【蒼竜編 その3】 息子の事情
僕の家は父上と母上、そして僕の三人家族。
父上は騎士団の団長で、自分にも他人にも厳しい人だ。そんな父上は僕の憧れでもある。僕も父上と同じように剣の腕を磨き、いつか騎士となってこの国を守りたいと思っている。
医療の心得がある母上は、昔騎士団付きの医務室で働いていたらしい。僕が生まれてからは引退したけれど、僕が大きくなったら復帰するか、街の病院で働きたいと言っているのを聞いたことがある。いつも優しく穏やかな母が僕は大好きだ。
憧れの父上、大好きな母上。けれどそんな僕にも悩みがある。それは、
「父上、母上はどちらに居るのですか?」
母上の姿が見当たらず、キッチンでお湯を沸かしている父上に尋ねる。すると父上は憮然とした表情で答えた。
「ミナミがどうかしたのか?」
「母上と買い物に行く時間なのですが」
「買い物なら一人で行けるだろう」
「今日は一緒に行く約束なのです」
「……ミナミは部屋で寝ている。一人で行ってきなさい」
「体調が悪いのですか!?」
「少し疲れているだけだ」
「僕、母上の様子を見てきます!」
「カイ。それは必要ない」
「でも……」
「必要ない。お前は買い物に行って来なさい」
「……はい。分かりました」
仕方なく外出の支度をする。すると父上が寝室に入るのが見えた。本当に母上は臥せっているらしい。母上は父上の番だけれど、母上は僕の母上でもあるのに。どうして僕が見舞ってはいけないのだろう。
時折、こんな事がある。父上が母上を独占してしまうのだ。他の家庭のように、僕にも兄弟が居たらこんな風に寂しい気持ちになる事は無いのだろうか。
その日の夜、僕は早く弟か妹が生まれますように、と一番星に祈りを捧げた。
アークさん、大人気ない……
美波が何故起きられないのかはご想像にお任せしm(オイ




