10話 3ヶ月くらい経過しました。
ダンジョンのオープンから約3ヶ月が経過している。その間にダンジョンランクの発表もあった、うちのダンジョンはランクDらしい。これは初心者を抜けた冒険者が一人前になる為に通うくらいのレベルであり、脅威度はそこまで高くないと認識されている。
うちのダンジョンは1層と2層がかなり広い為に攻略に数週間は掛かる、出現するモンスターも一般的なモノばかりだ。目玉はやはりジュエルスライムであり、一攫千金を狙う冒険者が1層に多く訪れている、しかし稀に現れるスライムアサシンにより冒険者の死亡数も一定数いる。その点も含めてDと判定されたようだ。
「けど、良かったね。ランクDくらいならそんなに敵視されないし、1層に冒険者が一杯くるからこっちとしても楽に稼げて助かるしね。」
最近ではニニャがかなり遠方まで行ってくれたお陰で多くのモンスターを召喚出来るようになったし、外のモンスターは順調に減らすことが出来ている。それに加えてうちのダンジョンのモンスター達もLvが上がり、進化する個体も出て来た。
こんな感じで日々コツコツとDPを貯めている。しかし、思ったようにDPが増えない現状に若干の焦りというか苛立ちというかなんとなくモヤモヤしたものも感じている。
「マスター、このダンジョンは非常に順調だと私は思いますが。」
リリーや他のみんなもそう言ってくれるので特に問題はないだろう。もし問題があるとすれば、俺自身だ。トイレの妖精に転生してから性別がなくなった、それに身長も25cmしかない。元人間としては戸惑いを覚えてしまう。だって元男だから性欲とかもあるし、折角自給自足が可能になったのだから普通に人と同じような生活に戻りたいのだ。最近はその事ばかりを考えている。
「俺は人の姿に戻りたいんだ!折角かわいい子がいっぱい居て、美味しい物もあるのにこの姿じゃなにも出来ない!!」
<トイレの精霊に進化する事で性別の選択が可能になり、人間のサイズへ変更が出来ます。>
欲望にまみれた俺の発言にナビは冷静に対応し、女性陣は微妙な目でこちらを見ている。
「Lvだ、Lvが足りない。こうなったら階層に出てモンスターを倒すしかない、それともっとDPを稼がないといけないな。」
<現在、ダンジョンとしては順調に成長していると言っていいでしょう。過去のデータからもかなりのスピードで成長を続けています。現在のペースですと、約1年で進化が可能だと予想します。>
「1年か、長いのか短いのか。」
「旦那様、思うままに行動されてよろしいのではないでしょうか。ここは旦那様のダンジョンであり、我々も旦那様によって新たな生を得ました。旦那様に反論する者はおりません。」
「マスター、私もコクトの意見に賛同します。ご自由に動かれて下さい。」
コクトとリリーを含め、全員が俺の意見を尊重してくれると言う。では、どうするか。
「よし、俺は進化したい!だからみんな協力してくれ!」
みんながしっかりと頷いてくれた。俺の今のステータスを確認しておく。
カイ Lv.12
トイレの妖精
ダンジョンマスター
<スキル>
『吸収』『管理者』
<魔法>
『トイレ魔法』
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ダンジョンLv.14
所有DP:356,800
Lv10で進化しなかったので次はLv30だと予想されている。この3ヶ月でDPは大分稼いだがまだまだ足りない。ダンジョンLvを大きく上げる為には階層の追加が必要になる、その為に今は貯蓄している状態だ。
召喚に関しては外のモンスターを召喚している為、数には不足しないし倒せばDPが増えるので積極的に行っている。Lv上げの時にも外のモンスターを召喚して行う予定だ。
「まずは自分に何が出来るのか検証する必要がある。コクト、アルナ、リルム、リリーは手伝いを頼む。他のメンバーはいつも通りに行動してくれ。」
「「「はい!」」」
場所を変えて1層の奥地、この層であれば敵から攻撃を食らいそうになってもコクトがすぐに対応出来るので安心だ。それと近寄った人間は全て始末するようにリルムに指示を出して周囲も警戒している。万が一冒険者が襲ってきて何かの拍子に死んでしまったら堪らないからね。
「えっと、俺のスキルで戦闘に使えそうなのは『吸収』と『トイレ魔法』か、吸収から試してみるか。」
