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その5 青い髪の少女みのりん


 近づくと少女の顔がはっきりとわかってきた。


 アルクルミはこの少女を知っていた。この前会った異世界からやって来た女の子、カレンの相棒の子だ。

 とてもお淑やかな子で奥ゆかしい少女なのだ。


 それにしても相変わらずの美少女っぷりだ。牛に跨っている違和感さえなければ……

 白馬だったら完璧な図だったろうにちょっと残念だ。


 この少女がアルクルミたちが近づくにつれ、慌てて取り乱している理由がなんとなくわかった、牛に跨るなどという、はしたない姿を見られたくなかったのだろう。

 お淑やかなお嬢様なので当然である。


 うんうん、と頷きながらアルクルミは声をかける。


「あらあなた、こんにちは」

「よー、この前ネギ屋で会った」


「何キス、この子知ってたの?」

「この前ネギを買いに行った時に会ったんだ、ネギ屋の犠牲者だよ。ネギ屋の野望は砕いといた」


 ああ……可哀想に。アルクルミも何度か行って酷い目に遭わされているので、ネギ屋にだけは絶対買い物に行きたくないのだ。

 まだ討伐に出かけた方がましである。


 ネギ屋は売ったネギを受け取る際に、しきたりだからと太モモで挟めだの胸で挟めだの無茶な要求をしてくる問題店なのだ。


 尤も要求した後で、アルクルミのスキルが発動してネギ屋もただでは済んでいない、双方痛み分けである。


 こんなお淑やかな女の子にあのネギ屋は何をしでかしてくれてるんだろうか、これはもう本格的にカレンを誘って討伐隊を組まないといけない。

 アルクルミの決意にネギ屋の運命は風前の灯である。


 それにしてもどうしてモンスターなんかに乗っていたのだろうか、ネギ屋で買ったネギを担いで。


 まあいいか、それはそれで可愛くて仕方無いから。なんと言っても自分とは違い彼女は立派な冒険者なのだ、モンスターを従えるのなんか簡単なのだろう。

 木の棒を武器にしているだけはあるのだ、その戦闘力の前に凶暴モンスターもひれ伏したのだろう。


 肉屋の娘は自分とは全然違う冒険者の姿に一人納得している。


 青い髪の女の子は牛に跨って二人を見下ろすのは失礼だと思ったのだろう、モンスターから降りて『みのりんです』とぺこりと可愛く挨拶をした。


 そうそうこの子の名前はみのりんだった、アルクルミは思い出す。

 美少女攻撃で名前とか完全にふっとんでいたのだ。


「随分大人しいモンスターだな。どれ、この〝のっぱらモーモー〟の気持ちを見てみっか」


 青い髪の少女みのりんがちょっと慌てた感じになった。

 キスチスが余計な事をして、彼女に危険が及ばないか心配になったのだろう。優しい少女なのだ。


 牛は何故か魚の事を考えていたらしく、キスチスがしきりに驚いている。


「それは珍しい事なの? キスもいつも魚の事を考えてるんだし似たようなもんじゃないの?」


「私は魚屋だからだ! 牛だぞこいつ。それに私だって四六時中魚の事を考えてねーよ、どちらかというとステーキが食べたい、肉だ肉」


「魚屋なのに?」

「ああ、肉を所望したいね!」


 ちょうどその時、もう一体の〝のっぱらモーモー〟が出たので、キスチスはそれを指差した。


「例えばあの牛なんか――」

「な、なんでもう一匹いるのよ! うわこっち来たよ!」


 新しく現れたモンスターが、アルクルミたちめがけて突進してきたのだ!


 みのりんがアルクルミたちを守る為に牛の注意をわざと惹きつけたのか、牛は青い髪の少女めがけて一目散だ!


『ぺろん』


 これはキスチスがアルクルミのお尻を触った音である。


「な、なんで今私のお尻を触ったの!?」

「いや、スキルが発動するんじゃないかと思って、さっきアルが発案したんだぞ」


 実は女の子に触られたって何も起こらないのだ、このままではみのりんが!

 その時である。


『モモォー!』


 みのりんが連れていた牛が、突入してきた牛を制したのだ。

 キョトンと止まった牛に激しくモーモー言っている。一体何を話しているのだろうか、争い事をやめるように諭しているのだろうか。


 キスチスがアルクルミの近くに寄ってヒソヒソ話しだした。


「こ、こいつ、魚の干物がいかに美味しいか相手の牛に語ってやがる……ワケがわからない、私のスキルがポンコツになったのかな」


 キスは最初からポンコツですよ?


 その内に、突入してきた牛は帰っていった。


「すげー! 追い払ったぞこの牛!」


 キスチスが興奮して見送っている。


「ど、どうなったの? 話し合いは成立したの?」

「魚の干物語りで相手はめんどくさくなって帰ってったよ……すげーんだな牛の世界って」



 町まで一緒に帰ることになり、三人と一体は荷車を引いて歩き始めた。

 もしかしたら、モンスターだから牛でも魚くらい食べるんじゃないだろうか、アルクルミが考えていると。


「それにしてもこいつ美味そうだよな、ステーキ何枚分あるんだろう」

「だ、だめだよこれはみのりんの使い魔なんだから」


『ぐう』


 今のは何? お腹の音? 当然私ではない。

 アルクルミがジト目でキスチスを見ていると、モンスター牛が心配そうにみのりんを見ていた。


 自分が食べられないようにご主人様に助けを求めているのだろう、なんて美しい主従関係なんだろうか。互いに信頼しあっているのがよくわかる。


 モンスターと美少女との暖かい心の交流を見て、アルクルミの胸も一杯になる。


 この感動を日記につけよう。

 絵も添えよう。


 アルクルミは町までのこの小さなのんびりとした旅を、心に刻み込んだのであった。


 第6話 「カエルケロケロまたケロケロ」を読んで頂いてありがとうございました。

 次回から第7話になります。


 今回のお話は平行作品「女の子になっちゃった!~」の

 第12話 「森の異変、そしてそいつは遂に現れた」

 その3 「お魚屋の娘さんのスキルでピンチ?」

 とリンクしていますので、よろしかったらそちらも読んでみて下さい


 次は新しいモンスターの登場になります


 次回 第7話 「女の子の服を脱がすトロールが出た」

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