【黒竜編 その4】 したたかな息子達
次女のナーミルが生まれてから五年後、二卵性の双子を出産。今度はナキアスとナルヴィそれぞれの血を引いた男の子だ。
ナキアスとの子はナトラ、ナルヴィとの子はナイン。お転婆な姉達を持ったせいか、弟達は割りと大人しい性格だと周囲には認知されている。
「「うわ~ん!!」」
「ちょっとナシュリィ、ナーミル。弟をいじめるのは止めなさいって言ってるでしょう!」
どうやら姉達がチャンバラごっこで弟達をのしたらしい。年齢差があるのだから、いくら男の子と言ってもまだ姉達の相手にはならないのだ。
千紘は紙で出来たおもちゃの剣を取り上げると、姉達を軽く小突いた。
「だって~、こいつらノロマなんだもん」
「男のくせにグズなんだもん」
「男のくせにとか言わないの! あんた達の方がお姉ちゃんなんだから、強くて当然でしょう!」
腰に手を当てて叱れば、え~!と不満そうに口を尖らせる。千紘の感覚だと姉達は小学生低学年ほど、弟達はまだ幼稚園入学前と言った所だ。
いまだ泣き止まない弟達を両腕に抱き上げて、千紘はソファに腰を下ろした。
「はいはい。もう泣かないの。どこか痛い所はある?」
「ママ~! おでこ~!」
「ママ~! 痛いの~!」
おでこが痛いとぐずる二人。姉達に叩かれたのかもしれないが、赤くなっていないから大したことはないだろう。千紘がちゅっとそれぞれのおでこに軽いキスを落とせば、途端に二人は泣き止んだ。
「ほら、もう痛くないでしょう?」
「ママ、ママ」
「なあに?」
「ねんね、いっしょ」
「ママいっしょ!」
どうやら二人は千紘と一緒に眠りたいらしい。普段はナキアス・ナルヴィと共に寝ているから、中々一晩中つきっきりで居てあげることが出来ないのだ。
「分かったわ。今日は一緒に寝ましょうね」
「えー!! ずるい!!」
「お母様!! 私も!!」
「もう、無理言わないで。ならお父さん達と一緒に寝なさい」
「「えー!!!」」
弟達を抱き上げたまま、寝室へ移動する千紘。
その時、姉達は見逃さなかった。母の腕の中で弟達が勝ち誇った笑みを自分達に向けるのを。
この後、息子達に千紘を取られた父達もぐずると思われます。
弟達は頭脳派のようです。




