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鏡の地平 (9/9)

今回の日刊投稿は書き溜め射耗につき、再び書き溜めに移ります…

読んでくださる皆様、ありがとうございます!


 

 

 

……2日後、


 



  

「俺たち三百番部隊は、

 精鋭・特殊任務のいち百番、

 各種教育・戦術研究及び機材の評価実証の2百番から更に続いて、

 いよいよ普及的なシミター型導入部隊の、

 その主力機甲化の実運用部隊の実証モデルケース役…として、

 ついこないだ編成がされた、設立されてからまだ若い部隊だ。」



 昼下がりの、シミター部隊の収容格納庫。

 そのハンガー施設の中で、ナヴァルとリレンスは、特にナヴァルの方は……今日も今日とて、

 己等の乗り込むシミター……その、302小隊・5番機。

 その機体を磨くので、忙しげにしていた。

 


「わかりきった話だろうに、なんだ? その喋りはってよ、」



「何って? 仕事をしている気分になれる、魔法の呪文の読み上げ。

 ワタシたちゃ、隊の上司にくどくど言われんために、常に格納庫で、なにかやってるフリをしてるんだ。

 それをわすれちゃ、イカン・よ」

 

「なーるほどねぇ、……言えてらっ!」

 


 いいながら、ナヴァルは、己の乗るシミター五番機の、その頭部眺望センサーのゴーグル部を、

 愛おしげに、磨くのを再開した……


 


「結局、そもそもは、あの娘らも島流しってわけ。

 ただでさえそれなのに、こないだは不倶戴天の敵! って向こう……魔導科部隊閥……が目の敵にしている、

 ワタシらシミター型部隊に救援要請出しちゃって!

 メンツを潰されたってんで、

 その救援依頼を俺たちにあの時だした、

 あの娘たちの現場指揮官としてここに来て展開しているメンツはともかく、

 在・エルトテール司令部の上司はカンカンだった、そのそうだが……」


 

「そこに、我らのフレズヴェルキンさまの登場!……ってか、」


 

「ああ、文字通りの、鶴の一声だった、って聞くね。

 我々、シミター型装備保有・三桁番台戦隊ハンドレッツ・バタリオン構想の立案者であり、

 そして、帝国皇帝の“子女”であられる……第四皇太子、フレズヴェルキンどの。

 そのフレズヴェルキンさまの介入も合って、あの娘らはこの基地に置いておく、ってことに、なったそうなんだが……」


 


“あのー!”




「ん?」



 呼びかけられた声に怪訝な顔になった二人であるが、その内のリレンスはすぐに相手の正体を確認して、

 


「ナヴァル、お前のフィアンセさんが、おいでなすったぜ、」


「は?……はぁっ?!」


 

 ナヴァルが足場代わりにしている脚立の上で背後を振り向くと、その先には、ラキアがいた。



「う……うぉっと?!」「ナヴァル!?」



「あ、あぶないっ!」

 


 驚いて慌てたナヴァルは、その足場代わりの脚立の上から、転げて落ちかけた!

 しかし、そのアクシデントのそれに、巻末を入れず……

 ラキアは己に倍力魔法の加護を掛けて、

 そのラヴァルの年並のガタイの肉体を、己の細く小さな華奢な腕で……

 抱きとめていた。

 


「……ぁ、ありが、……」


「ふふふ、お姫様抱っこ、みたいですねっ?」


「んなっ?!////こ、この、ガキンチョめ、バカにしてんじゃねー!」


「きゃはぁっ////」

 


 口ではそう反抗的に答えたラヴァルであったが、

 


(倍力魔法を、詠唱なしで、こんな数秒以内に、展開・行使できる……

 やっぱり、この魔導科兵種、魔道士、魔法少女ってのは……すごい連中なんだな、)


 

……密かに、ラキアのことを見直していた。

 

 


