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恋
「すっすまない!からかいが過ぎた」
音無はそう言うと勢い良く頭を下げた。
「ありがとう!」
僕は音無の手を握り顔を上げさせ僕として満面の笑みでお礼を言った、だけど僕が僕でいられるのも此処までだ。
呆然と立ち尽くしている音無、心なしか顔が赤くなっている。
「なに赤くなっちゃってもしかして僕があんまりにも可愛くて惚れちゃった?」
僕は奏汰の声でおどけて言った。
「そそそんな訳はないだろ!ふざけるのもいい加減にしたまえ!」
音無は僕の手を振り解きそっぽを向く。
「な~んだ、残念」
僕はそう呟き教室から出ようとした。
「どこに行くんだ!」
音無は僕をキッと睨み付け言った。
「トイレだよトイレ、一緒に行く?」
僕は僕の声でおどける。
「誰が行くものかさっさと行け!」
音無はシッシッと僕を追い払った。
────
僕はトイレには行かずに2階の南階段の裏側の小さなスペースに座り込んでいた。
(ヤバいな……好きになったかもしれない)
僕は手のひらで顔を覆いうずくまる。
(こんなことで好きになるなんて僕はなんなんだ)
しばらく自問自答してから僕は多目的教室に向かった。




