちらこちらで
燃えている
やがて
疲れ果てた夜明け前
冷たい朝露が
最後の一つの埋火を消して
わたしの知らない 朝が来る




