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【紅竜編 その2】 王女は見た!

 

 最近、兄様の部下イースの機嫌がとっても良いみたい。理由は簡単。イースの番、ずっと離れた場所に居たアカリが帰ってきたから。


 アカリがお城から居なくなってしまった時はとっても寂しかった。どうして居なくなってしまうのか、今よりもっと幼かった私には分からなかった。ずっと此処に居てくれる、そう思っていたのに。

 でも、本当はイースの方が辛かったんだよね。私より兄様より、アカリの番だったイースの方がずっとずっと寂しかったんだ。私は長い間それに気付けなかった。だって、イースは一度も泣いたり文句を言ったりしなかったもの。アカリが居なくなってしまう前日だって、イースは笑顔だったから。

 だから余計にアカリが昔と変わらない笑顔で私達の前に現れた時は嬉しかった。それでね、すぐにイースに教えてあげなきゃと思ったんだ。

 

 えっと、話を戻すね。イースがすっごくご機嫌って話。私が話しかければイースは大抵笑顔を向けてくれるけれど、でもね、最近は違うの。独りで居る時もイースがニマニマしているの。昨日それをお話したら、兄様が教えてくれた。あれはね、『思い出し笑い』って言うんだって。嬉しい事を思い出して、ニマニマしちゃうんだって。


 あ、イースが向こうの廊下から歩いてきた。手にはたくさん紙の束を持ってる。歩調はゆっくりだから急いでは無いみたい。時折庭に視線を向けて眩しそうに目を細めてる。

 あ!! 見て見て!! イースがまた独りでニマニマしてる。いいなぁ、楽しそう。どんな良い事があったのか聞いてみよーっと!!


「イース!! おはよう!」

「レティシア様!? おはようございます。先程までお姿見えませんでしたが、今どこからいらしたのですか?」

「えへへ~、渡り廊下の向こう側に隠れてたの!」

「隠れて……? またどうして?」

「えっとね、イースを見てた!」

「僕を?」

「うん! イースが今日もニマニマしているなぁっと思って」

「なっ……!!?」

「あ、イースが赤くなった!」

「レ、レティシア様!!」

「ねぇねぇ、ニマニマするのは『思い出し笑い』って言うんでしょ? どんな嬉しいことがあったの?」

「いや、あの……、ぼ、僕急いでますので失礼します!!」

「え~~~!!! …………。逃げられちゃった……」


 ずるいなぁ。いつも私には『廊下は走っちゃいけません』って言うのに、イースが走って行っちゃった。


「おや、レティシア。そんな所でどうしたんだい?」

「兄様!! あのね、イースがまたニマニマしてたから、どんな嬉しい事があったのか聞こうと思ったの」

「成る程、それで成果はどうだった?」

「……イースが走って逃げちゃった」


 しょんぼり下を向くと、優しいレビエント兄様の手が私の頭を撫でてくれる。


「それは残念だったね。後でイースが私の執務室に来るから、私から聞いておいてあげよう」

「本当!?」

「あぁ。勿論。後でレティシアにも教えてあげるからね」

「うん! ありがとう、兄様!!」


 兄様にお礼を言って、手を繋いで一緒に部屋へ戻る。隣を見上げると兄様がとっても楽しそうに笑ってた。それはいつも私に向かって優しく笑ってくれるのとはちょっと違う、独特の雰囲気を持った笑顔。


 うーん、これがアカリの言ってた『腹黒い笑み』なのかなぁ?


 

 



 アカリとの新生活を妄想してついニマニマするイース。

 そしてそんなイースで遊ぶレビエント様(笑)

 

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