「まあ、おろしてくれよって、それはそれとして……お嬢さん、なんだ!?」

 

 

 それはともかく、とするラヴァルは、ラキアに対面で、そう声を掛けた。

 するとラキアはたちまち顔を、何に照れだしたのか、と言わんばかりに、紅顔させて……


 

「ふぇっ?! そ、それは……こ、こほんっ!/////



 こ、こないだ、は…



…あ、ありがと、ございま、ふぇ、


 

 うぇくちっ!……~~っ!?」



「いたい!」



 くしゃみひとつで、爆発が起きたかのように、ラキアは悲鳴を絶叫しながら、崩れ落ちた。

 いわんこっちゃねー、……ラヴァルは相変わらず、だ、というように、呆れの表情をラキアへ送った。

 


「あぅー…」



 まったく、こりねーのな、お前って。


「む、むぅ?! こ、こりちゃうのは、キミの、ほ・う・だ! よーっ!」



(なーに、意地の張り合いしとるんだか)



 言い合うラキアとナヴァルの様子を視界の片隅に収めながら…

……そういいながら、リレンスは己の手元懐の、

 ペーパーバック……安い小説本の類い……に、再び、目の先を戻した。



(うぅぅうむ……)



 一方のラキアは呻吟しながら、



 

(この、わたしが、このオレちゃんさん、のことを、なんとか…

 …嫁に……もらうことは、できるのだろうか…

 ここまで! このわたしが、こうまで助けられたんだから!

 このおれちゃんさん……も、

 はっきり言って、わたしの、お嫁さんになってくれる、そうする、そのべきなんですから!)

 


 そのような不穏? な企みも、脳内で浮かべつつ。



(あ、……そうだ、」「んだ?」



 ラキアはナヴァルに、そうと決意した表情で、声を掛けて、

  

 

「……あの、さ、」「んだよ、」

 


「ナヴァル…ちゃん、って、呼んで良い?」



…好きにすれば。



「やった!」

「あっ…」



 ふたたび! ラキアはラヴァルへと、抱きつこうとして……


 

「あふ、ぅ、

 いたい、いたい、いたいよぅ!?」



 泣きわめくように、その場でばたばたして……さらに被害が拡大して、

 さながら自沈してしまったかのようになってしまう、ラキアである。

 


「怪我人がこんなところにふらついてちゃ、いけないでしょう!!」


「か、看護師さん、ご、め、な、ひゃ、あうう!?」



……そんな感じに、ラキアは回収されていった……


 

「ナヴァルちゃーん! また、遊ぼうねー!」


 

 というのが、断末魔……ではないが、ラキアという少女の、捨て台詞? でもあったわけで、



「あそぶ、ってのはなんなのかね…?」



 ナヴァルにとっては、それが、今からでも、恐ろしいように感じられて、多少の悪寒というのもしてくる…

 

 

「あーあー、

 むこうもこちらも、うら若き“乙女”同士なんだから、

 ナヴァルさん? あーたも、すこしは手加減させてあげて…「んだぁ゛?」いえ、ワタシはなんでもなく滅相もなく……

 まあワタシらが普通に死ぬような怪我や重症であったとしても、向こうさんからすりゃ、

 あそびで遊んでいるようなもんなのかもね……

 外傷は魔法ならすぐ治る程度だったし、

 あばらが片側全部折れるくらいなだけで、良く済んだもんだ。」


「リレンス、…いーのかぁー?

 シミターの、あの“奥の手”、まだ、あの子らにつかわなくて、」


「痛い目を見るのも必要だろうよ、

 彼女らは、戦士としての心構えが、圧倒的に、足りてない。」


「…そうだな。」



 ハッチを開放した状態のシミターのコクピットでそう言いながらくつろいで本を読むリレンスに、

 ナヴァルは迷ったかのような声を上げる……



「生真面目だねぇ、ナヴァルくんも、」「んなっ?!」



 そう言いながらリレンスは良い冗談を思いついた、という顔の表情と為り、



「わたしたちもついこないだまで、

 ただの、ヒラの兵隊で!

