7(7/8)-アリエスタのしあわせムコ取り計画…-
まあそれはともあれ……
小さな銀と金のホイル紙に包まれたそれをアリエスタに渡した。
「“チョコレート”、?」
そういいながら、アリエスタはややホイル紙のほどき方に苦戦し…
…俺がひったくってやってやろうとした所、半目で睨まれた……
とにかくその半目の表情になってしばらく指先を動かしていた後、アリエスタはホイル紙を開くことに成功した。
「なにこれ……茶色い油の固まり? いい匂いは……かすかにするわね、」「まあくえって。」「アリエスタちゃん、おいしいよ!」
中から出てきた茶色の粒を、アリエスタはしばらく怪訝そうに指で確かめたり、軽く爪の先を当ててみたり、すんすん、と鼻で臭って香りで確かめたり。
俺の後ろでルーはもう食べていて、にこにこしながら顔を綻ばせている……
それを見ていたアリエスタ。
澄ました表情で、ふーんとアリエッタはそれだけを表明すると、
「もぐ、っ、!」
口に含んだ途端、はっ!っというような目の開き方で驚いた表情になった。
「………」「……」「♪~」
………
「…………ほー、ほぉむほぉむ、ごくっ、なるほどね、」「だろだろ」
「ごくっり、ごくん。ふぅ。ゆうた、もうふたつぶちょうだい!」
ああもう、ルーのやつすっかりトリコになっておられて………
病みつきというやつで催促するルーに残りのパッケージ全部をとりあえず渡しておくと、「!!」というような輝かしい表情で大喜びをしていた……
全部いっぺんに喰うのはダメだぞ、ルー。
それはさておき、今俺の注意が向かっているのは、澄ました表情を続けるアリエスタにである。
にゃろうは、ふーん、と考える表情とそぶりをしたのち、
「おいしいわね、いくら??」「おまえがいくらでうりたいかによる、」
「へぇ、」「うn」
「えへえ、……」「……」
どげし! というけたぐりを脇腹に喰らったのはその時のことである。 いってぇなこのー! 暴力ヒロインはきょうび流行らねぇっての!!!
「おもいっきりやすくていきょうしなさい。 い い !?」
おのれ暴力女め、最低限のもうけはとらせてもらうぞ……と倒れ伏せたまま恨みごとを唸ったところ、またもけたぐりを頂いた。
「しょうばいにんのうわまえをはねようだなんて! 万年ははやいわ!」というのがその時のおことばである。
まああんまり痛くなかったんだけどね。もとが病弱っ娘のもやしだからってゆーかぁ~? んじゃあ病弱でもないのにもやしなおまえはなんだって? ぐさぁぁぁっ!、
「あんたね、高くてもうれるものを、無理に安くして、売り手になんの得があるの? 割り引きは多少やる程度はいいけど、あんた自分のいってることの意味わかってる???」
「ディスカウントショップってのがあるんだよ、スーパーマーケットもドラッグストアってのもあってねぇ、俺の住んでる国は物の価格が普通な、の!」
アリエスタの講釈に、俺はそう抗弁した。
するとアリエスタは、ふーん?と素直に驚いた、という素振りで、
「小さい海に、おおきなおおきなサメがなんびきもなんじゅっぴきもいるみたいな話ね。」
そう言われても、なあ……そのおかげで、
俺はこうしてお安くせどりが出来ているのでもあるわけだし。
しかし多少、言葉に詰まった。なので、
──俺の商売は貧乏人の味方でしてね。
そう切り返してみた。
「……まぁ、今度からあんたからの買い値を上げて増やそうと思ってたところなんだけど、それだとあんまり上げられないし、最悪、今のそのまんまよ、」
けっ、かつて水と安全はタダと言われた、平和国家ジャパァンの一般市民を舐めてくれちゃ困るぜ。こんなら出血覚悟で、俺からの売り値で割り引いたる、絶対還元しろよな!! あっ、これだけ払ってくれた分の全体の数パーセントとかでおねがいします。ポイントカードかよ。
「──あきれた、」
なんだかアリエスタの顔が、その時はなにか思う所があったかのように、表情が変わって横へと隠された。
俺からは見えなかったが、なんだよ、見直してくれたのか?
「♪~~♪~~、ん! ごくっん、けぷぅ、ふぅ」
後ろでなにやら満足したらしいボクっ娘貴族っ娘の息の気配。
あっ、ルーめ、全部食いやがってる!
まあ、それ以外にもいろいろありますよ?
「なにこれ、」「エネルギーゼリーとスポーツドリンクだよ、軍人や騎士なら身体を使う分、こういうのが適してるかと思ってな」
カロリーメイトだよ、あとCOMP。
「……、あんまり甘くないわね」「そりゃあな、」
梅タブレット。山岳登山用品店とかで置かれてるやつで、自衛隊でも導入されている奴のメーカーが同じの同等品だ。
塩分補給タブレット。俗に塩タブレットとかと言われているやつだが、これは風味が付けられた菓子タイプを選んで、数種類を用意した。
ふーん……毎度、ありがとりぃ!
はたして、決済と交付はなされて……この日の商売は終了した。





