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【翠竜編 その2】 仲良し三兄弟 長男編

 

 翠の国、三人の殿下達はとても仲が良い。


「あ、カノンさんカノンさん」

「はい。何ですか? リード殿下」


 第一王子リードに呼ばれて、廊下を歩いていた風音は彼の下へ近寄った。するとぐいっと肩を掴まれる。


「はい。こちらへどうぞ」

「??」


 誘導されるがまま通されたのはリードの私室だ。応接のソファに座らされ、お茶を振舞われる。


「はい。どうぞ」

「はぁ……、ありがとうございます。でもあの、私これからリアス君と約束が……」

「あぁ、それなら大丈夫。リアスもすぐに此処に来るから」

「そうなんですか?」


 リアスも後にこちらに来るのなら問題ないだろう。そう思って風音はリードと世間話に花を咲かせる。一杯目のお茶がなくなりかけた頃、ドタバタと廊下を走る足音が聞こえてきた。


「リード兄上!!!」

「おや、リアス、遅かったじゃないか」


 バンッと勢い良く扉が開いたかと思うと、リードの言う通りリアスが姿を現した。けれどハーハーと肩で息をして、何やら苦しそうだ。一体どこから走って来たのだろう。


「カ、カノンは……」

「カノンさんなら此処に居るだろう」


 そう言われてリアスがやっと顔を上げる。頬には汗が垂れ、顔が赤い。慌てて風音はリアスの傍に駆け寄った。


「どうしたのリアスくん!?」

「カノン……」


 言うなりポスッと風音の胸に倒れこむ。どうやら此処に来るまでに体力を使い果たしてしまったらしい。一体何があったと言うのだろう。

 風音は首を傾げながらにこやかにお茶を飲んでいる第一王子リードを振り返った。


「あの、リード殿下。リアス君は一体……」

「あぁ、三十分以内に城下街一と評判の高いフィルナーレのクッキーを買ってこなければ、向こう一週間カノンさんの身柄は僕が預かると言っておいたんだ」


 良く見ると確かにリアスの手には何かが入った紙袋が握られていた。

 フィルナーレなら風音も知っている。最近城下で話題の製菓店だけれど、確か此処から一時間ほどかかる距離だった筈だ。それを三十分……。


「あの、何故そんなことを?」


 恐る恐る風音が問えば、リードは爽やかな笑みを見せた。


「最近リアスはカノンさんにばかり夢中だから、たまには僕らも構って欲しいなあと思って」

「…………」



 仲が良い、んだよね? これ?

 

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