スライムに近づいて右手で『吸収』を使う。するとスライムが消えた、正しくは生命力やスキルといったスライムという存在そのものを吸収した。その瞬間は確かに分かった、俺が吸収を使うと同時に脳内でファンファーレが鳴り響いた。
<<ダンジョンのLvが上がりました。>>
<<新たな機能が解放されました。>>
<<ダンジョンマスターのLvが上がりました。>>
<<スキル『分解』を吸収しました。>>
ダンジョンのLvと俺のLvがスライム1匹で上がったのはミッションをクリアした為だ。Lvを上げる方法はDPを只使うだけではなく、決められた100のミッションがある。その中の『ダンジョンマスターが外のモンスターを1匹倒す。』をクリアしたのだ。
今まで自分の手でモンスターを倒したことが無かったのでこの段階でLvアップする事になった。新しく解放された機能は戻ってから確認したいと思う。
そして『吸収』についての新しい発見だ。ナビに確認したところ通常の吸収はスライム種や妖精種が持つもので一定の確率で対象のスキルを吸収するらしいのだが、俺の場合ダンジョンマスターという特殊な職業と合わさった上にあらゆる条件が重なって独自の進化を遂げた全く新しい形らしい。その効果は・・・
『吸収』・・・ダンジョン内であれば触れたモノ全てが吸収可能。
と、なっていた。正直言ってかなりエグいと思う。今までと同じようにトイレからでも吸収出来るが、直接触ると更に効果が上がるという。これがあればかなり楽にLvが上がりそうだ。
「そう思ってた時期が私にもありました。」
何回か試して分かった事だが吸収するとDPやスキルは吸収出来るものの、経験値が入らない。どうやらしっかりとトドメを刺さないと経験値としてカウントされないらしい。こうなると話しが違ってくる。
「マスターのそのスキルは本当に恐ろしいけれど、今回の目的には使えそうにないですね・・・。本当に恐ろしいんですけどね。」
「そうでございますね。魔王様でもそのような凶悪なスキルはお持ちではありませんでしたよ。」
「みなまで言うな・・・。」
実際、かなり凶悪なスキルだと思うが経験値が入らないのなら使えない。経験値が入らないとLvアップ出来ないのだから。
「よし、じゃあ気を取り直して『トイレ魔法』試そう!」
『トイレ魔法』・・・光・火・水・風属性を使用可能。4属性に限り合成魔法が可能。
「え~っと、魔法ってどうやって発動したらいいの?」
「魔法は人間が使うモノとそれ以外が使うモノで大きく変わります。人間が使うモノは長い時間を掛けて最適化され詠唱によって発動します。人間以外の場合は種族によって様々であり、決まった形を持ちません。言ってしまえば自分の想像のままに発動する事が可能です。」
リリーがこの世界の魔法について説明してくれた。俺は元人間だけど今はトイレの妖精という言ってしまえば人外のモンスターという扱いなので想像する事で自由に使えるみたいだ。地球の知識を持っていて、妖精という種族特有の強大な魔力があればかなりの規模の魔法が使えるだろう。想像しただけで胸が膨らんでくる。
「えっ!?なんか胸が本当に膨らんでるんだけど!?」
「だ、旦那様!?それは・・・、はっ!息を大きく吐いてみてください!!」
コクトに言われた通り息を大きく吐くと、凄まじい突風が発生した。どうやら魔法の事を考えながら胸が膨らむ想像をした為、風魔法の発動のキーになってしまったみたいだ。コクトの機転がなければどうなっていたことか。
「コクト、助かった。兎に角魔法の使い方は大体分かったよ。見てて!」
俺はスライムに向けて真空の刃を放つイメージでトイレ魔法を発動させる。所謂カマイタチ現象だ、効果は凄まじく不可視の刃がスライムをバラバラにした。
「お見事です。旦那様!素晴らしい魔法で御座います!」
その後も水の弾を作って撃ち出したり、大きな水の中に閉じ込めてみたりと色々なイメージを試していく。やってみて分かったが、これはかなり使いやすいし強い。吸収で若干テンションが落ちていたがこれならLvもすぐに上がるだろう。元々多い魔力も無くなる前に吸収でモンスターから補給する事も出来るし、吸収とトイレ魔法の組み合わせは完璧だった。
「よ~し、じゃんじゃん行こう!」
こうして進化の為の狩りが始まった。
☆
ちなみに新しく解放された機能はマスター情報の確認からスキルと魔法がDPで購入出来る様になったと追記しておこう。
お読み頂きありがとうございます。
不定期更新で申し訳ありません。宜しければ「ありふれた大賢者のありふれた人生」もよろしくお願いします。




