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6(6/8)-アリエスタのしあわせムコ取り計画…-







 対魔王戦争がひと段落した時点で実施された、共同体、商会や教会単位で集積蓄積されていた予備戦備物資の段階的放出と、魔王帝国の崩壊によって途方にくれる程の量の、大量に人類側へも流れ込んだ金銀といった価値金属によって、その結果、貴金属の価値が非常に暴落した状態なのだという。



 白銅貨いちまいで、だいたい百円くらいの価値だ。

 その上に黄銀貨というのもあって、これは五百円相当、



 もっとも、タネを知ったらずっこけた。

 ニッケル硬貨、だったという訳である。




 もちろん、これではこちらの世界で換金など出来ようはずがない。価値が低いからだ。




 それはともかくとして、金の無垢で出来た、この小金貨なるものを賜って、

 おつかいを頼まれたのだから、俺ちゃんとしてもやるっきゃない。




 なので、まとめて買ってもらう事で、都合をつけることとした。

 とりあえず480本、やけくそ気味に、……かつ、赤字覚悟で用立てて、それで金粒貨25粒程を頂いた。

 

 

 重さを測ったところ、一粒で5グラム。

 見ても分かるような上質の金で、用心してルーに鑑定してもらったところ、こっちの世界の地金に匹敵する品質だった。

 

 


 収支はとても良い……という計算だ。







 果たして、翌日。

 

 


 

 

「あの飲み物ね、」


 


 一日で裁ききった、というアリエスタ女史の発言である。

  

 ふんふん、いくらで売れたんだい。

 自分のもうけは確定して出ているので何の気なしに話を振っただけだった。ところが俺は唖然となった。

 

 

 




「中金貨八枚で売ったわよ?」

 

 

 

 


 

 

 は?

 

 

 

 

 

 

 中金貨は、中とついているが、一枚で重さが150グラムもある。小金貨で五十グラム、大金貨で三百グラムあるので、その中間だ。 

 

 

 


 こっちの価値で、平民の半年の食費が、およそ中金貨六枚と小金貨六枚と聞いた。

 超インフレの進んだこの帝国で、鶏一匹で小金貨四枚、豚一匹で中金貨二十五枚、牛一頭で中金貨60枚の物価価値なのだ。

 

 

 

 俺の卸値の何倍だよ、と聞きただしたところ、さらに衝撃的な真実を知った。

 

 

 

 

「いっぽん、中金貨八枚……」


 

 

 なのである。

 一本当たり100円より多少安い価格で買ったいちごオレが20000円ちょっとばかりになってウッキョー!と大喜びしていたのが、この目の前の小娘は20000円分の価値で仕入れたそれを690000円かける8のかかくでうっぱらった、というのである。

 

 

 ざっとかぞえて、ごひゃくごじゅうにまんえん、、、、、、、

 

 

 

 どんな錬金術だ、おい、

 

 

 

 

 二十本、たった、にじゅっぽんでうしさん二頭かえちゃったの????

 

 

 

 

「あったしおおもうけ! あぁもう、存分にもうけさせてもらったわよっ、ぞんっぶんにね。まったく、こんないい商売ができるなんて、笑いがとまらないわっ♪」 

 


 

 そ、それにしても……そんな錬金術、いったいどんなカラクリが?!




「まあ、あんたとわたしとじゃ、住む世界が違う、っていうか~???」




 そりゃあそうだろうな、文字通り、意味通りのことである。



 

 

「ムカッ!? ま、まあいいわ…………まあそれはそれとして、」




 アリエスタは語気を強め、




「ほんと~、に、わかってなかったのね…… い 、 い !?」

 


 ずい、と迫る、アリエスタ女氏。 

 

 

「今は、人間同士のこぜりあいが始まって、長引いて、それでまたでかいのが起こりそうな情勢なのよっ! 暖炉にくべた薪が爆ぜるよりも明瞭な道理なのだわっ」

 

 

 は、はぁ…

 

 

「あんたの持ってきたそれはねぇ、あんまりにも、あまりにもすっごいしろものなのよ! 分かってる? 常温で、年が越せるくらいまで中身が変質しないで、その上、甘くて、おいしくて、美味しい! 、その上、酔う事もない! こんなのみもの、みたこともきいたこともなかったのよっ! このあたしが、わよ!?」 


 そ、それは……そうなので、す?

 

 

「貴族や騎士に売れないわけがなかったのよ! ねぇあんた、これ、年が暮れるまでにあと三千本くらい用意できない? へんじは聞いてない!」

 

 

 え、えぇ…………

 

 

「大口の顧客はひっきりなしになるのよ!? ああもう、きょうの内に都合をつけて。頼んだわよ!」 

 

 

 は、はぁ…………

 

 

「こんどは公官庁の出張所やギルドや有力貴族、聖教教会、騎士団の本体にちょくせつ売りつけてやるわ……ふふ、くくくくく、もうけがとまらないわよぉ……」 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なぁ、ルー」「うん、」 

 

 

 

 

 

「おれって……とんでもねぇことになってね???」「だろうね、」 

 

 

 

 

 

 

 

 ルーは自分の分をもう一本ねだってきただけである。ほれ今も、

 すこすこといちごオレをストローで吸い上げるのに夢中であった。あのなぁ、友達甲斐のねぇやつ。。。。。。 

 

     * * * * *


 

 


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