【翠竜編 SS】 口付けに秘めるは憧憬と
突然すいません。試験勉強しているとどうにもこうにも他の事をやりたくなってしまって。診断メーカーで【お題】キス22箇所というのを見つけてつい……
お題はこちらです。とっても短くて申し訳ございませんが、ご興味があればどうぞ。(現在ツイッターのアカウントは公開しておりません)
『7分以内に1RTされたらリーリアスが切なげに瞼に憧憬のキスをするところを描き(書き)ます』
(http://shindanmaker.com/257927)
その時自分の胸を締め付けたものが一体何であるのか、リーリアスは知っていた。ずっと前から気づいていたけれど、認めるのが悔しくて、悔しいと思う自分がますます子供に思えて、目を逸らしてきたのだ。
それでも、どうやったって目を逸らせない時はやってくる。
だって本当の自分は、それに手を伸ばしたくて仕方が無いのだから。
「リアス君? どうしたの?」
ふわりと柔らかな風が舞うように、目の前の少女が微笑む。少女と言ってもリーリアスよりずっと年上の彼女は三年前にこの国に来た自分の婚約者だ。婚約に当たっては随分と強引なことをした自覚はあるものの、それに反対する者は誰一人としていなかったのだから問題は無いだろう。何より婚約者である彼女――カノンがこうして笑ってくれているのだから問題などある筈もない。
けれど、愛おしい婚約者が自分に向かって差し出した手を、何も考えずに握り返すことができなくなったのはいつからだったか。
カノンを手に入れたばかりの頃は良かった。ただ欲望のままに束縛し、笑いかけてくれれば嬉しかったし、その温もりの傍に居られれば満足だった。歳の差など気にはならず、すぐにこの背は彼女を追い越すだろうと、あっと言う間に大人になって自分よりも小さい彼女を腕に閉じ込めるのだと意気込んだ。
そうだ。彼女の手を取る時のほんの一瞬、逡巡するようになったのは気付いてしまったからだ。自分が成長するのと同じ時間が彼女にも流れているという事に。そして自分よりも大人な彼女はどんどんと綺麗になっていく事に。
ほら、今自分に笑顔を向けているこの瞬間にも、彼女は花開こうとしている。春の日差しを浴びて綻ぶ色鮮やかな蕾のように。
小さな翠竜はどうしようもなくこの少女に惹かれるのに、彼女は自分のものだと吠えたいのに、無力な少年であるリアスは大人へと変わりつつある彼女に並び立つに相応しくないことを自覚してしまったのだ。
「……カノン」
「うん?」
自分の目線に合わせて庭先でカノンがしゃがむ。以前は気にも留めなかった彼女のそんな仕草も、子供のリアスに合わせる為だと思うと悔しさが募る。
微笑んでいるカノンの唇がとても柔らかい事を誰より知っているのは自分だ。けど今の自分を自覚したリアスには、そこに触れることは傲慢に思えた。今までのような子供じみた強引さで唇を奪うのは容易いだろう。カノンはリーリアスの全てを許してくれるから。けれどいつまでもそれではダメなのだ。
リアスは一歩カノンへと距離を縮める。常とは違うリアスの様子にカノンも気付いた様だ。リアスの好きな綺麗で黒い瞳が不思議そうにこちらを見返してくる。
「目、閉じて」
「う、うん……」
近付くリアスの顔とその台詞に先を予感して、カノンの頬が淡く染まる。そうして閉じた瞼の上にリアスは口付けを落とした。
日々魅力的になっていく少女への憧れと、近い将来彼女に並び立つ男になる決意を秘めて。
三年も経てばリアスも成長して、色々なものが見えてきて悩んだりするだろうと思い書いてみました。本編のような強引で俺様でお子様なリーリアスが好きな方は申し訳ございません。
お粗末さまでした。