 シミターなんて、見たことも触れたこともなかったわけさ。


 それが因果が祟って、わずか数週間の即席教育を経て、

 使いこなせてるかどうかはともかくとして、

 一端のエリート面して、

 本当ならあんな天の上の存在だったそのお嬢さんたちにも、

 あの子らがいかにこぼれ落ちた口だとしても、

 わたしらは効いたような口を立てられるだけの名誉と裏付けを得たってことでさ。


……どうかしてるよ、この戦争なんてものは。」


 

「…そうだな。」



 冗談が不発だった、という様に、リレンスは鼻の頭を掻きながら、

 しかし、今度こそは、という顔に再びなって、

 


「うかうかしていれんぞナヴァル、

 おまえのフィアンセちゃんたち、これからもこの基地の所属魔法少女としてやっていくそうだからな。」



「ゲー!」



「おまけに、うちらシミター隊は、

 その魔導科少女兵との合同戦力運用が、これからの実験稼働の命題になるそうだ。


 相互に運用し合うことで、互いの欠点を埋め合う、相乗させる。

 一昨日の戦闘は、フレズヴェルキンさまたちの……上層部の連中にも、考えさせられる一件だったらしい。」



「えー!

 あの嬢ちゃんらの面倒、本当にこれからも見ていくのかよ…」




 あからさまに不満だ!という声を上げたナヴァルに、

 今度こそ、面白げだ、という表情で返した、リレンスである……



 

(……敵が今回投入してきた、便宜名・ノイズィ・クラフタ。

 あれを仕留めた功績で、あの嬢ちゃん達魔導少女隊は、

 この基地にさしてお咎め無く居れるようにはなった……首の皮一枚、つながったって言葉の通りだ。

 だが……ワタシらに、ノイズィクラフタは、倒せるのか?

 魔法少女部隊が総出になって、なんとか撃破が出来た……

 やつは空を翔んでいた!それだからだ。

 だが……やつと同じ強力さを持った、陸戦戦闘兵器……それが出てくる、現れるようになる、

 となったとしたなら……



……良く教育と訓練がなされた魔法少女、

 その一名と、

 フルオプションが使える状態のシミターが、だいたい五分と言われる、戦力計算となる。

 つまりその魔法少女らを苦しめた今回のノイズィクラフタとやらは、

 このシミターに匹敵する性能! 理論的にはこうなる……


……つまり……

 


 まあ、考えていても、詮無いこと、か。)

 

 


……──!─……



「 ん?」 「なんだっ!」 


 

〈敵の機械化戦力が当基地に接近を確認、

302、305各小隊は、直ちに機体を出動せよ!〉



「ナヴァル、お呼びがかかったぜ、鴨料理を作るとしに行くかね!」


「ああ、やっこさんを、出来の良い、鴨料理にしてやろうさ、」



「「サリー!ゴー!」」



……格納庫内が、にわかに騒がしくなる……

  


 

「シミター、起動!」


「一号機から三番機、即時起動に成功! 四番機、なにもたついている!」


「五番機、様子はどうだ!」



 殺到した整備兵らと、駐機されている各機に乗り込んでいく、シミター乗りの面々……


 

 

 魔導コンプレッサー、出力上げ。

 機体魔動機、同調……始動よーい!



「うらっ、」



 メイン動力機を、“点火”してやる……

……掛かった、行けるぜ!



「今日は素直だねーシミターちゃぁーん。

 この調子で、……立ち上がれるかぁ、ナヴァル!」



「いいってもん、よ……起動。車体、起こすぞ!」



「おお!」

 


「ようし、302-5、……出撃用意!」


 


 今日も、シミター部隊の、出撃が開始された。



 

 

~~~~~~~~~




挿絵(By みてみん)



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